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のしてんてんハッピーアート

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セリナの物語43

2007-09-21 | 小説 セリナ(短編)

紛れもなくそれは芹里奈の靴だと思った。
アルバムを見直した。その頃の芹里奈の写真はどれも同じ靴を履いていた。しかもどこか誇らしげに・・・そう考えをたどっているうちに私は思い出した。

芹里奈が珍しくショーウィンドーの前で立ち止まった。マネキンの履いている靴に魅せられたというのだ。そんな芹里奈を見て私はとっさに店に入り、交渉してその靴を手に入れた。確か展示品だけで在庫はないと言うことだったのか、嫌がる店主を説得してマネキンから脱がせた靴は芹里奈にぴったりだった。ビニル製のさして高価なものではなく、展示品ということでさらに値引きさせた靴は芹里奈の足にきれいに納まった。店長の少々困った顔を思い出して私達は笑いあった。
結婚する年の夏のことだった。
こんなバカなことが・・・偶然で起こるものか。
凍りつくような思いで私は呆然とし、
そしてアルバムからカモメになった芹里奈の写真を剥ぎ取った。

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