それは無感動で無感覚な私の生活の中に現れたビックバンのような波紋だった。
その波紋は私の倦み切った愛の形をかすかに揺り動かしたのだろうか。
空虚な愛、10年もの間それは私をとらえる牢獄のようなものだったのかも知れない。
A子は鉄格子の隙間からその牢獄に捕らえられた私に手を差し伸べているのかも知れなかった。
社内運動会でのことだった。
バーべキューの火力が強くてなかなか肉を取れないでいる子を見つけて、私は皿に肉や野菜を取り上げてその子に渡した。
「ありがとうございます」愛くるしい笑顔で礼を言うと、その子はA子のもとに駆けて行った。
3年生で弘樹という名だとA子は笑いながら紹介した。
弘樹は人見知りしない性格なのか、その日随分と私に打ち解けたのだった。
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