のしてんてんハッピーアート

複雑な心模様も
静かに安らいで眺めてみれば
シンプルなエネルギーの流れだと分かる

セリナの物語42

2007-09-20 | 小説 セリナ(短編)
白亜の砂浜はとても清楚な印象を私達に与えた。
「もったいないわ」

芹里奈はそういって靴を脱ぎ素足になった。
私も同じようなことをした。足の裏でサラサラと白い砂が流れ、言いがたい開放感が私達を包んでいた。
突然芹里奈は私の名を呼び、カモメのポーズを取ったのだ。私はカメラを向け、芹里奈は何度もカモメの姿を演じた。
私の背筋に冷や汗を感じるほど驚いた写真はその時の1枚だったのだ。
カモメになった芹里奈が正面を向き、翼を広げている。その両手には脱いだばかりの靴が握られ、翼の先端をうまく表現しているのだった。
何気なくその靴に目を向けたとき、私は胸に大きな杭を打ち込まれたような衝撃を覚えた。その靴は、地下道に放置されている靴と驚くほど似ているのだ。


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