(5)-2
「何か言ってないかな。北斗なら助けてあげられるからね。」
ジイジが博士の口調で言いました。
その時北斗の目が真ん丸に開きました。そしてまっすぐにジイジに目を向けて動きません。
その目はジイジを見るというよりは、ジイジの背後を見ているようでした。
「はぷー」
「博士、艦長はなんて言っているのですか。」
ぴょんたが聞きました。ぴょんたは博士の肩越しに飛び上がって艦長を見ていたのです。
「分からないらしい。」
「どういうことですか?」
「どうしてほしいのか、赤ちゃんは何も言わないらしいのだ。」
「がっかりでヤす。」
「助けられないのダすのか」
「いや、そうではない。」
博士がきっぱり言いました。
博士は優しく北斗を揺りかごに戻しました。そして院長先生に向き直りました。
「先生、やってみる価値は十分あります。あの子の中をスケール号で探査する許可をいただけますか。」
「もちろんそう願いたいのですが、何か手掛かりがありましたか。」
「一つだけ分かりました。」
「何でしょうか。何か当院に問題があったのでしょうか。改善すべきことがありましたらなんでも遠慮なくおっしゃってください。」
「いえいえ皆様には感謝しかありません。院長先生」
「では何が原因だと?」
「あの子には宇宙語がないということです。」
「宇宙語ですか・・??」
「艦長が発見したのです。」
「この赤ちゃんがですか?」
院長先生は博士の腕の中の艦長を見て不安そうに問いかけました。
「赤ちゃんだからこそ分かることがあるのですよ、先生。」
「そうですか、・・・それで何が原因で??」
「それを調べるのです。院長先生、あの子の中を探査する許可をいただけますね。」
「その前に一つだけお聞きしたいのですが。」
「なんでもお聞きください。」
「つまりその、スケール号の探査であの子に危害はありませんか。」
「ご安心ください、そんなことは全くありません。このスケール号はスケールの世界を自由に動けます。
今はこの大きさですが、これは仮の姿といってもいいのです。太陽の大きさにもなれば、一瞬で素粒子
の大きさにもなれるのです。」
「にゃごー」
足元でうずくまっていた銀色の猫が背中を伸ばして起き上がりました。
その時、三毛猫サイズの大きさでしたが、急にライオンのような大きさになりました。
院長先生は一歩引いて息をのみました。
「スケール号、ここだ。」
博士が手を出すと、スケール号はバッタのような大きさの猫になって手のひらに飛び乗りました。
「宇宙語がないということは院長先生、その原因を知るために宇宙の根源にある素粒子の世界を探査する必要があると思っているのです。
スケール号で素粒子宇宙を探査するのは。ロケットで火星に行くのと同じです。体の中に入るといっても、あの宇宙空間を移動するのと同じです。
この探査であの子に危害がないことを分かってくれますか。」
博士は空を指さして言いました。
「分かりました博士。どうかご無事で、あの子を救ってやってください。」
「原因が分かれば、あの子だけではなく、今後このような問題を解決できる経験となるでしょう。」
「そうですか。そうなればみなが救われます。どうぞよろしくお願いいたします。」
院長先生が深々とお辞儀しました。
「最後に一つお聞きしたいのですが」
博士が言いました。
「何なりと。」
「あの子の名を聞いておきたいのですが。」
「つい先日両親がのぞみと名付けました。希望ののぞみです。女の子です。」
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