人生の節目、新しい人生の門出の勾玉を作って欲しいと言うご注文。
どんな人生を送ってきた何歳くらいのお客様だろう・・・。
予算とお客さんの人となりを想像して原石を探した。
古今作られた勾玉の最高傑作が、出雲大社本殿裏の真名井遺跡出土の勾玉。ヒスイの質も素晴らしいけど、勾玉自体が神々しい。何時かこんな勾玉を作ってみたいと切に願うのだ。
私にしてはかなり佳いヒスイ原石を選んだが、どこをカットしてどんな勾玉を作るのか?
原石を観察して、作るべき勾玉の大きさと形状を模索すること数週間。
原石のカットすべき線が見えたら作業は早いけど、人生の節目の勾玉・・・これは結構なプレッシャー。
当初、作ろうと思った形状はもっとスマートな形状の予定だったけども、原石を削っているうちに「もっと削れ!」「もう削らなくて結構!」と、胸の中にヒスイの声が響いてくる感じがして、どうしてもスマートな形状にできなかった。
もっと削った方が格好いい!という自己の想いとの戦いをしながらだから、迷った時には休憩したり別の仕事をして保留である。
毎度の事ながら、私のヒスイ加工はえらく時間がかかるのだ。
完成した勾玉は、「人生の節目・新しい人生の門出」というキーワードに影響された訳ではないのだけど、ぷっくらとした胎児のような形状になった。
微妙な曲線の連続した造形・・・これが意外にも難しく、光にかざしてみると不連続であったりする。
勾玉作りは同じ形状・寸法を1時間に1個の割合で量産できないとプロじゃない、と指摘された事があるのだけど、私には無理な芸当。
作れば作るほどに勾玉作りが難しくなり、時間がかかるようになってきた。
だから私は永遠のシロウトという事になる。