「葡萄園にて」の哀切な世界はこの海に向かう斜面から生まれたのだろう。そう思ってみれば眼下に広がる海は静かで、しかし明るかった。その明るさは青年の心を突き動かしていくエネルギーであったのかも知れない。
考えが落ち着くと、私はようやく動き出した。民家の背戸を回って、その吹きだまりの雪に悩まされながら、やがて国道に出た。ブーツの中は湿って冷たかった。
「やはりなかったな。」そう思って、私はあの運転手は私を騙したのか、あるいは間違えただけなのかと詮索した。すべては曖昧で確かなものは何一つなかった。
仕方なく私は塩谷の海岸に向ってスケッチを始めた。それがけが確かなもののようにも思われたのだ。
塩谷の村はまだ雪に埋もれて眠っているようで、人影はどこにもなく、頻繁に車が通る国道の賑わいとは対象的な侘しさが感じられた。
海岸の岩や岬を写し終えるころ、ようやく人の姿が目に入った。地元の人であるらしい仕事着をきた四十がらみの男性が私の方に歩いてきたのだ。
私はちょうど国道を横切って海側の路肩に立っていたのだが、そこはちょうど国道から小樽の方向に入る側道の入口になっていた。その男は蘭島の方から国道を歩いてきて、私の前を通り側道に入っていこうとしていたのだ。
HPのしてんてん
考えが落ち着くと、私はようやく動き出した。民家の背戸を回って、その吹きだまりの雪に悩まされながら、やがて国道に出た。ブーツの中は湿って冷たかった。
「やはりなかったな。」そう思って、私はあの運転手は私を騙したのか、あるいは間違えただけなのかと詮索した。すべては曖昧で確かなものは何一つなかった。
仕方なく私は塩谷の海岸に向ってスケッチを始めた。それがけが確かなもののようにも思われたのだ。
塩谷の村はまだ雪に埋もれて眠っているようで、人影はどこにもなく、頻繁に車が通る国道の賑わいとは対象的な侘しさが感じられた。
海岸の岩や岬を写し終えるころ、ようやく人の姿が目に入った。地元の人であるらしい仕事着をきた四十がらみの男性が私の方に歩いてきたのだ。
私はちょうど国道を横切って海側の路肩に立っていたのだが、そこはちょうど国道から小樽の方向に入る側道の入口になっていた。その男は蘭島の方から国道を歩いてきて、私の前を通り側道に入っていこうとしていたのだ。
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