市町村合併により現在日光市に組み込まれてしまった栃木県の旧栗山村は、栃木県最奥の秘境として知られており、また湯西川や奥鬼怒など有名な温泉地を擁する湯処でもあります。今回記事から数回連続で、そんな栗山村に湧く温泉を取り上げてまいります。

川治温泉から川俣温泉方面に向かって県道を23号線を走っていると、黒部地区の小さなダム湖を越えたあたりで、廃業したガソリンスタンドとドライブイン(食堂)に挟まれた丁字路を通過します。かつてこのガソリンスタンドには温泉が垂れ流されている場所がありましたが、現在は撤去されてしまったようです。
なお角には日光市営バスのバス停も立っていますが、こちらは現役です。

丁字路を右折してすぐ。食堂の並びに建っているのが、今回の目的地である黒部温泉「四季の湯」です。余談ですが、当地にある小さなダムは黒部ダムと称するんだとか。同じ名前でも富山県の有名なそれとは大違いです。

建物の入り口を開けると来客を知らせる変なチャイムが鳴ったので、不意な音にちょっとビックリしちゃいました。玄関右手の受付にいるおじちゃんに直接湯銭を支払います。脱衣室にロッカー無いので、貴重品はその受付前に設置されている100円有料のロッカーへ預けましょう。
受付の前には座敷があり、ちゃぶ台が左右に並べられているのですが(自由に使え、訪問時には風呂上がりの数人のおばちゃんが寝っ転がっていました)、その間を歩いて奥の廊下へ進み、何段かステップを下っていった先の突き当たりに浴室の暖簾がさがっていました。女湯は手前で、男湯は奥です。脱衣室は無駄に広くて棚が一か所あるだけという簡素なもの。ベンチのようなものも壁に沿って取り付けられているだけで、洗面台もありません。その代り天井扇なら取り付けられていますから、クールダウンならできそうです。

お風呂は露天風呂のみで内湯はありません。床や浴槽など足元は全てモルタルで固められており、また屋根は半透明のポリカ波板が用いられ、柱や梁など諸々の建材もコメリで調達できそうなものばかりなので、全体的に手作り感が満ちています。周囲には山の緑が広がるばかり。目に入ってくる人工物は揚水発電所の設備程度。実に開放的であり、シンプルかつ豪快な造りなので、ちょっとワイルドな気分になれるかもしれません。

脱衣室からお風呂へのステップを下ってすぐ右手の建物側に洗い場が設けられています。シャワー付き混合水栓が3つあり、シャワーからは源泉のお湯が出てきました。お湯については後述しますが、芳醇なタマゴ感を有するトロトロのお湯を頭から浴びると、温泉愛好家としては多幸感が漲り、つい興奮してしまうこと必至です。

浴槽は二つあります。
洗い場の前に位置しており、且つ脱衣室から出てすぐ目の前にあるのが上写真の浴槽です。ほぼすべてに屋根が掛けられており、周りは立派な岩で囲われています。一般的な深さを有し、キャパはおおよそ15人です。
このお風呂で目を惹くのが、独特な形状をした湯口。女湯との仕切りの塀から竹の根を切って中にパイプを突っ込んだような湯口が突き出ており、そこから瀧のようにお湯が落とされているのです。辺りに響きを轟かせている大量のお湯は結構熱く、打たせ湯としては不向きかもしれませんが、湯船が大きいためかちょうど良い湯加減に落ち着いており、人によっては若干熱く感じるかもしれません。全量掛け流しという贅沢な湯使いであり、湯尻からしっかりとオーバーフローしていました。

一方、もうひとつの露天風呂は広いけど浅い造りで、屋根は無く、おおよそ20人サイズ。上述のお風呂と同じく岩風呂で底はモルタル塗りです。こちらの湯口も竹の根を切ったようなものですが、打たせ湯にはなっていません。浅くて屋根が無く常に風に晒されているためか、こちらは若干ぬるくて長湯仕様の湯加減でした。青空を仰ぎながら湯あみするなら、こちらのお風呂が良いですね。
お湯は無色透明。泉質名はアルカリ性単純泉ですが、硫化水素イオンを1.3mg含んでいるため、お湯からは硫黄由来のタマゴ臭とタマゴ味がしっかり感じられます。いや、しっかりどころかかなり芳醇です。また先述のようにシャワーのお湯からもこのタマゴ感がはっきりと得られます。この他、微かに石膏の感があったような気がしますし、アルカリ性泉ならではの微収斂も感じられました。若干お湯が青色っぽく見えたのは、浴槽の材質の影響でしょうか。とてもトロトロしたお湯であり、湯中ではヌルヌル&ツルスベという、まるでローションみたいな滑らかな浴感が楽しめました。そして湯上がりさっぱり爽快。私好みの良いお湯です。ツルツルヌルヌルの抜群な浴感はpH9.8という比較的強いアルカリ性に傾いていることのみならず、炭酸イオン36.1mgという、ちょっと普通の温泉では見られないような数値も大いに影響しているかと思われます(炭酸イオンがこんなに多い温泉は珍しいかと思います)。大量掛け流しを実現しているためにお湯の鮮度も良く、これも質感の良さを生んでいるのかもしれません。
プリミティブな造りの露天風呂なので、アメニティや設備を重視する方には不向きかもしれませんが、露天の開放感やお湯の質を重視する方には是非ともお勧めしたい、素敵なお風呂でした。
四季の湯
アルカリ性単純温泉 49.7℃ pH9.8 250L/min(動力揚湯) 溶存物質0.164g/kg 成分総計0.164g/kg
Na+:38.3mg(93.51mval%),
SO4--:17.4mg(13.21mval%), HS-:1.3mg, CO3--:36.1mg(43.75mval%), HSiO3-:57.2mg(27.01mval%), OH-:1.1mg,
(平成23年7月20日)
加温加水循環消毒なし
鬼怒川温泉駅・新藤原駅・川治温泉駅などから日光市営バスの女夫渕行で「観光ドライブイン前」停留所下車すぐ
栃木県日光市黒部21
0288-97-1500
ホームページ
8:00~21:00(受付終了20:00)
500円
ロッカー(100円有料)あり、石鹸のみ備え付けあり、ドライヤー受付貸出
私の好み:★★★


川治温泉から川俣温泉方面に向かって県道を23号線を走っていると、黒部地区の小さなダム湖を越えたあたりで、廃業したガソリンスタンドとドライブイン(食堂)に挟まれた丁字路を通過します。かつてこのガソリンスタンドには温泉が垂れ流されている場所がありましたが、現在は撤去されてしまったようです。
なお角には日光市営バスのバス停も立っていますが、こちらは現役です。

丁字路を右折してすぐ。食堂の並びに建っているのが、今回の目的地である黒部温泉「四季の湯」です。余談ですが、当地にある小さなダムは黒部ダムと称するんだとか。同じ名前でも富山県の有名なそれとは大違いです。


建物の入り口を開けると来客を知らせる変なチャイムが鳴ったので、不意な音にちょっとビックリしちゃいました。玄関右手の受付にいるおじちゃんに直接湯銭を支払います。脱衣室にロッカー無いので、貴重品はその受付前に設置されている100円有料のロッカーへ預けましょう。
受付の前には座敷があり、ちゃぶ台が左右に並べられているのですが(自由に使え、訪問時には風呂上がりの数人のおばちゃんが寝っ転がっていました)、その間を歩いて奥の廊下へ進み、何段かステップを下っていった先の突き当たりに浴室の暖簾がさがっていました。女湯は手前で、男湯は奥です。脱衣室は無駄に広くて棚が一か所あるだけという簡素なもの。ベンチのようなものも壁に沿って取り付けられているだけで、洗面台もありません。その代り天井扇なら取り付けられていますから、クールダウンならできそうです。


お風呂は露天風呂のみで内湯はありません。床や浴槽など足元は全てモルタルで固められており、また屋根は半透明のポリカ波板が用いられ、柱や梁など諸々の建材もコメリで調達できそうなものばかりなので、全体的に手作り感が満ちています。周囲には山の緑が広がるばかり。目に入ってくる人工物は揚水発電所の設備程度。実に開放的であり、シンプルかつ豪快な造りなので、ちょっとワイルドな気分になれるかもしれません。


脱衣室からお風呂へのステップを下ってすぐ右手の建物側に洗い場が設けられています。シャワー付き混合水栓が3つあり、シャワーからは源泉のお湯が出てきました。お湯については後述しますが、芳醇なタマゴ感を有するトロトロのお湯を頭から浴びると、温泉愛好家としては多幸感が漲り、つい興奮してしまうこと必至です。


浴槽は二つあります。
洗い場の前に位置しており、且つ脱衣室から出てすぐ目の前にあるのが上写真の浴槽です。ほぼすべてに屋根が掛けられており、周りは立派な岩で囲われています。一般的な深さを有し、キャパはおおよそ15人です。
このお風呂で目を惹くのが、独特な形状をした湯口。女湯との仕切りの塀から竹の根を切って中にパイプを突っ込んだような湯口が突き出ており、そこから瀧のようにお湯が落とされているのです。辺りに響きを轟かせている大量のお湯は結構熱く、打たせ湯としては不向きかもしれませんが、湯船が大きいためかちょうど良い湯加減に落ち着いており、人によっては若干熱く感じるかもしれません。全量掛け流しという贅沢な湯使いであり、湯尻からしっかりとオーバーフローしていました。


一方、もうひとつの露天風呂は広いけど浅い造りで、屋根は無く、おおよそ20人サイズ。上述のお風呂と同じく岩風呂で底はモルタル塗りです。こちらの湯口も竹の根を切ったようなものですが、打たせ湯にはなっていません。浅くて屋根が無く常に風に晒されているためか、こちらは若干ぬるくて長湯仕様の湯加減でした。青空を仰ぎながら湯あみするなら、こちらのお風呂が良いですね。
お湯は無色透明。泉質名はアルカリ性単純泉ですが、硫化水素イオンを1.3mg含んでいるため、お湯からは硫黄由来のタマゴ臭とタマゴ味がしっかり感じられます。いや、しっかりどころかかなり芳醇です。また先述のようにシャワーのお湯からもこのタマゴ感がはっきりと得られます。この他、微かに石膏の感があったような気がしますし、アルカリ性泉ならではの微収斂も感じられました。若干お湯が青色っぽく見えたのは、浴槽の材質の影響でしょうか。とてもトロトロしたお湯であり、湯中ではヌルヌル&ツルスベという、まるでローションみたいな滑らかな浴感が楽しめました。そして湯上がりさっぱり爽快。私好みの良いお湯です。ツルツルヌルヌルの抜群な浴感はpH9.8という比較的強いアルカリ性に傾いていることのみならず、炭酸イオン36.1mgという、ちょっと普通の温泉では見られないような数値も大いに影響しているかと思われます(炭酸イオンがこんなに多い温泉は珍しいかと思います)。大量掛け流しを実現しているためにお湯の鮮度も良く、これも質感の良さを生んでいるのかもしれません。
プリミティブな造りの露天風呂なので、アメニティや設備を重視する方には不向きかもしれませんが、露天の開放感やお湯の質を重視する方には是非ともお勧めしたい、素敵なお風呂でした。
四季の湯
アルカリ性単純温泉 49.7℃ pH9.8 250L/min(動力揚湯) 溶存物質0.164g/kg 成分総計0.164g/kg
Na+:38.3mg(93.51mval%),
SO4--:17.4mg(13.21mval%), HS-:1.3mg, CO3--:36.1mg(43.75mval%), HSiO3-:57.2mg(27.01mval%), OH-:1.1mg,
(平成23年7月20日)
加温加水循環消毒なし
鬼怒川温泉駅・新藤原駅・川治温泉駅などから日光市営バスの女夫渕行で「観光ドライブイン前」停留所下車すぐ
栃木県日光市黒部21
0288-97-1500
ホームページ
8:00~21:00(受付終了20:00)
500円
ロッカー(100円有料)あり、石鹸のみ備え付けあり、ドライヤー受付貸出
私の好み:★★★