昔の通夜は親戚中が集まって賑やかだったし、男たちが一晩中酒を飲んでバクチして、線香を絶やさないようにしたもんだ、と生前の親父は言っていた。
自宅に戻った親父を座敷に安置して、最初の夜は家族だけで過ごしたが、お袋は一睡もせずに親父に話しかけていた。
二晩目は各地から集まってきた親族に、親父が懐かしがっていた昔の通夜を再現して欲しいと頼んで、文字通りひと晩中、昔話に花を咲かせて酒盛り。
日が変わっても飲んで騒いでいた男たちが寝入ってしまった後も、隣家に住んでいた従弟のトッチャンだけが朝まで独り飲み続け、親父の好きだった映画「ロッキー」のテーマ曲をエンドレスでスマホで流しながら「おじさんさぁ、顔冷たいネ・・・飲んじゃうヨ」と親父の顔をさすっていた。
そのとっちゃんも朝7時には親父に添い寝。山田の家系らしい天真爛漫さを最も引き継いでいるのが、親父とトッチャン。
かっては誕生から死までの儀式が親族の中で完結していた生活が、いまやセレモニーホールや病院に任せるようになり、当事者がお客さんの立場で済むようになってしまい、昔ながらの生活が忘れ去られようとしている。
親戚に久しぶりに逢って旧交を温めることができるのが、逝く者の置き土産。
みんな親父の前で大笑いして、よく食い、よく飲んだ。これこれ!と親父も喜んでるよ、とみんなが言っていた。
本日午後に古式の湯灌をして納棺、自宅から斎場へと出棺して通夜式。もちろん通夜のお籠りは、遠隔地の若手も交えて夜明かしですよ。
ヒマゴたちが逢いにくるぞ。待ってろよ親父!
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