フロントに電話をして一番の飛行機を予約した。
いまだに帰ろうという気持ちと、このまま時が止まってしまったらいいと思う気持ちが相克していた。私の中には、里依子がどんな風に思っているのかという疑問が残っていて、一体何のためにここにやって来たのかと反問する。
しかしすぐ後で、これはきっといい事なのだ。と考える。答も目的もいらない。必要なのはただ心のままに動く事なのだと。
するとまたすぐに、里依子は今頃私のことなど考えてもいないのだろうと思うのだ。思考がくるくると回っていた。
私のこの3日間は何だか夢のようにも思われた。はっきりと確かなものは何一つ残っていない。不安定な情念の流れが私の胸を駆け抜けていっただけではなかったか。これから私はどこに行こうとしているのだろう。
よく分からないままに不安は募り、不安よりも息苦しさが増し、息苦しさよりも悲しさが溢れ、ぎゅうぎゅうと締め付けられる心が痛い。
私はそんな風に思い悩んでは機内の窓から外を眺めていた。空は抜けるように青かった。心がふっと広がり、知らないところで明日の日差しを感じた。
やがて飛び立った飛行機の下に、雪にまみれた千歳の街が急激に視野に広がり小さくなってゆく。その家の群れの中のどこかに里依子がいるのだと、私は思った。
====完====
HPのしてんてん
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