西18丁目という駅から再び地上に出て、しばらく歩くとそこはもう道立近代美術館である。そしてこのあたりは、西の方に山並が近かった。
のんびりとして横に広がる山々は、広い広い平原の向こうに雪をかぶっていた。
「あれが大倉山です」里依子が山を指差して教えた。
その山は一番手前にあって丸くこんもりとしていて、中央から長い鼻のように白い直線が垂直に伸びていた。札幌冬季オリンピック会場としてテレビで何度も見たことのあるジャンプ台がそれらしかった。
雪の鳥人達が札幌の街に向かって飛翔する。そのレーンがそこだけ純白に輝いていた。そのような事を里依子に言ったが、しかし私にはそれ以上の感慨は起って来なかった。それよりもむしろその大倉山の背後に、遠く山並が続いており、名も知らぬそうした眺望の方がかえって私の心を惹いた。しかし私はそのことを里依子には黙っていた。
昨日と違って冷気が強かった。白い息が音を立てるように頬を伝って流れた。気丈にふるまって目立たないようにしているが、風邪気味の里依子を見て、私はあまり歩き回れないなと思った。つらそうな里依子を見るのは始めてだったために、私の意識はいつもそこに帰ってくるのだ。
HPのしてんてん
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