12年前の最高峰
そんな絵を所望されて手放せず、同じ絵を描く約束をした。
描き進む内に、手がすくんでいる自分に気付いた。
細心の注意を払って、その絵に近づこうとする
しかしうまくいくはずはなかった。
技術が落ちたのか、
そうではない、
12年前の作品は、生み出そうとする意識しかなかった。
そして今は、模倣しようとする意識が支配している。
その意識と戦いながら新たな絵を生み出さなければならないのだ。
難易度ははるかに高い作業になる。
真似をしないで、同じ山に登る。
難しいが、私にはいい訓練になった。
模倣の欲求から身を守るためには、心で観るしかない。
心で観る。そして今ここにある新しい感性だけを見つめて描く。
描いても描いても、前作を超えられない不安が続く。
そしてある瞬間、その絵が、新たな最高峰になったのに気付く。
懸命に足元だけを見ながら登りつめ、振り返ったとたん目指す山を見下ろしている風景に出合うような意外さだ。
12年前の最高峰を超えた。
しかし心は喜びよりも、かえって淡々としている。
これはなんなのかわからないが、
私はすでに、この心の流れとともに生きている。
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