温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

三瓶温泉 志学薬師 鶴の湯

2011年02月28日 | 島根県
いままで三瓶温泉は地元民向けの「亀の湯」には行ったことがありますが、観光のガイドブックにも載る「鶴の湯」には時間の都合で訪れたことがなかったため、先日ようやく機会を得て入ってきました。

 
小さな温泉街の真ん中に位置する「鶴の湯」。玄関脇の銘板には「源泉掛け流し」という文句が併記されており、否が応にも期待に胸が膨らみます。

 
観光客にもオープンにされている存在なので、てっきり管理されている方が常駐しているのかと思いきや、中に入ってみると無人でした。自分で券売機で料金を払い、その券を誰もいない受付カウンターの上に置かれている箱に投入します。奥のほうには休憩室(お座敷)があるんですね。

 
脱衣所の入口上には「湯まぜ」と書かれたデカい杓文字のようなものが掲げられていました。東日本で言うところの「湯もみ棒」でしょうね。でも三瓶温泉ってそんなに熱かったっけ? なお室内は狭くて実用一辺倒といった造りです。


浴室には浴槽がひとつ。室内には冬季以外は非加熱の掛け流しで源泉を使用している旨が記された説明プレートが、デカデカと掲げられています。源泉温度がぬるいが、そのまま手を加えずに供用しているんだから、その点は理解してくれ、というエクスキューズなんでしょう。


洗い場には一応カランが2基設置されていますが、この施設には給湯設備が無いため水しか出ません。
そこで活躍するのがこの掛け湯の甕。VU75の塩ビ管から源泉がドバドバ出ているので、これを汲んで掛け湯なり上がり湯なりに使うわけです。塩ビ管の口には布が巻かれていますが、固形物を漉し取るためのものでしょう。お湯の出方が不規則で、ドバっと出たり止まったりするのですが、これは自噴ゆえの現象なのか、あるいはポンプが不調なだけなのか。


浴槽のお湯は橙色に強く濁り透明度はほぼゼロ。強い炭酸味+柔らかな塩味+金気+出汁味、強い金気臭+油のような匂いが感じられます。これだけ濃く濁るということは沈殿もしっかり発生しているわけでして、浴槽内の段や底に手を着くとオレンジ色に染まっちゃいます。先ほどの「湯まぜ」棒は沈殿を掻き混ぜるための物なのかもしれません。
浴感はこの手のお湯によく見られるギッシギシな肌触りで、炭酸味は強いものの気泡の付着は見られませんでした。訪問時は既に寒い時期でしたので浴槽のお湯は加温されており、40~1℃くらいでした。浴槽上の岩のオブジェから注がれるお湯はぬるくて少量なので、浴槽内のどこかに加温用配管があるはずなのですが、濃い濁りのため探り当てることはできませんでした。
燃料節約のためにあまり加温していないのでしょうが、ぬる湯好きな私にとっては寧ろその方がありがたく、トロットロのお湯にじっくり長湯することができました。炭酸のパワーなのか、ぬる湯でも湯上りは全身ポカポカで、体の芯から温まるような実感を得られました。

上述の通り、浴槽のお湯は冬季には加温されるものの、それ以外は非加熱です。でも浴槽にお湯を張ったばかりですと、しばらくは源泉温度をかなり下回る状態が続くので、お湯がしっかりオーバーフローされ温度も落ち着き始める午後2時以降の入浴が宜しいかと思います。三瓶周辺はこの手の濃いお湯にたくさん出会えるので、湯めぐりするには楽しいところです。


ナトリウム-塩化物温泉 38.5℃
(詳細は分析表は確認できず)

島根県大田市三瓶町志学932-1  地図

12:00~20:00(冬季は14:00~)
300円
貴重品ロッカーあり、他の備品類無し

私の好み:★★★
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出雲湯村温泉 露天風呂

2011年02月27日 | 島根県
出雲湯村温泉には野湯同然の露天風呂があるというので、見つけてみることにしました。

 
「湯乃上館」の駐車場から川の上流側を見ると、河原に下りる足場板を発見。下りてみましょう。


振り返るとこんな感じ。


河原へ下りたところにはコンクリの浴槽跡と思しき構造物やベンチ、料金入れに使われていたと推察される赤い小さなポストが風雨に晒されて残っていました。かつてここには本格的な湯屋があったのかもしれませんね。


上画像のところからちょっと歩けばすぐに露天風呂到着。この画像だと、どれが川でどれが風呂なんだかわかりませんが、実際に現地に行っても見ただけでは区別できませんでした。それほど川と一体化しているお風呂なのであります。野趣溢れているじゃありませんか。この画像では手前側の波立っていない池みたいなものがお風呂です(現地でよく観察するとお湯の方が底が白っぽく見えます)。試しに手を入れてみると絶妙な湯加減なので、俄然興奮してきました。


露天風呂とはいえ、脱衣所も目隠しも何にもない。ただお湯が張られた池があるだけ。川岸の道から丸見えなので(交通量は少ないですが)、恥ずかしがり屋さんにはかなりハードルが高いかもしれませんが、何度も野湯に入り続けてきた私にとっては朝飯前、さっさと全裸になって入ってみました。

ふぅぅぅ、いい湯だぁぁ。最高だぁ。
湯船は単なる川原の窪みかと思っていましたが、実はしっかりコンクリで川原の石を固めて造ってありました。しかし川面とは隔たりも水位も数センチしか離れていないので、川の中に入っているような錯覚をおぼえます。ちょっとでも増水したらすぐに川に呑み込まれちゃうでしょう。実際に、湯船より山側の高い位置にあった小さな水溜まりでは何匹かの小魚が泳いでいました。きっと増水時にその水たまりへやってきて、水が引いたらそのまま取り残されちゃったんでしょう。

 
お湯は無色透明無味無臭、全くクセのないさっぱりしたお湯です。上述のように湯加減は最高。
人工物の囲いがない川原という環境ゆえ、湯船の底に若干の苔が発生しており、お湯を動かすとその苔が舞ってしまうのは仕方がありません。でも泥臭さは全く感じられないので、臭い面での心配は御無用。
注目すべきは湯船の底。あちこちから次々に泡が上がり、底の細かい砂利が絶え間なく動いています。つまり足元湧出なんですね。砂利が動くところへ手を触れると、お湯の湧出する勢いがしっかりと感じられ、また上がってくる泡が全身に絡んでくすぐったくなるほど、その量や頻度は多く、ただお湯に浸かっているだけでもしっかりと足元湧出を実感することができました。

東北や北海道と違って、どんな山奥でも人の手が届いている西日本は野趣溢れる温泉が少ないのですが、この出雲湯村温泉の露天風呂は、ワイルドで開放感いっぱいの環境で川と一体化でき、かつ足元湧出の新鮮なお湯が堪能できる素晴らしいお風呂でした。


アルカリ性単純温泉 (実質的な野湯のため、分析表なし)

島根県雲南市木次町湯村  地図

24時間入浴可能
無料
マナーを守りましょう
備品はおろか脱衣所も衝立も何もありません

私の好み:★★★
コメント (2)
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出雲湯村温泉 元湯共同浴場

2011年02月27日 | 島根県
湯村温泉という地名は、山梨県や兵庫県にもありますが、今回取り上げるのは島根県です。他県と区別するため当地は旧国名を冠して出雲湯村温泉と呼ばれることが多いようです。

 

この出雲湯村温泉、温泉街としての規模は小さく、川岸の上を走る一本の細い道に沿って形成された在地に1軒、その対岸の国道沿いに1軒、それぞれ旅館が存在するだけなんですが、特に在地に建つ旅館「湯乃上館」周辺はとっても素敵な佇まいでして、茅葺屋根、苔むした石垣、その下にポツンと建つ赤い丸ポスト、それらが面している細い路地、そして一帯を包み込む静寂さが、まるで日本絵画の中にいるかのような素晴らしい景色を生み出しており、その光景に私は思わずうっとりしちゃいました。
また手前には「オーベルジュ雲南」というレストランを兼ねた宿があって、思いっきり新しく洒落た建物なんですが、実は民家を改装したものなので、周囲の風景に見事に溶け込んでおり、新旧渾然としたその店構えに心惹かれてしまうこと必至。店内は古民家的な内装に現代的な什器やファブリックを組み合わせたデザインで、地場野菜をふんだんに使ったパスタなどのお食事はとっても美味。なお宿泊は1日2組限定なんだそうですよ。


「湯乃上館」の真正面にあるのが当地唯一の共同浴場「元湯共同浴場です」。平成13年に改装されて新しくなりましたが、小さくても昔ながらの風情をしっかり残したオール木造の趣のある湯屋です。


入口付近に足湯を発見。輪切りにした丸太の腰かけがいい感じ。

 
玄関を入ったところは受付兼休憩スペースとなっています。湯上りにはここで腰に手を当てて瓶牛乳をグイっと飲み干しちゃいましょう。

 
脱衣所は籠が置いてあるだけの至ってシンプルなつくりですが、改築からまだ10年も経っていないために経年劣化は感じられず、木造ならではのぬくもりが伝わってくるので、脱衣所のような中間スペースにありがちな淡白として実用本位のような冷たい雰囲気は感じられません。

 
お風呂は内湯と露天がひとつずつ。浴室はシックで落ち着いた大人の雰囲気。梁や柱には太く立派な一本の材木が用いられており、思わず息を呑んでしまいます。


浴室には一応カランが1組ありますが、実質的な洗い場は3ヶ所設けられ、ここではカランでお湯を出すのではなく、湯口から目の前の枡に注がれた源泉を桶で汲んで掛け湯するという洒落たスタイルを採っています。同様のものはここここなど、湯めぐりをしていると偶に遭遇しますが、この粋なスタイルを初めて採用したのはどこなんでしょうかね。
なお枡で使われなかったお湯はそのまま浴槽へと注がれていきます。

 
露天は3人サイズの小さなもの。塀で囲まれていますが、その塀の上部は格子状になっているのであまり閉塞感は無く、また下部は窓になっていて開けられるので、お湯に入りながら川を眺めることができます。お湯は内湯から落ちてきたものがまるごと受けて使われており、そして縁の切り欠けからたっぷり排湯されています。

お湯は無色澄明無味無臭、クセが無く軟らかい優しいもので、光の屈折が独特なのか湯中の肌はうっすら青白く見えます。湯口から絶え間なく注がれているので常に新鮮で清らかなお湯を堪能することができ、また湯加減が絶妙なのでいつまでも入っていられます。

小さな建物ですが、共同浴場には勿体ないほど趣と風情のある、まるで老舗旅館のお風呂のような立派な湯屋です。かなりおすすめ。


アルカリ性単純温泉 42.6℃ 溶存物資0.46g/kg 成分総計0.46g/kg

島根県雲南市木次町湯村1336  地図
0854-48-0513(湯乃上館)
湯乃上館ホームページ

10:00~21:00
320円
ロッカー有料(100円)、ドライヤーあり(無料)、ボディーソープあり(シャンプー無し)、各種販売

私の好み:★★★
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海潮温泉 (農村環境改善センター)桂荘

2011年02月27日 | 島根県
 
海潮温泉の温泉街からちょっと赤川の下流側へ外れたところに建つ公共施設。県道からゆけむり橋を渡ってすぐの目の前にあるので、迷うことなく辿りつけました。いかにも公営の箱物らしいファサードで、昭和の老人ホームを思わせる無機質な建物です。

 
玄関に入ると、正面に台車がちょこんと停められており、その上には透明アクリルの料金箱とともに「かじか荘」で見られたものと同じような入場者数を記録する台帳が開いて置かれていました。旧大東町域の入浴施設では、利用者がセルフで台帳記入によって来場者数をカウントするのがお決まりになっているのかもしれません。


館内も古い病院みたいに無味乾燥としていますが、お手入れはちゃんとなされており、廊下も脱衣所も経年程度の割には綺麗です。ロッカーの扉が交互に黄色と緑に塗られており、無駄に派手なのが面白いというかユルいというか…。

 
お風呂は内湯のみで、浴槽は10人が同時に入れそうな大きなものです。浴槽には湯口から源泉がふんだんに投入され、見ていて気持ちよいほど浴槽の縁からたっぷりオーバーフローしています。

 
カランはシャワー付き混合栓が5基と立って使うシャワーが3基。使い勝手は良いですよ。


浴室の壁には「完全掛け流し温泉」というシールが貼ってあるように、冬季は加温されているようですが、その他の加水・循環・消毒は行われていないようです。そのお湯は無色澄明、弱い芒硝の味と匂いが感じられますが、いずれもはっきりとしたものではなく、また「かじか荘」で感じられた出汁のような味や匂いも感じられませんでした。その代わり食塩泉から塩気を抜いたような薬品的な味を微かに帯びていたように思われます。源泉から離れた位置まで引湯しているので、ただでさえ繊細で弱めの質感がその間に失われてしまったのかもしれません。でも気泡の付着は確認できますし、「かじか荘」で得られた軟らかい浴感はそのまま、そして湯加減がとっても良好です。ややぬるめで長湯仕様の湯温なので、一度肌に優しいこのお湯に包まれてしまうと、ついまどろんで眠くなってしまいました。長湯必至かも。

雲南市では市内の温浴施設を整理統合する方向で検討しており、この桂荘もその対象になっているようですが、このまま残されるのか、あるいは大規模改修されるのか、気になるところです。どのような形になっても、掛け流しの湯使いはそのままであってほしいなぁ…。



ナトリウム-硫酸泉・塩化物泉 45.9℃ 溶存物質1.06g/kg 成分総計1.06g/kg
(加温する場合あり) 

島根県雲南市大東町中湯石204-1  地図
0854-43-2414

10:00~20:00 毎週火曜定休
200円
備品類無し

私の好み:★★
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海潮温泉 かじか荘

2011年02月26日 | 島根県
※2012年1月末を以て閉館しました。


斐伊川の支流である赤川に沿って数軒の旅館が肩を寄せ合うように軒を並べる海潮温泉。1300年近い歴史を有する名湯なんだそうですが、立派な旅館「海潮荘」「山水館」など数軒以外の宿は悉く廃業して無残な姿を晒しており、私が訪った時には鄙びを通り越して気が重たくなるような寂寥感が漂っていました。


その小さな温泉街の影にひっそり佇む公営の共同浴場が「かじか荘」です。旅館が並ぶ細いから更に奥へ入った解りにくい場所に位置しています。一応湯屋の前に駐車場があるのですが、軽や5ナンバーじゃないと通れなさそうな狭くて曲がりにくい路地を入っていく必要があります。つい道沿いで車を停めやすい旅館「海潮荘」の駐車場に入りたくなりますが、私有地ですのでNGです。

 
この施設は基本的に無人です。玄関正面に料金箱が置かれているので、自分で料金を入れ、そこに置かれている台帳へ自分でスタンプを捺します。この台帳で入場者数をカウントしているようです。

 
無人ですが建物内にはお風呂道具が売られている自販機が設置されているので、手ぶらで来ても何とかなりそうです。でも欲しい物が売れ切れているかもしれませんが…。その隣にはちょっとした休憩室も確保されていました。


脱衣所は至ってシンプル。いかにも公営の無味乾燥とした室内。

 
浴室には縦長で5~6人サイズの浴槽がひとつ。洗い場のカラン(蛇口)は1組しかないので、体を洗う際には浴槽から直接桶で汲んじゃったほうがいいでしょう。
浴槽へは専用の蛇口から源泉が投入されています。蛇口周りは硫酸塩の析出が付着して白いトゲトゲが発生していました。お湯の投入量はかなり豊富で、浴槽の縁から惜しげもなくオーバーフローしています。
無色澄明、微芒硝味+匂いに、弱い出汁のような味と匂いが混ざり合って感じられます。弱いツルスベ感と硫酸塩泉的な引っかかりが混在した浴感です。お湯が新鮮だからか肌には泡付きが見られました。
熱くも無くぬるくも無い丁度良い湯加減で、且つやさしく包み込んでくれるような柔らかなお湯なので、出るのが躊躇われるほど後を引いてしまう魔力を有しています。湯上りはさっぱり爽快。

施設はごく普通のこじんまりした共同浴場ですが、お湯の柔らかさや優しさは秀逸で、そんなお湯の良さが客を招くのか、訪問当日は朝一番の営業時間前に行ったのですが、既に3人もの常連さんが玄関の前で待機しており、今か今かと扉が開くのを待っていました。


ナトリウム・カルシウム-硫酸塩泉
(詳細な分析表見当たらず)

島根県雲南市大東町中湯石475  地図

9:30~21:00 第2・4月曜定休
200円
ロッカー有り、その他の備品類は無し(入浴用具の自販機あり)

私の好み:★★
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