私があまりに黙りこくって沈んでいることに彼女たちは興味を持ったらしく、少しづつ私から何かを聞き出そうとした。私は生返事をするばかりであったが、二人の質問は控え目で質素に感じられたためにそれが疎ましいとは思わなかった。
酒が入ってくると次第に心がほぐれ、彼女たちの柔らかい語り口に引き込まれて私は今しがた目にしてきた千歳川のことを話し始めるのだった。
他に客もないので私たちはそうしてたわいない話を続けた。
「北海道を離れたいと思ったことはない?」
私は真顔で彼女たちに聞いた。すると二人はそんなことは思ったこともないと笑顔で応えた。私はまた淋しい気持になった。そしてそれからほとんど黙したままで飲んだ。思わぬ深い酒だった。
次の朝、もう里依子からの連絡は望めなかった。その代りに雪が降った。何やら靄が掛かってきたかと思ううちに、遠くの方から雪がやってきて次第に吹雪になって来た。それが半とき続いてぴたりと止んだ。
それはなんだか里依子が雪になって私にさよならを言っているようだと思った。
するとまたたまらなくなって、私は今どこにいるのかも分からなくなってくる。ここには里依子の他には心の拠り所がないように思われた。彼女と会えなければどんな風景も意味を失ってしまって、私はただ哀切に身を漂わせるだけであった。
今日一日時間はあったのだが、私はこれからすぐに帰ろうと思った。
HPのしてんてん
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