こむ年(とし)も来(く)べき春とは知りながらけふの暮るるは惜しくぞありける(風雅和歌集)
つれづ れと花を見つつぞ暮らしつる今日をし春のかぎりと思へば(新後拾遺和歌集)
馴れ着つるかすみのころも飽かでのみはやく暮れゆく春のわかれぢ(草庵集百首和歌)
吉野川かへらぬ春も今日ばかり花のしがらみかけてだにせけ(続後撰和歌集)
やまぶきの花の露そふ玉川のながれてはやき春の暮れかな(風雅和歌集)
花もまた散りぬるはての芥川かへらぬ波に春ぞ暮れぬる(夫木和歌抄)
花鳥(はなとり)のなごりをあとに残しおきていづ くにけふは春のゆくらむ(大膳権大夫行文五十首)
暮れてゆく春のみなとは知らねども霞におつる宇治の柴ぶね(新古今和歌集)
けふといへば惜しまぬかたもなかりけり暮れていづ くに春のゆくらむ(草庵集)
鳴けや鳴けしのぶの森のよぶこ鳥つひにとまらむ春ならずとも(新続古今和歌集)
ながむれば思ひやるべきかたぞなき春のかぎりの夕暮れの空(千載和歌集)
暁(あかつき)は夏とや告げん夕まぐれ春をかぎりの入相の鐘(後土御門院御百首)
夜もすがら惜しみ惜しみてあかつきの鐘とともにや春は尽くらむ(玉葉和歌集)