苦悩するシューマン、マンフレッド、そしてバイロン

昨日は忙しかったため、ウォーキングを休みました。
今回取り上げるのは、1810年生まれのシューマンの曲。

マンフレッド序曲は、バイロンの同名の詩劇に
興味を持ったシューマンが1848年に作曲した曲である。
シューマンはさまざまな文学に興味をもち、
これらと音楽を結びつけた劇音楽を作曲した。
したがって、この曲も劇的内容をもった曲で、
十分にシューマンらしい音楽を堪能できる作品である。

マンフレッドという作品のだいたいのあらすじは、次の通り。
主人公マンフレッドがアスターテという女性に恋するが、
その結果アスターテを自殺に追い込んでしまう。
そして、そのことを忘れるためにマンフレッドは、
精霊を呼び出す妖術を覚え、精霊を呼び出す。
すべてを忘却することができるよう精霊に求めるが、
忘却を与えることはできない精霊は、
逆に永遠の生命という呪いを彼にかける。

死こそが忘却の最大の解決であるにもかかわらず、
死ぬことのできないマンフレッドは、
死を求めてさまよい、自殺しようとするができない。
妖霊を呼び出すと妖霊は彼に服従を求めるので
彼はその誘惑を拒否する。
今度は神殿でアスターテの霊を召還し、許しを求める。
彼女は彼にかけられた永遠の生命の呪いを解き、
翌日に解決がもたらされると予言する。
最後は、マンフレッドは静かに死を迎えるという話である。

このマンフレッドの話は苦悩に満ちた作品だ。
曲もそのマンフレッドの苦悩する様子が描かれる。
最後の終わり方は、死を静かに迎える彼を描いている。
人生には苦悩する時期があるし、
それを容易に解決することはできないことがある。
マンフレッドという作品は原作を読んだことはないが、
苦悩する人間、そして苦悩そのものの人生を描いている。
この作品に共感したシューマンこそが、苦悩の人であり、
人生の中でその解決を求めようとし悩み続けた人物だった。
生きるということは、人間が過去を忘却できない限り、
その過去にとらわれる限りにおいて、苦悩に満ちている。
もちろん、その将来も幸せが約束されているわけではなく、
わからないのだからつらいものでもある。
でも、前向きに生きたいもんだなあ。