(2)
ある日、珍しく温かい陽射しがカーテンを通して部屋に差し込んできました。
ジイジは意味なく心がうきうきしてカーテンを開けたのです。ピンク色の花びらが一枚とんでいました。近所の梅の花が満開なのかもしれません。
その時、北斗のかわいい力み声が聞えてきました。そして泣き出したのです。
窓際に置かれた小さなベッドに寝かされた北斗の顔が輝いていました。
「おう . . . 本文を読む
(1)
北斗と言えば、夜空に並んでいる七つ星。でも、ジイジにとっては可愛い小さな赤ちゃんのことなのです。
白いおくるみからちょこんと顔をのぞかせているその目を見た時、ジイジは初めて北斗と出逢ったのでした。
それは深い穴からこわごわと外を眺めているつぶらな瞳でした。怖がらなくていいよ。ジイジは目でそう言いながら北斗の額にそっと触りました。
北斗の真っ黒な目と出会った時、ジイジは天の川で星の赤 . . . 本文を読む
ここはどこでしょう
のしてんてんはふんわりと思いを巡らせまました
カモメさんのお腹の中は真っ暗で何も見えないのです。
そのうちに、悲しい鳴き声が聞こえてきました
そっと流れて、のしてんてんは声の方に近づいて行きます。
すると、赤黒い不気味な牢獄が見えました
その中には、今にも消えそうな白いものが涙を流していたのです。
カモメさんのあどけない心が痛々しくて、のしてんてんの心も震えました . . . 本文を読む
風が吹いていました
ふんわりと風に乗ってお空の散歩
のしてんてんはシャボン玉になりました
虹色がのしてんてんを包んでゆっくり動いて行きます
白い雲が東の空を通りすぎます
のしてんてんの身体の上にも同じ雲が写っています
その雲の足元に黒い小さなゴマ粒が見えました。
のしてんてんがゴマ粒を見ていると
それは白いカモメだったのです。
いつ白から黒に変わったのか気付きませんでしたが、のし . . . 本文を読む
のしてんてんが森を散歩していると藪が動いて小鹿が一匹飛び出してきました。
前足から血が流れています。
すぐ後ろから犬の声が聞えました。
小鹿は震えながら走ろうとするのですが思うように動きません。
ピーと鳴いてとうとううずくまってしまいました。
何が起こったのか、のしてんてんにはわかりませんでしたが、とっさにふわりと身体を膨らませて小鹿を自分の体の中に包み込んでしまいました。
すると悲し . . . 本文を読む
夢から覚めたように
のしてんてんはぼんやり空を眺めていました
昨日までの苦しみが何だか嘘のように思えたのです
ウキウキするような気持ちが次々やってきて
まるで風船のように体が膨らんでゆきます
あれは本当に夢だったのでしょうか
苦しみが爆発して、もうだめだと思った瞬間、この苦痛はいのちそのものだと気付いたのです。
すると不思議なことにすべてが裏返ってしまいました
苦悩はしあわせになり . . . 本文を読む
ある日のしてんてんはぶるぶるふるえていました
蒼ざめてポッカり空いた傷口から
しゅうしゅうといのちの抜ける音がします
しゅうしゅう
しゅうしゅう
元気だったのしてんてんはもうどこにもいません
傷ついた自分がかなしくてゆるせなくて
その上にまた傷をつけてしまうのです
のしてんてんはもうどこにも出口を見つけられませんでした
つらいことでしたが
悲しみにも疲れがきます
悲しみにつか . . . 本文を読む
てんてんてんてんのしてんてん
てんてんてんてんのしてんてん
元気で明るいのしてんてんのリズム
のーし・・てんてんてん・・・・・・
のーし・・てんてんてん・・・・・・
てんてんてん・・・・と力がしぼんでいくばかり
重苦しい心のリズム
のしてんてんのリズム歌
どちらが欠けてもダメなのさ
明るさなければ暗さは分からない
暗さなければ明る . . . 本文を読む