monoろぐ

古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

平維盛を花にたとえると

2010年03月15日 | 日本古典文学

 「平家花ぞろへ」より、維盛を花にたとえている文章を抜き出します。(「室町時代物語集成12」角川書店)

 名にたかき春のあけぼの、かすみの中に月かすかに残りて、山ぎは、しらみわたれるに、あたりまでかをりかへりたるかば桜の、吹き寄る風もうしろめたきに、ややうち散るほど、覆ふばかりの袖もがなと、あぢきなくおぼゆるほどとや聞こえん。
  月かげのかすみて残るあけぼのの花のにほひに似るものぞなき

 「樺桜」といえば、「源氏物語」で夕霧が野分の朝、垣間見た紫の上をたとえたのも「樺桜」でしたよね。
 平維盛は、円熟みのある男の色香を感じさせる華やかな人だったのでしょう。(というか、後代の人は、そういうイメージを維盛に対してもっていた、ということだと思います。)


寄花述懐

2010年03月15日 | 日本古典文学-和歌-春

うつせみの世にも似たるか花ざくら咲くと見しまにかつ散りにけり(古今和歌集)

咲けば散る花にこころをつけしよりあだなる世とは思ひ知りにき(現存和歌六帖)

散りてまた逢ひ見む春もさだめなき人のあはれを花も知るらむ(現存和歌六帖)

老いぬればこれをかぎりと見る花にあはれをそへて春かぜぞ吹く(現存和歌六帖)

あす知らぬわが身ながらもさくら花うつろふ色ぞ今日はかなしき(現存和歌六帖)


名所の花

2010年03月15日 | 日本古典文学-和歌-春

消(け)ぬがうへにまた降る雪とみゆるまでさくら咲きそふみよしのの山(道灌花月百首)

吉野山みねの櫻や咲きぬらむふもとの里ににほふ春かぜ(金葉和歌集)

よしの山八重たつ峰のしら雲にかさねて見ゆるはなざくらかな(後拾遺和歌集)

みよし野の高ねのさくら散りにけり嵐もしろき春のあけぼの(新古今和歌集)
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と山まで雲こそかかれ葛城や高まの櫻いま咲きぬらし(夫木抄)

白雲のやへ立つ峰と見えつるは高まの山の花ざかりかも(風雅和歌集)

春のあらし吹きにけらしな葛城や高まのさくら雪とふるまで(現存和歌六帖)
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雪ならばいくたび袖をはらはまし花のふぶきの志賀の山ごえ(六花和歌集)

春かぜの花のふぶきにうづもれてゆきもやられぬ志賀の山みち(夫木抄)

袖の雪そら吹くかぜもひとつにて花ににほへる志賀の山越え(風雅和歌集)


水辺落花

2010年03月15日 | 日本古典文学-和歌-春

よしの山はなのこずゑに風ふけばほそ谷川に雪ぞながるる(夫木抄)

風ふけば花のしらなみ岩こえてわたりわづ らふ山川のみづ(新勅撰和歌集)

水上にあらしふくらし大井川ゐせきにあまる花の白波(道灌花月百首)

瀧つせや岩もと白く寄る花はながるとすれどまたかへるなり(風雅和歌集)

散りまがふ四方(よも)の櫻をこきまぜてぬきもとどめぬ瀧の白糸(順徳院御百首)

櫻さく山の瀧つせ落ちつもる末やにほひの淵となるらむ(道灌花月百首)

風さそふ磯山ざくら散りぬらし花をのこしてかへる白波(文保百首)

花さそふ比良のやま風ふきにけりこぎゆく舟の跡みゆるまで(建仁元年仙洞五十首)


落花

2010年03月15日 | 日本古典文学-和歌-春

ひさかたの空もくもらで降る雪は風に散りくる花にぞありける(古今和歌六帖)

さくら散る木のした風はさむからで空にしられぬ雪ぞ降りける(拾遺和歌集)

春風は吹くとしもなき夕暮にこずゑの花ものどかにぞ散る(新千載和歌集)

春雨のふるはなみだかさくらばな散るを惜しまぬ人しなければ(古今和歌集)

雨のうちに散りもこそすれ花ざくら折りてかざさむ袖はぬるとも(風雅和歌集)

花の散る木のしたかげはおのづから染めぬさくらの衣(ころも)をぞ着る(千載和歌集)

春さらばかざしにせむと我が思ひし桜のはなは散りにけるかも(万葉集)

しるしなき音(ね)をもなくかなうぐひすの今年のみ散る花ならなくに(古今和歌集)

咲きぬればかつ散る花と知りながらなほうらめしき春の山風(続後撰和歌集)

散ればこそいとど櫻はめでたけれうき世になにか久しかるべき(伊勢物語)

さくら花おのがもろさの夕ばへに心をさへも散らしつるかな(散木奇歌集)

たちかへりまたやとはまし山かぜに花ちる里の人のこころを(新勅撰和歌集)

春雨のわが身よにふるながめより浅茅が庭に花もうつりぬ(建仁元年仙洞五十首)

風に散る花よりもなほうつりゆく人のこころぞとめんかたなき(藤葉和歌集)

散る花はのちの春をも待つものを人のこころぞなごりだになき(風葉和歌集)