「平家花ぞろへ」より、維盛を花にたとえている文章を抜き出します。(「室町時代物語集成12」角川書店)
名にたかき春のあけぼの、かすみの中に月かすかに残りて、山ぎは、しらみわたれるに、あたりまでかをりかへりたるかば桜の、吹き寄る風もうしろめたきに、ややうち散るほど、覆ふばかりの袖もがなと、あぢきなくおぼゆるほどとや聞こえん。
月かげのかすみて残るあけぼのの花のにほひに似るものぞなき
「樺桜」といえば、「源氏物語」で夕霧が野分の朝、垣間見た紫の上をたとえたのも「樺桜」でしたよね。
平維盛は、円熟みのある男の色香を感じさせる華やかな人だったのでしょう。(というか、後代の人は、そういうイメージを維盛に対してもっていた、ということだと思います。)