のしてんてんハッピーアート

複雑な心模様も
静かに安らいで眺めてみれば
シンプルなエネルギーの流れだと分かる

セリナの物語15

2007-08-24 | 小説 セリナ(短編)

私は一度だけ、弘樹をジェットコースターに乗せて欲しいと請われて遊園地に行ったことがある。
私には子供がなかったために、その日随分新鮮な感覚を覚えたものだった。弘樹の手は柔らかく、抱くとクリームの香りがした。
私は一瞬A子を妻と錯覚し、あの破綻は夢だったのかもしれないと思ったりした。
この家庭のぬくもりをどれだけ望んだことだろう。

「この子のために一日お父さんありがとう」A子は笑いながらそう言った。
「いえ、私も始めて父親というものを体験させてもらいました」私はそう答え、弘樹の頭を撫ぜた。
 


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