温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

秋田市 天然温泉こまち(ホテルこまちに宿泊)

2024年10月11日 | 秋田県

(2023年6月訪問)
趣味の乗り鉄を兼ねた初夏のみちのく一人旅で、私は秋田駅にて列車を下り、25年以上前から私が秋田へ寄るたびに利用する大好きな居酒屋「無限堂」で郷土の料理と稲庭うどんを食べ、ほろ酔いになったところで駅前からタクシーに乗り込んで、いざ向かったその晩の宿は「天然温泉こまち」の宿泊施設「ホテルこまち」です。
遠くからでも目立つ大きな看板が目印のこの施設は、交通量が多い国道13号の沿道に位置しており、卸団地と呼ばれる周辺エリアには大きなロードサイド店舗が建ち並んでいるため、昼夜を問わず比較的にぎやかな立地と言えるでしょう。


こちらがエントランス。頻繁にお客さんが出入りしており、人気に高さが窺えます。


受付カウンター付近の様子。いわゆるスーパー銭湯ですので、こちらを利用するお客さんの多くは入浴目的ですが、私のように宿泊利用客もおり、その場合のチェックインも同じ受付カウンターで行います。チェックイン時にスーパー銭湯の館内着とタオルセットを受け取るのですが、そんなところもホテルというよりスーパー銭湯を利用しているみたいな気分にさせます。


宿泊者限定「夜鳴きそば」サービスなんてあるんですね。私は利用しませんでしたが、なんだか某大手ホテルチェーンみたい。


館内図をご覧いただいても分かるようにとても大きな施設で、温泉浴場やホテルのほか、食事処や24時間営業のフィットネスジムなど、様々なサービスを内包しています。たしか宿泊客はフィットネスジムを利用できるとのことで、食べ過ぎにより摂り過ぎたカロリーを燃焼したかったのですが、相応の服装を持ち合わせていなかったため残念ながら利用していません。
今回は後述するように私はホテルの客室に宿泊したのですが、ネットカフェみたいな簡易的な個室(カジュアルスペース)もありますので、廉価で夜を越すこともできます。

ちなみに1階フロントから宿泊ゾーンへ行くには、まず1階廊下の奥まで進み、24時間ジムの看板を潜ってから階段を上がることになります(他にもルートはありそうですが…)。まさかそんな構造になっているとは思わず、最初はちょっと面食らってしまいました。


ホテルのお部屋にはセミダブルやツインなどいくつかの種類がありますが、今回利用した客室はDXダブルベッドのシングルユーズ。広いベッドなので寝相が悪い方でも思う存分寝返り打てちゃいます。


ビジネスホテルのような感じで備品類もひと通り揃っており、快適に過ごすことができました。なお、お部屋の水回りはトイレと洗面台の他にシャワールームがあります。バスタブはありませんが湯船に入りたきゃ温泉浴場へ行けば良いのですから、そのあたりは問題ないでしょう。


浴場入口は1階です。各階の移動には階段の他にエレベータもありますので、あまり動きたくない方はエレベーター、私のように日ごろの運動不足が気になる人は階段、という使い分けもできますね。
暖簾をくぐった先にある脱衣室は奥に長い構造で、二段式ロッカーがたくさん並んでいます。なお入館後の受付カウンターで精算用チップがついたロッカーキーを受け取りますので、その番号のロッカーを使用することになります。


(露天風呂の画像は公式サイトより借用)
浴場内は典型的なスーパー銭湯で、広くて天井の高い室内にいろいろな設備が備わっています。男湯の場合、入って右手前に洗い場があり、シャワー付きカランが約20ほど取り付けられています(うち半数には各ブースを仕切るパーテーションを設置)。内湯の浴槽類は、窓側に並ぶ3つの浴槽のほか、小さなジェットバス、ジャグジー付き寝湯と座湯、そしてシアターサウナやミストサウナ、水風呂など、とにかく多種多様。窓側に並ぶ三つ浴槽は右から、「わらしっこ風呂」、真湯、源泉槽という順番で、「わらしっこ風呂」はその名の通り子供向けのお風呂、真湯の浴槽は非温泉が張られたごくごく普通のお風呂です。そして真湯槽に隣接する源泉槽は内湯で唯一温泉が使用されている浴槽であり、その大きさは横5m弱✕奥行2メートルほどで、浴槽内の材質が黒く、お湯の色あいも相俟って、湯船のお湯がドス黒い石油みたいに見えちゃいました。なお内湯の床には十和田石が採用されていますが、源泉槽の周辺だけ温泉成分の付着によりベージュ色に染まっています。

温泉槽が一つしかない内湯とは対照的に、露天は温泉使用の浴槽がメインとなっています。中央に主浴槽の丸い岩風呂が、その手前に浅い岩風呂(足湯?)が据えられ、いずれも温泉使用です。また脇に設けられた2つの壺湯も温泉が張られており、特にそのうち1つはぬる湯仕様で、そこへ入った私はつい微睡んでしまいました。この他、テレビが設置されている真湯浴槽、そして多くの人が寝転がっている「ねまり湯」や「ごろりん広場」があります。

こちらの温泉は、東北地方の日本海側に点在している塩辛いタイプの温泉で、化石海水のようなしょっぱさと苦汁味、そしてヨード臭が感じられます。またオレンジ色とモスグリーンを混ぜたような色に暗く濁り、湯中では浮遊物も見られます。湯船に浸かるとツルツルスベスベの大変滑らかな浴感が得られますが、浴感が良いからといって長湯すると湯当たりしやすいタイプの泉質ですので、長湯はなるべく避けましょう。どの浴槽でも加温循環消毒が実施されており。かけ流しの浴槽は無いようです。
こうした塩辛い温泉は、夏には汗が引きにくくなるものの、冬に本領を発揮して体の芯までパワフルに温めてくれますから、秋田の厳しい冬には心強い味方になるでしょう。


地元の方の利用が多いようですが、予算に合わせた宿泊利用もできますので、当地を訪ねた旅行者や出張の方々にも便利かと思います。朝食付きのプランもありますし、夕食だって館内のレストランが利用できますから、なかなか便利な施設です。なお鉄道利用の場合、秋田駅から路線バスやタクシーに乗る他、羽越本線の羽後牛島駅から徒歩15分弱でアクセス可能です。実際に私は翌朝、ホテルこまちから歩いて羽後牛島駅へ向かい、そこから普通電車に乗り込みました。


含ヨウ素-ナトリウム-塩化物温泉 27.8℃ pH7.7 成分総計11.478g/kg
Na+:4063mg(94.51mval%), NH4+:26.8mg, Ca++:62.3mg,
Cl-:6020mg(92.26mval%), Br-:36.3mg, I-:13.8mg, HCO3-:824.8mg,
H2SiO3:98.2mg, HBO2:111.6mg,
(平成26年7月30日)
加水無し
加温あり(入浴に適した温度に保つため)
循環あり(衛生管理のため)
消毒あり(県条例基準を満たすため塩素系薬剤を使用)

秋田県秋田市卸町1-2-3
018-865-0001
ホームページ

日帰り入浴5:00〜24:30
5:00~7:00及び21:00以降→600円
7:00~21:00 平日730円、土日祝850円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
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杣温泉旅館

2023年04月16日 | 秋田県

(2022年4月訪問)
このブログをご覧の方でしたら一度は名前を耳にしたことがあるだろう森吉山麓の名湯「杣温泉」。5月の連休に宿泊しようと試みたのですが、ギリギリまで予定が定まらずに予約ができなかったため、日帰り入浴で訪ねることにしました。

秋田県道309号線を東進して巨大なロックフィルダムである森吉山ダムを通過すると、車から見える景色は湖面と山の緑ばかりになり、奥深い山の中にいることを実感します。沿道には以前集落があったことを知らせる石碑がいくつか立てられていますが、現在は生活の気配が感じられません。古くからあった集落はみな湖底に沈んでしまったんですね。そんなことを思いながらハンドルを握り、旧湯之谷集落にある「森吉山荘」(現在休業中)の手前を左に曲がって細い橋を渡り、更に左折して山道を進んでゆくと、そのどん詰まりが今回の目的地「杣温泉」です。こちらもお宿以外には何も無く、まさに秘境の一軒宿。


玄関に入って宿のおばちゃんに日帰り入浴したい旨を伝えて400円を支払います。
靴のまま本棟の裏手に出て、奥の階段を上がった右手に浴舎があります。
浴舎のお風呂は男女別で、男湯の場合は脱衣室が2つあり、奥の方は後述する露天風呂へ比較的行きやすい位置関係になっています。なお室内にはドライヤーが用意されているほか・・・


2つある洗面台の片方には温泉が出てくる専用の水栓があり、コックを開けて温泉を飲むことができます。
もちろん私はここでしっかり飲泉させていただきました。


内湯は相当年季が入っていたタイル張り。男湯の場合は右手にシャワー付き混合水栓が3つ並んでいます。なお洗い場に備え付けられているアメニティは秘湯を守る会オリジナルのクマザサシャンプーとクマザサボディーソープです。

青いタイル張りの浴槽はおそらく6人は入れそうなサイズがあり、絶え間なくお湯が溢れ出ています。なお浴槽の縁でもオーバーフローが流れるところはツルツルとしたタイルの質感そのままですが、オーバーフローしないところは長年にわたって温泉飛沫の付着と蒸発が繰り返されることによって成分析出によるトゲトゲがこびりついており、迂闊に縁へ座ろうとするとお尻にトゲトゲが直撃してチクチクと痛いので、もしこれからご利用される方は念のためにお気を付けくださいね。


温泉は獅子の湯口から浴槽へ投入されています。獅子の口周りには析出がこびりつくことによって、白い立派な髭が蓄えられていました。なお湯使いは完全かけ流しで、加温も加水もせずに丁度良い湯加減が維持されています。素晴らしい!


内湯と露天風呂はちょっと離れており、露天風呂は駐車場の近くにありますので(上画像で温泉マークが書かれた塀で目隠しされているところ)、一旦服を着てから屋外に出て向かうことになります。


周囲の自然と広い空を存分に体感できる露天の大きな岩風呂。
脱衣室こそ男女別ですがお風呂は混浴です。そのかわり宿泊客が利用する時間帯には女性専用時間が設定されているようです。


私が訪ねた日は山の新緑が実に美しく、天気にも恵まれ、また脇を流れる沢のせせらぎも耳に心地よく、最高の環境で湯浴みすることができました。ただし、山の木々が浴槽の上にオーバーハングしているため、季節によっては
ブナの花や落ち葉などが大量にお風呂へ落ちてしまいます。この場合は塀に立て掛けてあるネットで各自掬い上げましょう。

お湯は無色透明ですが、露天風呂では白い湯の花が浮遊したり、あるいは一ヶ所にまとまって沈殿したりと、湯の花の存在感が目立っていました。とりわけ露天風呂のお湯の中を、まるで蛇の抜け殻を思わせる、白いリボンみたいな長い湯の花が何本かユラユラと浮遊していました。おそらく引湯パイプの内側に付着した湯の花が剥がれて流れてきたものでしょう。

泉質としては石膏を含む食塩泉で、飲泉すると薄い塩味やはっきりとした石膏味のほか、ほのかに硫化水素(チオ硫酸イオン)らしい茹で卵風味が感じられます。内湯の蛇口は硫化して黒ずんでいるのですが、これは温泉に含まれる硫黄の影響でしょう。湯中では食塩泉的なツルスベと石膏泉的な引っ掛かりの両浴感が混在して全身に伝わってきます。何も手を加えていないにもかかわらず、豊富な湯量と絶妙の湯加減が維持されており、まさに森吉山の恵み、極上のお湯です。


ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉 53.6℃ pH8.5 溶存物質1.292g/kg 成分総計1.292g/kg
Na+:285.2mg(63.16mval%), Ca++:136.0mg(34.55mval%),
Cl-:459.4mg(67.15mval%), SO4--:287.9mg(31.04mval%), HS-:0.5mg, S2O3--:0.1mg,
H2SiO3:86.9mg,
加水加温循環消毒なし

秋田県北秋田市森吉字湯ノ沢7
0186-76-2311
ホームページ
(2023年冬は休業しており、2023年4月に営業再開予定とのことですが、詳しくは施設へお問い合わせください)

日帰り入浴7:00~20:00
400円
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント (2)
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打当温泉 マタギの湯

2023年04月11日 | 秋田県

(2022年4月訪問)
林業とマタギで知られる秋田県阿仁地区は温泉の数が多くないため、みちのくを得意とする拙ブログでも今まで触れたことは無かったのですが、当エリアでは珍しいかけ流しの温泉に入れる打当地区の温泉旅館「マタギの湯」で日帰り入浴してきましたので、その時のレポートを書き綴ります。

秋田県道308号線を東に走り、秋田内陸縦貫鉄道の阿仁マタギ駅を通り過ぎてしばらくすると、右手に見えてくる大きな建物が今回目指す「マタギの湯」です。こちらは宿泊業の他に日帰り入浴や食堂営業など、センター系施設としての要素も兼ね備えており、私が訪問したときにも、界隈にお住まいと思しき爺さん婆さんが軽自動車でやってきて、大きな建物へと吸い込まれていきました。


駐車場の一角には再現したマタギ小屋があり・・・


小屋の中ではクマの剥製がおっかない顔で牙を剥いてこちらを睨んでいました。ちょっとびっくり。


玄関ホールでは子熊の剥製や顔抜き看板がお出迎え。
靴を脱いで右手のフロントで入浴料金を支払います。


ロビーで前脚を上げて二本足立ちしている巨大な熊は、ヒグマのごんた君。生前は近所のクマクマ園で飼われていたそうです。でも秋田県にヒグマは生息していないので、ご当地のマタギが捕らえたものではなく、北海道から連れてこられたのでしょうね。


さて、ロビー右手の廊下を進んだ突き当たりが浴場です。途中の廊下には秋田内陸縦貫線やマタギを写した写真がたくさん展示されていました。
脱衣室は広くて綺麗。室内には人感センサーで点灯する照明が設置されています。エアコンもあるので季節を問わず快適に使うことができるでしょう。なおロッカーは脱衣室の入口に用意されています。


大きなガラス窓によって外光が燦燦と降り注ぐ明るい浴場。


男湯の場合、洗い場は左の壁に沿って12個のシャワー付き混合水栓が一列に並んでいます。
なお浴場へ入ってすぐ右側にサウナが設けられていますが、訪問時は新型コロナ感染対策のため使用中止になっていました。


内湯の浴槽は緩い円弧を描くような形状で、手前側が3分の1、奥が3分の2という割合で二分割されています。手前側は(目測で)幅3.5m×奥行3m、奥は幅6m×奥行3mといったところでしょうか。手前の小さな浴槽は熱く、奥の大きな浴槽は適温ですが、小さな方は濁り方が弱くて透明度があり、浴槽内で温泉を供給しています。


一方、大きな方は適温ながらはっきりと濁っています(後述する露天風呂と同じ程度)。また、温泉は大小両浴槽の仕切りの上にある湯口から落とされています。大小両浴槽は、大きさのみならず、お湯の湯加減・濁り方・投入方法などいろいろと異なっているんですね。なお両浴槽とも湯尻に向かってオーバーフローしています。


露天風呂はいわゆる岩風呂で、5~6人は同時に入れそうな大きさです。


建物の下に設けられた露天風呂なので頭上の開放感こそありませんが、周囲の山々や広々とした田園風景を眺めながらの湯あみできますのでとっても爽快です。なお露天風呂のベランダに設けられた仕切りはガラス製であるため開放感を引き立てていますが、こちらから丸見えということは外側からも丸見えなのかしら・・・。いや、実際には外側からは見られないような加工が施されているものと思われます。


石造りの熊が口を開ける湯口からお湯が投入されており、湯尻からしっかりオーバーフローしています。なお湯船は適温でした。熊さんのお口の周りには山塩でできた髭が蓄えられていますね。

さてこちらのお湯についてですが、海から遠く離れた山間部にもかかわらず、しっかりしょっぱい山塩の食塩泉です。塩味のほか少々の金気味と出汁味、そして石灰っぽい土類泉の味が得られます。湯船に浸かりながら湯面に鼻を近づけると、金気臭や石灰的な香ばしい匂いが香ってきます。なお炭酸味や気泡の付着などは全くありません。
上述のように比較的熱い内湯の小さな浴槽は濁り方が弱いのですが、内湯の大きな浴槽や露天風呂では黄土色と深緑色を混ぜたような色にはっきりと濁っています。
湯中ではキシキシと引っかかる浴感が全身を覆い、お湯が肌の皴一つ一つにしっかり沁み込んでくるようです。館内表示によれば塩素消毒ありとのことでしたが、特に消毒臭が気になりませんでした。以前は内湯が循環だったようですが、現在は内湯・露天風呂ともに源泉かけ流しです。
しょっぱい温泉ですから厳冬期は体の芯までしっかり温まりそうですね。


ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 54.9℃ pH7.0 溶存物質4.056kg/kg 成分総計4.064g/kg
Na+:789.6mg(51.22mval%), Ca++:635.0mg(47.26mval%), Fe++:0.5mg,
Cl-:1955mg(82.34mval%), Br-:2.8mg, SO4--:551.4mg(17.14mval%),
H2SiO3:40.7mg, HBO2:33.6mg, CO2:8.6mg,
(令和3年10月26日)
加水あり(源泉温度が高いため)
消毒あり(衛生管理のため)

秋田県北秋田市阿仁打当字仙北渡道上ミ 67
0186-84-2612
ホームページ

日帰り入浴9:00~21:00
600円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント (2)
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森岳温泉 森岳温泉ホテル

2019年02月21日 | 秋田県
前回記事の秋田県大館市「露天とガーデンの温泉 ほうおう庭」を出た私は、レンタサイクルに跨り大館駅へと戻りました。



駅の観光協会へレンタサイクルを返却後、列車が来るまで腹ごなしをすることに。
大館駅といえば駅弁「鶏めし」がとっても有名であり、私もいままで何度も食べている大好物です。近年になって駅前には綺麗な店舗が建ち、その食堂でイートインも可能なのですが、旅情を楽しむべく敢えて折詰のお弁当を購入することにしました。


 
大館駅の「鶏めし」って1種類かと思いきや、以前から売られている普通バージョンと、ご当地らしく比内地鶏バージョンの2種類があるんですね。初めて知りました。しかも後者の方がちょっと高い。その名の通り比内地鶏を使っているのでしょう。せっかくなので私は後者を買うことにしました。やっぱり大館の鶏めしは美味い!


 
さて大館駅から奥羽本線の普通列車秋田行に乗り、次なる目的地である森岳駅で下車しました。当駅は森岳温泉の最寄駅ですから、ホームには温泉旅館の名前が掲示されています。かつてはもっと多くの名前が連なっていたのでしょうけど、いまでは2つの宿と1つの公営入浴施設があるだけ。あまりに寂しい温泉地となってしまいました。


 
ガランとした森岳駅構内。一応特急が停まり、かつ地域の玄関口としての役割を果たしているからか、日中は駅員さんが勤務し、改札業務のほか出札も行っています。いわゆる委託駅であり、出改札業務を行っているのはおそらく役場関係の方ではないかと思われますが、近隣の駅までの乗車券のみならずJR各線の指定席券も販売しており、実際に指定席券をお願いすると、JRマルス指令に電話で問い合わせた後、手書きの補充券で発券してくれます。機械化が進んで「みどりの窓口」すら減らしている昨今にあって、昔ながらの駅の業務が残っているとても珍しい駅ですね。


 
駅から今回の目的地である森岳温泉へは3.5kmほど離れており、一応路線バスが運行されているのですが、本数が非常に少ないため、温泉へのアクセスとしてはあまり使えません。このためタクシーに乗るか、宿泊する場合はお宿の送迎車を利用ですることになるかと思います。
この時の私は路線バスに乗り継げず、わざわざ日帰り入浴のためにタクシーを使うのはもったいないという吝嗇な気持ちもあったため、私は温泉まで歩いて向かうことにしました。私が当地を旅したのは2018年の秋。途中には水田が広がり、頭を垂れた稲穂が黄金色に染まっていました。ちょうど稲刈りのシーズンでした。



駅から歩くこと約40分で森岳温泉に到着しました。温泉街というより田舎の集落と表現したくなるような寂しい住宅地の一角、駅から行くと温泉街の最も手前に位置しているのが、今回尋ねた「森岳温泉ホテル」です。後述しますが森岳温泉では旅館の廃業が相次いでおり、現在営業しておるのは2軒だけ。しかも掛け流しのお風呂に入れるのはこちらだけなのです。お宿の外観は瓦屋根でちょっと和風な感じがするのですが、でも基本的には平成的であり、洋風と和風が折衷した帝冠様式の平成版といったようなファサードです。


 
天井が高くて広いロビーの右手にあるフロントで日帰り入浴したい旨を伝え、湯銭を直接フロントに支払います。お風呂はフロントの奥にあり、脱衣室出入口前に無料のロッカーが設置されています。なおこちらのお宿では日帰り入浴を積極的に受け入れているらしく、回数券も発売されていました。
脱衣室内はエアコンが効いているので、塩辛い森岳温泉の湯でポカポカ火照った体をクールダウンするには良い環境でした。ありがたい配慮です。



お風呂は内湯のみですが、檜をふんだんに使っており、黒い石材と檜の質感がシックで大人な雰囲気を醸し出していました。また天井が高く梁も立派です。


 
男湯の場合、入って右側に洗い場が配置されています。本来この洗い場にはシャワー付き混合水栓が8個あるはずですが、私の訪問時は真ん中の1つが故障中なので実質7箇所でした。なおシャワーから出てくるお湯は真湯です。


 
浴場内にはサウナが設けられています。ごく一般的なものですが、このサウナの戸を開けると名古屋の東山動物園で飼育されているフクロテナガザルの鳴き声みたいな「ウォーーッ」という音が室内に響くのです。浴場に入った私は、中で誰かが叫んでいるのかと勘違いしてしまい、ちょっと怖かったのですが、サウナをお客さんが出入りする度にその音が響くので、ようやく合点がいきました。おそらく蝶番の油が切れているのでしょう。
なお浴場内には小さいながら水風呂も設置されています。また水風呂の隣には泡風呂と思しき浴槽も並んでいるのですが、訪問時は空っぽでした。


 
タイル貼りの主浴槽は結構広く、サイズは計測し忘れてしまいましたが、15人は余裕で入れそうな容量を有しています。そしてサウナが出っ張っていて妙に狭くなっている浴槽の最奥部で、上へ噴き上げるようにして熱い温泉が吐出されており、上で述べた空っぽの浴槽へオーバーフローしています。

森岳温泉の歴史はさほど古くなく、昭和27年に石油を掘削しようとした際に湧出しました。新潟から東北、そして北海道にかけて、日本海沿岸のグリーンタフが広がる一帯では、石油掘削を試みた際に温泉が出てしまったという例が多く、ここもその典型です。
石油掘削の際に湧いたグリーンタフ型温泉は、えてしてお湯に色が付いており、湯の花も多いのですが、森岳温泉はこの手のタイプには珍しく無色透明に近い状態で湯船に張られています。しかもオーバーフローが流れるタイルも着色されていません。また一般的にこの手の温泉はアブラ臭やヨード臭が伴いますが、ここはその手の匂いが比較的弱く、浴室内に籠っているようなこともありませんでした。

このためパッと見は食塩泉だと思えず、単純泉かと勘違いしてしまいそうになったのですが、実際に入浴してみてビックリ。非常に塩辛く海水みたいなのです。無色透明で匂いもあまり漂っていたいのですが、ただひたすら塩辛く、そして苦汁の味もかなり強いのです。透明で匂いが少ないという点は、石油掘削の際に湧いた東北のグリーンタフ型温泉としてはちょっと異色の存在かもしれません。

塩分の濃いお湯ですから湯船では体が浮きます。また傷がピリピリ沁みます。湯口の湯は加水のほか、噴き上げによる自然冷却や投入量を加減することで湯温を適切に維持しています。でも非常に塩辛いお湯ですから体が強烈に火照り、そのあまりに凶暴な性格ゆえ数分で体が音を上げ、ノックダウンしてしまいそうになりました。森岳温泉で長湯は禁物です。上述のサウナルームの上には瓦屋根がかかっているのですが、それがあたかも土俵の屋根に見えてしまい、このお風呂での入浴は相撲のような格闘技ではないかと思いたくなるほど。ここでは誰しもがお湯と真正面から戦うことになるでしょう。

湯中では食塩泉系のツルツル感のほか、引っかかり浴感も少々混在しているように感じられました。なお館内には2つの分析表が掲示されており、平成17年のものには消毒されている旨が記入されていますが、平成27年の分析書には消毒している旨の記載は無く、掛け流しとなっていました。実際の私の体感から申し上げても消毒らしさはあまり感じなかったので、純然たる掛け流しと言って差し支えないでしょう(無論弱いとはいえヨードや臭素臭は感じられましたが、塩素と同じ刺激臭のハロゲン系だから、塩素に気づかなかっただけかもしれません)。
湯上がりはベタつきますので、しっかり上がり湯をかけるか、水風呂でさっぱりした方が良いでしょう。
とにかく塩辛い個性的なお湯です。興味がある方は是非体験なさってみてください。


  
お風呂上がりに体をクールダウンさせるべく、温泉街を歩いてみました。温泉街というよりも単なる田舎の集落と表現したくなるような街並みですが、旅館よりも小さな飲み屋(スナック)がやけに目立ち、ちょっと異様な光景でもあります。田んぼと山林、そしてゴルフ場以外に何もないこの地域にとって、三業地的な役割を担ってきたのかもしれません。


 
温泉街の通りは奥に向かって緩やかな上り坂なのですが、その坂を登ってゆくと、左右に廃業したホテルが通りを挟んで対峙していました。いずれもなかなかの規模であり、特に左(上)画像の旅館は収容客数の大きなお宿と推測されますから、そのような宿が相次いでクローズしなければならないほど、この温泉を訪れるお客さんの数は大幅に減少しているのでしょう。


 
坂を登りきった丁字路の真ん中に円筒形の建物を発見。どうやら温泉の源泉ポンプ小屋のようです。小屋の外壁には上述した森岳温泉の歴史が書かれていました。その説明を読んでいると・・・



下の方からボコボコという音とともに湯気が上がってくるではありませんか。なんとオーバーフロー管よりアブラ臭を放ちながら熱々の温泉が捨てられていた。あぁ勿体ない。



温泉街をひと通り歩いた私は、再び徒歩で森岳駅へ戻り、秋田行の普通列車に乗車。
秋田から新幹線で東京へ戻りました。
これにて昨年から続けてきました2018年秋の東北湯巡りシリーズは終了。
次回からは関東近県の温泉を取り上げます。


森岳温泉1号井戸
ナトリウム・カルシウム-塩化物強塩温泉 66.2℃ pH7.5 溶存物質23.02g/kg
Na+:5525mg(60.59mval%), Ca++:2974mg(37.42mval%),
Cl-:13790mg(98.28mval%), Br-:41.4mg, I-:1.8mg, S2O3--:0.3mg, SO4--:284.5mg(1.50mval%),
H2SiO3:51.2mg, HBO2:43.9mg, CO2:15.8mg,
(平成18年1月11日)
加水あり、
加温循環消毒なし

秋田県山本郡三種町森岳字木戸沢115-27
0185-83-5522
ホームページ

日帰り入浴9:00~21:00
450円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
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露天とガーデンの温泉 ほうおう庭 2018年秋再訪

2019年02月14日 | 秋田県
前回に引き続き秋田県大館市街の温泉を巡ります。


 
前回記事で取り上げた「ふるさわ温泉」を出た後は、再びレンタサイクルに跨って、大館市街の温泉をもう一軒訪ねることにしました。向かったのは以前も拙ブログで取り上げたことのある「露天とガーデンの温泉 ほうおう庭」です(以前の記事はこちらです)。



玄関を入った先に設置されている券売機で料金を支払います。2011年秋のオープン当初は当然のことながら全館どこもかしこもピっかピカだったのですが、それから7年近い年月が経った今回、館内は全体的に程よく使い込まれてこなれてきた感じが出ていました。
前回訪問時には気づかなかったのですが、休憩スペースの向こう側にはいろんなお花のテラスが設けられているんですね。お風呂と植物で心身を癒すというこちらの施設のコンセプトがよく伝わってきます。



さて、アットホームな雰囲気の休憩室前に掛かっている暖簾を潜って浴室へ。



お風呂の様子は前回訪問時と特に変わっていません。高い天井の室内は、明かり採りから降り注ぐ外光のおかげでとても明るく、また床には十和田石が敷き詰められているので、照度・感触などいろんな面で快適です。洗い場には14or15基のシャワー付きカランが用意されています(シャワーから出てくるお湯は真湯です)。



洗い場の反対側(右手)には、全国のお父さんたちが大好きなサウナが設けられており、そしてサウナの前にバスタブがポンと置かれていて、そこが水風呂になっています。この取って付けたような水風呂も以前のままですね。



内湯の主浴槽は全面タイル貼りで、その大きさはおおよそ4m×2.5m。湯口から注がれたお湯は浴槽を満たした後、サウナ側へオーバーフローするとともに、後述する露天風呂の方へも流れ出ています。ちょっとぬるめで長湯仕様なのですが、それでも後述する2つの露天風呂を併せた全浴槽の中では最も熱い湯加減です。この内湯は湯口がちょっとユニーク。といいますのも・・・



湯口の上には横になったカエルが置かれているんです。その名も「のんびりカエル」。説明によれば、お風呂で日頃の疲れを癒しのんびりして帰ってほしいという施設の方の気持を形にして表したんだそうです。なるほど、のんびりするのならば、熱いお湯ではダメですね。適度なぬるめのお湯だからこそのんびり帰れるわけです。



露天風呂には趣向の異なる2つの浴槽があるほか・・・



彩り鮮やかな花々が入浴客の目を楽しませています。これは以前の記事でも取り上げている通りであり、「露天とガーデンの温泉」という名前には欠かせない要素でもありますね。お風呂のともに花々に対しても精魂込めてお手入れなさっているのですから、施設スタッフの方のご苦労は相当のものかとお察し致します。


 
2つある露天浴槽のうち、ひとつは岩風呂です。2人サイズで(つめれば3人入れるかも)屋根掛けされており、新鮮源泉の投入と並行して、上述した内湯からのお湯も流れ込んできます。他の浴槽と比べてちょっと浅めかも。



もうひとつの露天浴槽は檜風呂。岩風呂とほぼ同じ大きさ(2人サイズ)ながら屋根はありませんが・・・



こちらは内湯の流れ込みが無い新鮮源泉100%のお湯です。しかもここの湯口は飲泉所を兼ねているのも大きな特徴。保健所が認可した飲める温泉ですから、新鮮で状態の良いお湯なわけです。私個人としてはこの檜風呂が大好き。私はこの「ほうおう庭」にこれまで何度か訪れていますが、なんだかんだで結局この檜風呂で長湯してしまうんです。先ほど内湯の湯加減は長湯仕様と申し上げましたが、露天風呂の両浴槽はそれに輪をかけた長湯向きの温度ですから、ついつい時間を忘れて微睡みながら長湯してしまうんです。

さて、こちらのお湯に関して、見た目はほぼ無色透明ですが、浴槽によってはごく僅かに黄色を帯びているように見えます。大館界隈の温泉はみな無色透明の硫酸塩泉であり、こちらもご多分に漏れないのですが、それだけでなく、食塩泉としての要素も兼ね備えているのが面白いところ。塩味もあり、出汁味もあり、かつ大館らしい硫酸塩泉の特徴もよく出ているのです。例えて言うならば、津軽平野の食塩泉に硫酸塩泉が加わったような不思議な泉質と表現できるかと思います(一部のマニア以外には余計わかりにくくなってしまったかも)。
また弱アルカリ性であり、かつ食塩泉のファクターもあるので、滑らかでツルツルする浴感が得られます。しかも周辺の他温泉と比べてぬるめの湯加減であるため体への負担が重くなく、それでいて、硫酸塩泉&食塩泉のパワーによって力強く温まります。各浴槽とも地下100mから汲み上げた源泉を完全掛け流し。
何度入ってもここのお湯は素晴らしいと実感致しました。


ナトリウム-硫酸塩・塩化物温泉 42.7℃ pH7.9 120L/min(動力揚湯) 溶存物質7.894g/kg 成分総計7.901g/kg
Na+:2202mg(79.88mval%), Ca++:454.3mg(18.91mval%),
Cl-:1840mg(42.79mval%), Br-:6.2mg, SO4--:3294mg(56.54mval%),
H2SiO3:21.7mg,
(平成23年10月18日)
加水加温循環消毒なし

秋田県大館市観音堂393
0186-49-8547

5:30~21:00
400円(5:30~8:00は300円)
ロッカー・ドライヤーあり、石鹸・シャンプーなどは販売

私の好み:★★★

コメント (4)
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