心配が不安になる。そして私を苦しめ始める。これはいったい何だろう。はたしてそれは現実なのか幻か。
不安の目が改札口に里依子の姿を認めたとき、重苦しい気分は一瞬に消えた。始めからそんなものはなかったかのように、私は微笑み手を揚げて里依子に合図を送った。里依子もそれに応え、やがて私たちは間近で互いを見やり、里依子は遅れたことを詫びた。私も今来たばかりだと笑って応えた。
里依子は濃紺のコートを着て胸元を引き締め、凛とした姿で立っていた。黒い可愛らしいショルダーバックを肩にかけ、左手を肩にかかったベルトに添えて少し俯くようにゆっくり歩いた。
私は里依子の横で、彼女の歩調に合わせながら時々眼を細めるようにして凛々しい里依子の姿を見た。
彼女は風邪をひいたのだと言って、時々かすかに鼻を鳴らした。なんだか疲れた様子が見えてきて、無理をしてここまでやってきたのではないかと思われた。
HPのしてんてん
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