のしてんてんが森を散歩していると藪が動いて小鹿が一匹飛び出してきました。
前足から血が流れています。
すぐ後ろから犬の声が聞えました。
小鹿は震えながら走ろうとするのですが思うように動きません。
ピーと鳴いてとうとううずくまってしまいました。
何が起こったのか、のしてんてんにはわかりませんでしたが、とっさにふわりと身体を膨らませて小鹿を自分の体の中に包み込んでしまいました。
すると悲しみが押し寄せてきました。
小鹿のお母さんんが猟師に殺されたのです。逃げなさい。お母さんが言った最後の言葉が胸に突き刺さっています。猟犬が小鹿を追い始めました。恐怖に駆られて小鹿は走りました。どこをどう走ったのか、どこで傷ついたのかわかりません。恐怖と悲しみと、苦痛と疲労で小鹿はもうこれ以上進めなかったのです。
犬が3匹藪から飛び出してきました、地面に鼻をこすりつけて小鹿を探しているようです。自然に犬はのしてんてんの周りに集まってきました。
匂いはそこで消えてしまっています。
とうとう犬は不思議そうな鳴き声を上げて引き揚げていきました。
小鹿は眠っています。
呼吸のリズムがのしてんてんと共鳴して心地よいものに変わっていきました。
もう大丈夫です。
のしてんてんはそっと小鹿から離れました。
シャボン玉のように、ふわーッと空に上がっていきました。
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