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国道に出るとすぐに車はつかまった。海沿いに走るとやがて忍路と書かれたバスストップの標識が見えて、そこからトンネルになり、そこを抜けるとすぐそこは欄島であった。
駅の前で車をとめ、国道を横に入って蘭島の駅はあった。塩谷の駅よりは一回り小さいその駅は濃いオリーブ色に塗られている。小樽で見た明るい飛び出してくるような家々の様子とは違って、内にこもるような沈んでいく空気が感じられて、私は駅に入っていくことをためらった。
結局そこから踵を返して再び国道に出、私は海岸の方に向かった。
この駅で待ち合わせた伊藤整と根見子の通った道のりを辿る私の脳裏には、男の後ろから恥ずかしそうに一人の乙女がつき従って歩いている姿が浮かんでいた。
浴衣を着て、白いテニス帽をかぶった19歳の伊藤整と、髪をおさげにして、赤い大きな絣のついた浴衣を緑色の帯で男の子のように結んだ17歳の根見子。二人はそこから連れ立って国道を左へ、余市の方に歩きだしたのだ。
夏の日差しが二人の心を焼いて、その強い影が道の上に落ちている。余市への道はすぐ手前に見えている小さな岬を抜けて、12~3キロ先である。一人はオドオドし、一人は白い木綿のパラソルを差して光の中を歩いて行ったのだ。
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