三、長老シリウス
スケール号は、長老シリウスにむかってワープした。
ワープと言うのは宇宙空間を瞬間移動する事なのだが、そのとき、空に浮かんでいる星がいっせいにスケール号の前に集まって来るように見える。星が集まって出来た光の中にスケール号が突っ込んで行く。するとその瞬間に、集まった光が再び空に散らばり、スケール号は目的の星に着いているのだ。
長老シリウスはすぐ目の前に浮かんでいる。その姿は神秘的な宇宙の王にふさわしく全天を青色に染めている。
「すげー」
「きれいだス。」
「なんだか引き込まれそうでヤすな。」
「言葉が出ませんね。博士。」
「うむ、シリウスは太陽の三倍もあるんだ。それに、あの青い光は太陽の何倍も明るいのだ。ごらん」
博士はシリウスの中心に輝く青白い球体から、それを包むように広がっている青く巨大な球体に向かって指さした。
「あの青白く輝いている所がシリウスの本体なんだ。そしてそれを取り巻く青い所がシリウスの大気だ。」
「すずしそうでヤすね。」
「だが、シリウスの温度は身が解けるほどもあるんだ。あの中に入ったら大やけどでは済まなくなる。」
「だから、シリウスも太陽の仲間なんだスか。」
「まあ、そうしておこう。」博士はぐうすかに説明するのをあきらめた。
シリウスは、太陽族のなかではひときわ大きな星だった。
太陽の大きさになっているスケール号でさえ、すっぽりとシリウスの大気の中に入ってしまうのだ。
しかし、太陽に比べて、シリウスは静かだった。青い大気を広々とたなびかせて、ゆったり居眠りをしているように見えた。
「シリウス様、あなたはシリウス様ですね。」
スケール号から艦長が呼びかけたが、シリウスからはなんの返事もなかった。
「シリウス様、聞こえますか。こちらスケール号。シリウス様、返事をして下さい。」
何度か交信したが、シリウスは静まり返って、返答する気配はなかった。
「やはり、居眠りをしているんだろう。」博士が言った。
「困りましたね。」
「何か起こす方法はないでヤすか。」
「それはやめたほうがいいだス。」
「どうしてでヤす、ぐうすか。」
「寝起きが悪かったら大変だス。」
シリウスの居眠りは、気の遠くなりそうな長い時間の中にあって、まだまだ百年は起きて来そうになかった。
「あれはなんでヤすか。」もこりんがシリウスの地平線を指さしながら叫んだ。
「何だ。」
みんなはいっせいにその方向を見た。すると、地平線から巨大な月が出て来る所だった。
「これは・・・」博士も言葉に詰まった。
ものしりの博士にも分からないものらしかった。よく見ると、その月は半透明の薄い膜で、できていて、地平線からゆっくり昇って来たかと思うと、その瞬間、パチンとはじけて消えてしまった。
「何だ、これは。」博士が独り言をいった。
すると、また地平線の方から新しい月が昇って来た。それは地球よりも大きなシャボン玉だった。巨大なシャボン玉は、ふわりと浮き上がり、たわんで揺れて、そのひょうしに、はじけて消えるのだった。
「艦長、あれはシリウスの鼻ちょうちんじゃないですか。」ぴょんたが耳を立てて言った。
「うむ、そういえば時々ぐうすかが出している鼻ちょうちんににていなくもないな。どうだ、ぐうすか。」
「そうだスな、あのはじけ方は確かに鼻ちょうちんだス。」
「シリウスは居眠りどころか、ぐっすり眠り込んでいますよ、博士。」 シリウスの鼻ちょうちんは、次々と出て来て、はじけ飛んでは青い大気のちりになっているのだった。
つづく
白輝瑠璃光の空に
巨大シャボン玉のお月様
パチンと弾けては揺ったり昇る
長老シリウスさまの
虹色の鼻ちょうちん
素敵ですね~~☆♪
でも、睡眠時間100年とは、
長いのでしょうか、短いのでしょうか?
相対的見地、
私たちより、比較的極微極小の生命体から観ましたら、
私たちのうたた寝ですら、
100年の歳月が経過しているのかもしれません ^ ネ ^
うたた寝して
眠りの夜空で目覚める目
輝く眼光
夢見る流星
真鹿子(まかこ)
ズッコケお粗末さまです ^.^ ; ;
地球ほど膨らんだシャボン玉。それはそれは見事なもので、シリウスの青と太陽のオレンジ、それに全天の星影を写し込んで、流れるのです。
地球を棒でかき混ぜたように、ミルクを垂らしたコーヒーのように、それは生き物のように動くのです。
ぽわーんとたわんで、パチン!
ところで、時間は、これからのスケール号の旅には摩訶不思議重大問題となって立ちふさがってきます。
100年もねていられたら、相対的極小生命体としては、目覚めたらもう浦島太郎ですから。
さてはて、スケール号の面々はその壁をどうして切り抜けていくのでしょうか。
艦長としては、真鹿子さんを乗組員としてスカウトしたいくらいです。
マカコエキスが必要なのですニャン^ャ^