①エゲル温泉
前回のエゲルサロークからエゲルの街に戻ります。バスターミナルから東の方角へ歩き出し、セーチェニ・イシュトヴァーン通りを横切り、街の中心部であるドボー・イシュトヴァーン広場に出ると、目の前の丘には13世紀に建てられたエゲル城が聳え、また広場に面して18世紀中頃に建立されたバロック様式の聖フランシスコ派修道院がたっています。広場の東端にはエゲル川が流れていますので、この流れに沿って南下してゆくと、やがて緑豊かな広い公園へと導かれます。
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美しいエゲルの街並み。右画像の丘の上がエゲル城
エゲル市民憩いの場であるこの公園の北端には、こんこんと鉱泉が湧き出る泉があって、おいしい水を求める市民が列を成して汲みに来ています。そして公園の中央に、これまた市民に大人気のエゲル温泉があります。温泉とはいえ、ハンガリーの他の温泉のようにプールが併設されており、いや寧ろプールが主で温泉が副であるような位置づけで、構内からは大勢の人の歓声が聞こえてきます。
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鉱泉が湧き出る泉。ひっきりなしに人々が汲みにやってきます
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温泉の入口
入口は何箇所か設けられており、上述の鉱泉の湧出所付近にもあるのですが、私は公園内部にある川に面した入口を選びました。窓口で料金を支払うとバーコードが印刷されたテープが手渡され、これを腕に巻きバーコードをゲートの読取機にかざすことによって入退場を管理しています。ゲートを通過するとロッカーの受付があり、ここでデポジットの支払いと引き換えにロッカーの鍵が渡されます。ロッカーは東京のカプセルホテルにあるような小さく狭いもので、あまり使い勝手は良くありません。
ロッカールームから外へ出ると、天気が良く暑い日だっただけあり、小さな子供たちがあちらこちらで大はしゃぎ、また老若男女を問わず皆さん寝転んで日光浴の真っ最中、平日なのにものすごい混雑です。ロッカールームを出て右手が普通のプール、左手が温泉プール群となっており、この他に別料金制のプールもありました(この別料金制については仕組みがよくわからなかったのでパスしました)。普通のプールは若年層が多いのに対し、温泉槽は比較的お年を召した方が多かったような気がします。
無色透明のお湯は、エゲルサロークのお湯に似た硫黄の香りがします。お風呂の近くには外気温と温泉槽の湯温を示すマグサイン型の温度計が立てられており、訪問時の外気温は23℃、湯温は37℃でした。表示よりもちょっとぬるいかなと感じた私は湯口付近へ行こうとしましたが、温度の高い湯口付近は常連と思しきお年寄りががっちり陣取っていてなかなか入り込む余地がありません。それでも粘ってなんとかスペースを確保、真っ青な空の下で硫黄のお湯を楽しむことができました。なおシャワーのお湯も温泉水で、しっかり硫黄の香りが漂ってきました。
本当はゆっくりしたかったのですが、温泉にあまり面白みを感じることができず、なにしろ混雑している上に子供がうるさくて、のんびり湯浴みできるような状況ではなかったので、不本意ながら早々にこの温泉から退却。温泉の他にエゲルで行きたかったところへ向かうことにしました。
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左:日本の事務所の更衣室のような、小さめのロッカー
右:プール
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左:温泉槽
右:湯口
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トルコ式温泉のようですが、週末のみの営業のようです。それどころか内部は工事中でした。
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左:時計を兼ねた温度計(外気温・温泉温度)
右:硫黄の温泉が出るシャワー
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②美女の谷
街の南西にはワイン畑の丘に囲まれた小さな谷があります。人呼んで「美女の谷(Szépasszony-völgy)」。エゲルはハンガリー有数のワインの産地であり、谷の崖や傾斜に掘られた穴蔵のようなワイン蔵で、上質なワインを安い金額で試飲ができるのです。
温泉のある公園から西へ30分弱、辻々に立つ道標に従いトコトコと歩くと、やがて防空壕のように谷(というか緩やかな窪地)の斜面に穴蔵が穿たれた場所にたどり着きます。穴蔵といっても、ただ洞穴があるのではなく、蔵ひとつひとつが店として表を構え、それぞれ趣向を凝らして穴の前に屋根を設けたり装飾を施したりしており、それを眺めるだけでも各ワインセラーの個性が楽しめて面白く、またそれゆえにどこに入ろうか迷ってしまいます。
蔵は全部で70近くあるそうで、さすがに全部を巡るのは無理。谷の入口に近いほうの穴蔵は廃業したものが多いようで、どこも暗く扉を閉ざしていますが、奥に進んで自動車用ゲートのある辺りやその奥の道路がロータリー状になっているところはどこも扉を開けており、集客目的の看板を立てたり試飲用のテーブルを出したり入口に花を飾ったりと、とてもウェルカムな雰囲気。店先のテーブルではファミリーがワイングラス片手に歓談しています。
数ある蔵のうち、私はロータリーの入口に近い店に入りました。中はまさに穴倉といった感じで、奥行き10メートルほどの内部にテーブルと椅子が置かれ、その奥にカウンターが設けられていました。大きなグラスで甘めのものを注文。香りがよくフルーティーでとても美味しく、下戸な私もあっというまに飲み干してしまいました。リットル単位で量り売りもしているので、お土産にしてもいいかもしれません。
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街の中心部から美女の谷へは、このように随所に道標が立っています
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美女の谷へ近づくにつれ、このような景色が視界に入ってきます。丘の向こうにはブドウ畑が。
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穴蔵ワインセラー群。看板を出して集客する店もあれば、おばちゃんが店先に出て刺繍をしている店もあり、なんだかとっても長閑です。
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左:街と美女の谷を連絡するSL型の観光トロッコ自動車
右:なみなみと注がれたワイン。おいしかった!
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・エゲル温泉
エゲル駅から徒歩15分程
所在地:3300 Eger, 2 Petőfi Square 地図
電話:(36)314-142
ホームページ(英語表示)
私の好み:★
・美女の谷
エゲル駅から徒歩20分、街の中心部から徒歩30~40分
地図