誰かが地下道に向って立ち止まり、その場所で靴だけが残ったような形で並べて置かれている。
間際の壁には地下水が滴り落ちていて、その雫を浴びて靴はぐっしょりぬれていた。
ビニール系の安物の靴だった。
つま先に目立たない花柄がデザインされているのがなぜか印象に残った。
誰かのイタズラだろうと思いながらも、今にも歩き出しそうな靴の気配があって、ただ捨てられたものではない、何かの意志のようなものが感じられて奇妙な違和感が残った。
もうすぐ管理事務所が掃除をして片付けるだろう。
無理にそう思って私はそれ以上確かめもせず会社に向かった。
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