里依子は、一緒に行きたいという私の気持ちをかたくなに拒んだ。
「せっかく来たのだから、札幌を見て帰ってください。」
彼女はそう繰り返した。その時の里依子の表情に私は悲愴の影を見た。それが私の心をえぐるのだ。とたんに里依子の心が閉ざされたように思われた。たとえ私のことを慮って言ってくれた言葉であったとしても、私にはそれが言い訳のように聞こえ、そのたびに自分の胸を押し潰すのだ。
とある交差点に差し掛かった時だった。里依子は急に立ち止まって、そこから見える山並に続く道を指差した。その指は透き通るように白くしなやかであったが、戸惑うもののように力を失っていた。
「ここを行けば円山公園です・・・」
彼女はそう言って、そこを見てくるようにと、哀願するように私を見た。言葉ではなく里依子の全身が、ここで別れようと言っているのだ。
私はどう答えていいのか分からず、曖昧な表情をして帰り路を先立って歩き出した。取り残された里依子が私を追って駆け寄ってきた。
HPのしてんてん
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