温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

三本柳温泉 2014年10月再訪

2015年05月10日 | 青森県
 
前回取り上げた嶽温泉「岩木青少年スポーツセンター」で湯浴みを済ませた後、久しぶりに岩木山麓の一軒宿「三本柳温泉」へ立ち寄ってみることにしました。こちらの温泉は以前に拙ブログで取り上げたことがあり、実に5年ぶりの再登場となります(当時の記事はこちら)。秋の麗らかな青空の下、周囲にはリンゴ畑や田んぼが広がり、なんとも長閑な田園風景です。


 
目の前には温泉と同名のバス停が立っているのですが、時刻表に記されているのは朝6:56発の義塾高校行きだけ。1日1本、通学のためだけに運行されているわけです。ということは、逆方向は下校時刻の一本だけということかな。吉幾三『俺ら東京さ行ぐだ』の「バスは一日一度来る」という歌詞が、この地区では今でも現実なのですね(いや、徐々に削減されていった結果、辛うじて1日1本が残ったのかも)。
旅館はいくつかの棟によって構成されており、玄関は駐車場の先のやや奥まった場所にあるのですが、久しぶりに訪れたら、玄関まわりはすっかり色褪せ、袖看板も変色しており、その渋すぎる佇まいに「あれ? 営業しているのかな」と、鄙びた温泉でよく遭遇する一種の胸騒ぎを覚えてしまいました。


 
不安を抱きながら恐る恐る戸に手をかけると、何のこと無くすっと開いてくれたのでひと安心。天井にぶら下がっている紅白の提灯が、来客を30年ほど前へタイムスリップさせてくれます。古くて鄙びていながらも、旅館としての矜持なのか、館内はきちっと清掃されており、上がり框にはスリッパは整然と並べられていました。帳場で入浴をお願いしますと、笑顔で快く対応してくださり、ここまでの不安は一気に雲散霧消。足取り軽く廊下を進んで浴室へ。


 
クランク状に曲がった廊下の先には第二玄関のような小ホールがあり、そこを抜けた先に紺と紅の暖簾が掛けられていました。お風呂は男女別の内湯のみ。


 
私と入れ違いにヨボヨボのお爺さんが去っていったのですが、その残り香なのか、脱衣室内にはシップの臭いが充満していました。棚や壁紙にシップ臭が染み付いているのは、田舎の温泉ではよくあること。温泉も膏薬も、爺さん婆さんの日々の健康を支えているんですから、どっちにしたって頼もしいではありませんか。室内の真ん中には畳表が張られた腰掛けが置かれ、洗面台は2台設置されています。扇風機もあるので、湯上がり後のクールダウン対策もぬかりありません。


 
 
タイル張りの浴室には、大きな浴槽が一つとシャワー付きカランが計5基設けられています。高い天井を見上げると白い壁にシミが目立っており、長年のお疲れは隠せませんが、窓から陽光が降り注いでおり、湯気篭りもないので、気持ち良いバスタイムを過ごすことができました。なおカランから出てくるお湯は真湯です。



窓の外には3本の柳ではなく、枝ぶりの良い1本の大樹が、コンモリとした丘の上で青々と葉を茂らせていました。樹の下からこちらへ伸びている管は、温泉の引湯管かな。


 
浴槽は目測で3m×6.5mの四角形。おおそよ10人サイズでしょうか。槽内には温泉成分がこびりついており、入浴時にお尻が直接触れる底面は、石灰質によってデコボコ&ザラザラしていました。浴槽右上の源泉投入口からお湯が絶え間なくザバザバと注がれており、赤御影石の縁から洗い場へしっかりと溢れ出ていました。浴槽のお湯は黄土色+クリーム色+モスグリーン色の三色をミックスさせたような濁り湯で、金気や石膏の味と匂いが感じられ、これに甘塩味やほろ苦み、そして弱炭酸味が加わってきます。館内表示によれば源泉ではお湯が自噴しているんだそうでして、「加熱、加水は一切しておりません。源泉掛け流しの温泉です」と誇らしげな文字が躍っているのですが、その言葉に偽りは無く、人為的な調整をしなくとも湯船では42℃前後という実に入りやすい湯加減が保たれており、しかも投入量が多いので非常に新鮮です。さすが温泉ファンから評判の温泉だけあり、掛け値なしに気持ち良いお湯ですね。


 
洗い場の隣に設けられている小さな上がり湯には、主浴槽とはフィーリングがちょっと異なるぬるめのお湯が落とされており、主浴槽よりもこちらのお湯を高く評価する温泉ファンもいらっしゃいますが、かく言う私もそんな見解を抱く者の一人。槽内は赤茶色に染まり、その周りにはベージュ色をした鱗状の成分付着が見られますが、配管から落とされるお湯は無色透明で、槽内でも濁ることはありません。主浴槽のお湯と同じ源泉なのか、はたまた別源泉なのかよく分かりませんが、温度は40℃に満たず、甘塩味+石膏味+焦げたようなアブラ風味+ほろ苦みが感じられる他、主浴槽よりも炭酸味がはるかに明瞭であり、自分の体にお湯を掛けるだけでも炭酸らしい爽快感が肌を走りました。あまりの気持ち良さに、ついつい夢中になって掛け湯をしまくっちゃった私。このお湯に全身入浴できたら最高なんだけどなぁ…。

岩木山の南麓界隈には、この三本柳温泉の他、百沢温泉や湯段温泉など、似たような質感を有する塩化土類泉や重炭酸土類泉系統のお湯が分布していますが、それぞれに違った個性があって、入り比べると各温泉の似て非なる質感が楽しめるのが嬉しいところです。


三本柳温泉(3号泉)
ナトリウム・マグネシウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 42.2℃ pH6.8 溶存物質1.9935g/kg 成分総計2.0646g/kg
Na+:325.8mg(52.52mval%), Mg++:101.0mg(30.80mval%), Ca++:73.0mg(13.50mval%), Fe++&Fe+++:0.9mg,
Cl-:453.1mg(48.52mval%), Br-:0.4mg, I-:0.6mg, SO4--:58.3mg, HCO3-:750.9mg(46.72mval%),
H2SiO3:189.3mg, CO2:71.1mg,

青森県弘前市大字百沢字温湯7-1  地図
0172-83-2508

8:00~20:30
300円
備品類なし

私の好み:★★★
コメント (2)
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