のしてんてんハッピーアート

複雑な心模様も
静かに安らいで眺めてみれば
シンプルなエネルギーの流れだと分かる

忍路 2

2009-08-08 | 小説 忍路(おしょろ)

 今日中に札幌まで帰るという強い気持ちがあって、私はそのまま国道に沿って歩くのはやめ、そのまま国道を横切って海岸に出た。
 夏には海水浴場となるのだろう、雪に包まれた浜辺には夏の小屋が寒そうに眠っていた。
 私は雪に埋もれた海岸を岬の方に歩いて行った。目の前に横たわる岬はその先端に忍路港を構えている筈であった。岬は海に突き出た壁のように見え、海岸を歩いて行きつくその先から壁を這いあがるように、白い道がZの字を描いている。
 私はその道を登って忍路の村に行き、そこから忍路のバス停に出て帰ろうと考えたのだ。

 谷にそうて
 枯れた林の傍らをのめるやうに直滑降してから
 僕たちは雪を蹴立てて 
 次々にJumping stop した。
 そして目の下に
 吹雪の忍路の村を覗いた。
 また暑い8月には
 紺の海を小舟に帆を張って
 まっしぐらに
 静かな忍路の港へのり入れた。
 月夜にはよく足駄がけで歩いて通った。
 忍路は蘭島から峠を越したところ
 僕の村からも帆走出来るところ。
 そこに頬のあはいまなざしの佳い人があって
 濱風のなでしこのようであったが。

 青春の日々の中で、伊藤整がうたった詩の通り、忍路はこの岬を蘭島から超えたところにあるのだ。



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