「でも、またここでメリーゴーランドを見ていたね。どうしてなの?」
「きっとメリーゴーランドに乗りたいのだスよ。」
「そうだ、もうそろそろ遊園地も終わりだから、最後にこのメリーゴーランドにみんなで乗ろうよ。」艦長が提案した。
「賛成。」
「賛成だス。」
「賛成でヤす。」
「でも、ピピ、乗れない。」
「大丈夫、ほら、ひざの上に乗せて上げるからさ。」
ぴょんたがピピを抱き上げた。木馬にまたがって、ピピをその前に座らせた。真っすぐに立っている鉄棒をしっかり握ってピピを抱えるようにしてぴょんたが話しかけた。
「ほら、大丈夫だろう。」
「うん、でもピピ・・・」
ピピは身を固くして緊張している。メリーゴーランドが音楽を鳴らしながら回転し始めた。ゆっくりと木馬が走って行くように、まるで夢を見ているようなゆるやかな振動が伝わって来た。子供達は皆、幸せそうな顔をして馬に乗っている。時々、柵の外で見ている自分のお父さんやお母さんに手を振っている子もいる。お母さんは笑顔で応え、お父さんはビデオを撮っている。どうした訳か、ピピはぴょんたの腕の中でずっと身を堅くしたままだった。そのピピの体が一瞬けいれんした。その時だった。
「ピピ、しかられる。いやだよーっ」
ぴょんたの前に座っていたピピが、悲鳴のような叫び声を上げたのだ。それと同時にピピは、フッと、ぴょんたの前から煙のように消えてしまったのだ。
「ヒエーッ、ピ、ピ、ピ、ピ、ピ、ピ」ぴょんたが木馬から転がり落ちた。メリーゴーランドが止まるとみんなが駆け寄って来た。
「どうしたんだ。」
「ピ、ピ、ピ、ピ、ピ、ピッ、ピ」
「ピピがどうしたんでヤすか。」
「き、き、き、き、き、き」
「きがどうしたんだス。」
「き、消えた。」
「ピピが消えただって。」
みんなの顔色が変わった。子供が消えるって、このことだったのか。でも一体何がどうなったのか、何がなんだか見当もつかない。恐ろしいことが起こっていると言うことだけが、みんなの心に氷のように張り付いた。
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