昂ぶった私の心は、機内の単調な空気に触れて、やがて落ち着きを取り戻した。
雲海が力強く盛り上がり、機がかすめるたびにそれは霧となってすばやく流れた。突然視界が真っ白な世界に消えた。
雲の中に入ったのだ。それは実に当たり前のことであったが、なにやら不思議に思われて私は長い間ただ白いばかりの窓を眺め続けた。
あるいはまた、雲の切れ目から青い海が見えた。白い航跡を長く引いてその先に舟が見えた。するとそれは、地上から眺める飛行機雲のように思えて、天と地が頭の中で混乱するのだった。
陸地が見え、町が箱庭のように見えた。
そのときだった、突然空を飛んでいるのだという強い確信が芽生え、同時にそれが信じがたいもののようにも思えて、心が振り子のようにうごめき始めたのは。
HPのしてんてん
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます