温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

湯瀬温泉 六助旅館

2015年05月20日 | 秋田県
 
秋田県鹿角市の東部に位置する湯瀬温泉には、渓谷に沿った狭い路地に昔ながらの湯治宿風情を色濃く残す一角がありますが、今回はその路地に面している「六助旅館」で日帰り入浴してまいりました。冒頭から余談で恐縮ですが、この旅館の左隣には何やら怪しげな小屋があり、一見すると倉庫のようでもありますが、屋根や妙に傾斜しており、路地に突き出た塩ビ管からお湯が出ているので、その小屋はどうやら地元民専用の浴場のようです。



私が訪問した時には女将さんがいらっしゃったので、入浴をお願いして料金を直接支払いました。建物はかなり年季が入っており、女将さんも人生を相当重ねていらっしゃるようですが、斜陽感を払拭するかのように明るく朗らかに対応してくださいました。なお帳場のカウンターには角盆が置かれていますので、入浴利用の際、誰もいなければここへ湯銭を置いて入館しても良いようです。帳場の中を覗くと、骨董品クラスの内線電話機が置かれていました。これって現役なのかな。


 
深く切り立った湯瀬渓谷の谷底に玄関があり、傾斜に沿って建てられているため、宿は上へ上へと階層的な構造になっているんですね。いかにも古い日本建築らしく急な階段を登って、浴室がある3階へと上がります。途中2階でたくさん陳列されている食器類を発見。


 
「どうぞ御自由にお持ち下さいませ。おひとりおいくつでもけっこうです」とのこと。ラインナップは、小皿、湯のみ、ガラスカップ、灰皿等の他、文庫本、そしてなぜかオジサン向けの靴下も並べられていました。靴下はともかく、他はいままで旅館で使っていたものなのかも。実際に持って帰る人はいるのかな。


 
階段を3階へ上がりきったところには、「月見の間」と称する客室が休憩室として開放されていました。室内は50年ちかく時計の針が止まっているかのような、とってもレトロな趣き。褒め言葉になっていませんが、良い塩梅にくすんで色褪せており、小津安二郎映画の世界がタイムスリップして21世紀の湯瀬温泉に登場したかのような光景を目にして、思わず息を呑んでしまいました。


 
廊下の突き当たりが男女別の浴室。男湯は廊下と同じレベルですが、どうやら女湯はここから階段を下った先にあるようです。傾斜地に沿った土地ですから、まるでスーパーマリオのように、階層を上下しながら移動するんですね。お年寄りの体にはちょっと堪えるかもしれませんが、普段から運動不足の方には程よいカロリー消費になりそうです。
まるで共同浴場のように質素な造りの脱衣室には、棚と古いカウチがあるばかり。流し台などはありません。タオルが掛けられたカウチが余計に哀愁を漂わせています。壁の張り紙では「おフロにでているお湯はとめないで下さい!」と注意喚起されていました。湯量を絞っちゃうとぬるくなりやすいのかな。



お風呂は内湯のみで、まん丸い浴槽が印象的。何も使われていないデッドスペースが妙に広くて、少々寒々しい気もします。大雑把に室内を表現しますと、室内の下半分はタイル貼りで、上半分はモルタルの上に白い塗装が施されているのですが、その塗装部分(壁や天井など)は経年劣化なのかシミが目立っており、壁や床のタイルも目地の黒ずみ等が目についてしまいました。ちょっとお疲れのご様子…。


 
壁に取り付けられたカランは計3基で、うち2基はシャワー付き。お湯のハンドルを回したところ、激熱のお湯が吐出されたのですが、明瞭なタマゴ臭とタマゴ味が感じられたので、間違いなく温泉のお湯が引かれているのでしょう。このようにちゃんとしたシャワーがあるのに、なぜか常連のお客さんはカランを使わず、みなさん湯船に縁に座り込み、桶で湯船のお湯を汲んでいらっしゃいました。シャワーなんて使わないのがこちらの流儀なのかも。


 
桶や腰掛けなどの入浴用具がきちっと整頓されており、入浴客も使用後はきちっと片付けていましたので、こちらの常連さんにはマナーが確立されているようでした。ユニークなのがシャンプー等の入ったボトルでして、ガムテープを貼った上からマジックで「ボディー用」「かみ」と手書きされているんです。とっても家庭的で、良い味出てます。



丸い浴槽は直径3mほどで、おおよそ4~5人サイズ。槽内は白いタイル貼りで、縁の切り欠けからお湯が溢れ出ていました。浴槽は真円形ではなく、部屋の形状に合わせて窓側の2方向が直線状にカットされているのですが、おそらく地形に合わせているのでしょう。お湯は無色透明で、本来はクリアに澄んでいるものと思われますが、夕方の多客時だったためにお湯が幾分鈍っており、洗い場から見てもわかるほどの濁りが発生していました。湯中をよく見ますと細かな黒いものが浮遊していたので、これが濁りをもたらす一因と推測されるのですが、この浮遊物はどうやら湯の華とは違うらしい…。底がヌメっており、タイルの目地も黒ずんでいたので、おそらく(以下省略)。女将さんが一人でメンテしているのかな。ちょっとマンパワーが足りていないようです。


 
湯船のお湯は専用の水栓から注がれており、私の入室時は蛇口の先にホースがつながっていたのですが、後からやってきたお客さんは、掛け湯を終えて湯船に浸かると、おもむろにそのホースを抜いてしまいました。脱衣室の張り紙にはお湯を止めないで欲しい旨がアナウンスされていましたが、ホースを抜くなとは書いていませんから、特に問題は無いのでしょう。でも、ホースが有ると無いとで入浴に際して何か劇的な違いでもあるのかな。
そのお客さんがホースを抜いてくれたおかげで、水栓の先っちょに白い温泉成分がビッシリこびりついていたことがわかりました。分析表の数値から考えるとあまり析出は現れそうにありませんが、長い年月ホースを被せることによって、こうした付着ができあがるのですね。湯瀬温泉は美人の湯と言われていますが、湯船に浸かると癖が少なく優しいフィーリングが得られ、美人の湯という名に相応しいスルスルとした滑らかな浴感が肌を走りました。でも正直なところ、湯船よりもシャワーの方が鮮度感が良くて知覚もハッキリしていました。今回は訪れたタイミングが良くなかったのかもしれません。

地元の方から銭湯代わりとして使われているのか、私が訪問した夕方には、手に桶を持った爺さん婆さんが次々にこちらを訪れ、その日の汗を流していらっしゃいました。地元から愛されているお風呂なんですね。


アルカリ性単純硫黄温泉(硫化水素型) 64.7℃ pH8.9 自然湧出 溶存物質615.7mg/kg 成分総計615.7mg/kg
Na+:149.2mg(81.53mval%), Ca++:27.0mg(16.96mval%),
Cl-:28.7mg(10.09mval%), HS-:2.4mg, SO4--:310.4mg(80.45mval%), HCO3-:6.2mg, CO3--:15.6mg,
H2SiO3:70.3mg,
(平成19年8月26日)

JR花輪線・湯瀬温泉駅より徒歩3~4分(約300m)
秋田県鹿角市八幡平湯瀬湯端37  地図
0186-33-2324

日帰り入浴時間不明
入浴300円
シャンプー類あり

私の好み:★★
コメント (2)
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