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焦って小走りになりながら札幌駅に着いた。駅の時計は約束の時間を10分ほど過ぎていた。あわてて辺りを見回したが里依子はまだ来ていなかった。
列車の都合で遅れているのだろう。ホッとして心にゆとりが出来ると急に絵を描きたくなった。私はスケッチブックを開いて駅舎に行きかう人々の姿を描きはじめた。そして里依子がやってくるだろう改札口の方をちらちら眺めやるのだった。
日曜日の駅の構内は若者たちの姿であふれていた。私の周りには待ち合わせの人々がたくさんいて、どの目も待ち人を求めて遠くを彷徨い、期待に胸膨らんでいるように見えた。
流れる視線が輝き、笑顔と共に一点に注がれる。待ち人が来たのだ。彼らは短い言葉を交わし、肩を並べあるいは手を取り合って次々と札幌の街に向かっていく。
しかし里依子はまだ来なかった。少しずつ私の頭に不安がやってきた。
約束の時間を間違えたのだろうか。
私が遅れたので、帰ってしまったのではないだろうか。
彼女に限って、そんなことは考えられなかった。すると何か事故にでも遭っているのではあるまいか。
私はこうして里依子を待つ間、考えることのできるほとんどを思い浮かべていた。スケッチの手はいつの間にか止まったままだった。
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