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私は思い余って外に出た。まだ夕食をとっていなかった。暮落ちた街角に立って私は自分の未練と知りながら、初日里依子が私を連れて行った居酒屋を探そうと思い立った。しかし里依子にばかり意識が集中していたのだろう、周りの記憶がほとんど無くて私は夜の千歳の街をあてもなく歩き回るばかりだった。
そんな自分を惨めったらしく思いながら、それでももう一度里依子に会えるかもしれないと考えてしまう自分をどうすることも出来なかった。そしてそんな自分を嫌悪するのだった。
やがてその店が目の前に現れた。けれどもせっかく探し当てたその店に私は入っていくことが出来なかった。
里依子の面影の残るこの店で一人座っている事は、いざということになると急に私には耐えがたい事のように思われた。
あるいはこの中に里依子がいるかも知れないと思った。上司の送別会があるというその席がこの店であったなら、里依子はきっとここにいるだろう。もしそうならそこに入っていくことは一層私には苦痛だろう。
結局私はそれを探し求めながら、その前で戸惑い、尻込みをして逃げだしたのだ。そしてその近くの居酒屋に入った。白樺という看板が目にしみた。
中には客が一人もいなかった。それから長い間、新たな客が入って来る様子もなかった。カウンターの二人の女性がそろって私の前にやってきた。
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