いつの間にか遊園地はたくさんの子供達で賑わっていた。色とりどりのアドバルーンがあがり、花火の音が聞こえ、丸い煙がパッパッパッと空に出来ては風に流されて行った。
ジェットコースターや魔法のじゅうたんが動く度に子供の歓声と悲鳴が聞こえる。もちろん中には大人の太い声が聞こえることだってある。
メリーゴーランドのかわいい音楽が踊っている。
子供鉄道に乗って、遊園地を一周すると、観覧車からは分からなかった遊園地のにぎわいが肌に伝わってくる。遊園地全体が子供達の歓声と喜びであふれていた。
艦長は出来るだけ人目につかない所を見て回った。たとえば食堂の裏とかトイレの中とか、ロッカー室など、なんとなく怪しそうな所を少しどきどきしながら調べて行ったのだった。しかし、変な所はどこにも見当たらなかった。
お昼になった。お昼の鐘の音を合図に、子供鉄道の向かいにあるレストラン街に集合した四人は、めいめい好きなものを買って来て、野外のテーブルに座りながら昼食を取った。
「何か変わったことはあったかい。」艦長がみんなに聞いた。
「楽しかったですが、変わったことなんかありませんね。」
「楽しかったでヤすが、変なものはなかったでヤす」
「楽しかっただスが、怪しいところはなかったスね。」
みんなは、自分の乗った乗り物でどれが一番面白かったかが、一番興味ある話題で、艦長の問いかけにはいい加減に答えて終わった。そしてわいわいにぎやかな昼食が終わるところだった。
「艦長、あの子、何かへんでヤすね。」もこりんが不思議なものを見るように通りの向こうを見て、あごでその方を指した。
「何?」みんなは、もこりんのあごの先に目をやった。
「あのほら、メリーゴーランドの横の柱の陰にいる子、変でヤす。」 「あのかわいい女の子のことかい。何も変な事ないじゃないか。」艦長が言った。
「それが、ずっとあのままなんでヤす。確か、お昼を食べ始めたころから、あのまんま動かないんですよ。何を見ているんでヤすかね。」
「そう言えばあの子、朝もあそこで見ましたよ。」
「わしも見ただス。そのときは誰かを待っているんだろうと思ったんだスが、迷子だスかね。」
女の子は肩のところがプクッと膨らんだ赤い服を着てピンクの靴をはいている。女の子は柱の陰に隠れるようにして、メリーゴーランドの方を見ているのだ。胸にはしっかりクマのぬいぐるみを抱きしめている。
「よし、行って見よう。」艦長が真っ先に歩き始めた。
マイホームページ入り口 プチッと押してブログの応援お願いします
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます