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私は悠然としていなければと自分に言い聞かせ、キュッとブレザーの襟を引き締めて空港のロビーに向った。
それでもその空間は私の想像を超えて広がり、私を驚かせ、拒もうとするかのように威圧的で、ただ広かった。
私は戸惑い、心のすがる場所を見つけられずに、最初からこの胸を騒然とさせていた。
そんな心を誰かに見られているかのように思い、それを隠そうとして、私はわざとゆっくり歩き、平然と構えていた。
1階に搭乗手続と表示したカウンターがあり、ホッとして私は内ポケットからチィケットを抜き出し、一分の隙もなくそれをカウンターに差し出した。その姿はきっと映画の一画面のように決まっていると思いながら。私はここで搭乗のための手続きが済むのだと思っていた。
かつて里依子がここから千歳に発ったとき、このロビーのカウンターで受付を済ませている彼女の姿に見とれていたのだ。
あるいはそれよりも数日前に、里依子をこの空港に出迎えたとき、その出口に大きく半円を描いて流れるコンベアーがあって、バッグや紙包みなどの荷物が届けられていた。
その周辺に立った人たちが、自分の荷物がやってくるのを待ちわびるように手を伸ばして取り上げ、胸を張って出て行くのを目にした私は、乗客の手荷物はこうして運ばれるのだと思った。それはいかにも飛行機という高級な乗り物にふさわしいシステムだった。そしてその一団から輝くように里依子が現れたのだ。
そしてそれだけが、私の空港に関する知識のすべてだった。
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