整体の大先輩の紺野信吾さんの書いた小説の処女作が、この春に日経文学大賞を受賞して、受賞作「女たちの審判」が今月出版となった。
山形県白鷹町で整体道場を持つ指導者だけあって、「文章を身体に見立てて、整体操法するように小説を書いた・・・」のだそうだ。
死刑囚を巡る人間模様が綾なすこの作品は、まるで中世の絵巻のように、俯瞰的な描写で淡々と展開していく。
読み進む内に、とてつもなく切ない、答えの出ない混沌とした世界に引きずり込まれた。
審判するモノが審判されるモノであり、陪審員の視点を持つ読み手こそが審判される立場である事に気が付いて愕然とする。
それでも・・・泣くしかない、笑うしかない、そして生きていくしかないのが、ヒトの世というもの。
イタリアが生んだ「映像の魔術師」、フェデリコ・フェリーニ監督が生きていたら、映像化して欲しい小説。
名画「カビリアの夏」の主人公カビリアのように、登場人物たちは涙を流して力なく微笑み、それでも生きていくのだ。
紺野さんの稽古場は、築百年を超える納屋を改装したもの。モノクロ画像が似合う。
まるで「たそがれ清兵衛」に出てくるような雰囲気。
元ボクサーにして、誕生日が同じの一歳上の兄貴分として親しくして頂いていたが、やっぱり尊敬に値するホンモノのヒト。
小説を書いた紺野さんが整い、登場人物も整い、そして読み手が整い、混沌のまま浄化されていく。
整体指導者が文章を書くと、こんな小説ができるのだ。
ご一読のほどを!