![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/58/91/8db85083de24e20f7e6930e22b664910.jpg)
美術館は合掌造りを模した近代的は建物で、まだ新しかった。それを里依子に言うと、この美術館が出来てまだ4.5年だと彼女は答えた。
館内は人がまばらで、ゆったりとしていた。大きすぎず小さすぎず、ちょうど心にぴったりくるスペースの1階フロアがあって、常設展示室が見えた。
自然に私たちは展示室に入って行った。するとすぐに激しい色彩が私の目に飛び込んできた。300号はありそうなキャンバスに描かれた富士であったが、常識を覆すような色彩の洪水のように私には思われた。
それが片岡球子の絵であると知ったのは、絵の迫力に圧倒されて引き込まれ、我にかえってようやく絵のタイトルと作者名を見た時だった。
私は最初から時を忘れて絵の前に立ち尽くした。右側に鋭い青が立ち上がり、盛り上がる感情となって迫ってくる。するとその感情をなぎ倒し押し流すようなフォルムがあって、左の方、斜めに荒々しくえぐるような赤と白の躍動が飛び込んでくる。それがいかにも厳しい自然の力を思わせ、感情をかきたてる。そしてその感情が足もとに集められ、大地が盛り上がり富士を生み出して行く。そんな激しい運動が片岡球子の富士であった。
ふと気付くと、画面の下の方に、花園ような柔らかな風景が軽いタッチで描かれていて、ホッと安息するのだ。それは大きな富士に対しては実にわずかは部分であったが、その小ささが人間の住む世界ではないのかと思われた。
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