
幸せだった日々の一瞬が切り取られて、芹里奈の笑顔がどの項にも踊っている。
未練だなと友人は笑ったが、私はどうしてもこれを処分することが出来なかった。
A子にこれを見せたら何というだろうか。
そう思うと心に暗い霧が広がってくる。
もうやめよう。芹里奈への思いに整理をつけようとアルバムを開いたが、心は複雑にゆれるばかりだ。私はアルバムを閉じるつもりで、もう一項だけめくってみた。
芹里奈が奇妙な格好で立っている写真が目に入った。
二人で海に行ったときのもので、とっさに私はそのときの記憶をよみがえらせた。
まぶしい太陽と白い砂、そしてどこまでも青い水平線。
写真に納まる芹里奈のおかしな格好は、そのときの背景を鮮烈に思い出させるのだ。
だがこのとき、私は別の意味でその写真に釘付けになった。
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