あしひきの山のま照らす櫻花このはるさめに咲きにけらしも(家持集)
きのふまでおもかげに見し白雲のけふは色そふ山ざくらかな(新続古今和歌集)
山ざくら咲きぬるときはつねよりも峰のしら雲たちまさりけり(後撰和歌集)
咲き残すたえ間もあらば山櫻かさねてかかれ峰の白雲(藤葉和歌集)
雲やたつ霞やまがふ山ざくら花よりほかも花と見るらむ(新勅撰和歌集)
朝まだき吹きこす風のかほるかな山のあなたに花や咲くらむ(現存和歌六帖)
山たかみ尾のへのさくら咲きしより雲ゐはるかに匂ふ春風(新後拾遺和歌集)
花さそふなごりを雲に吹きとめてしばしばにほへ春の山かぜ(新古今和歌集)
やまざくら袖に匂ひやうつるとて花のしづ くに立ちぞ濡れぬる(新勅撰和歌集)
雪とだにつもりもやらで散る花のゆくへさだめぬ山風ぞ吹く(大膳権大夫行文五十首)
吹きみだる花のしら雪かきくれてあらしにまがふ春の山道(藤葉和歌集)
やまざくら春のかたみにたづぬれば見る人なしに花ぞ散りける(新勅撰和歌集)