温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

Good bye forever! いこいの湯多摩境店

2018年09月01日 | 東京都・埼玉県・千葉県
いつも通っているお店が知らないうちに突如閉店していたら、誰しもが呆然として悲しむことでしょう。

拙ブログでは国内外を問わず各地のあらゆる温泉を取り上げてきましたが、そんな私がいままで最も多く足を運んで利用してきた温泉浴場が、東京都町田市のスーパー銭湯「いこいの湯多摩境店」です。多摩ニュータウンの西端に位置しており、私が以前住んでいた川崎市北部から車で行ける距離だったので、自宅付近で大きなお風呂に浸かりたくなったら、思い付きで車を走らせ、この「いこいの湯多摩境店」へ通っておりました。回数券を購入して、会社から帰った夜遅くでも足繁く通っていました。しかしながら、昨年に都内某所へ引っ越してからは、多摩境が遠くなってしまったため、自然と足が遠のいてしまいました。

そんな多摩境ですが、先日たまたま多摩ニュータウン方面へ出かける用事があったため、そのついでに立ち寄ってみたところ、なんと駐車場の入口にロープが張られているではありませんか。その日は書き入れ時であるはずの土曜日。まさかそんな日に休むはずはないので、安全な場所に車を停めてスマホで調べてみたところ、今年の3月に突然休業してしまったことがわかりました。
具体的な休業理由は明らかになっておりませんが、どうやら建物に深刻な問題が発生したらしく、このままでは営業が続けられなくなったため、やむを得ずお店を閉じたものと推測されます。スマホを片手にしばし呆然としてしまった私。もうあのお湯を楽しむことはできないのだろうか・・・。

昨年まで私が住んでいた街のまわりには、「いこいの湯多摩境店」よりもっと近い場所に「野天湯元 湯快爽快 くりひら」や「稲城天然温泉 季乃彩」など、自家源泉を使用した温泉スーパー銭湯があったのですが、わざわざ車で片道30分を要してまで出かけていたわけは、お湯が良く自分好みのお湯だったからに他なりません。食塩と重曹が程よく混ざった紅茶色のお湯がしっかりかけながされており、しかも加温の必要がないほどしっかりと熱いお湯が惜しげもなく露天風呂に注がれていたのです。
語弊を承知で申し上げるならば、地方の下手な温泉地よりもよほど良いお湯でしたし、その湯使いも良好でした。そのため私のみならず、温泉ファンの間でも定評がありました。いつも混雑しており、時間帯によっては大学生と思しきグループが跋扈して五月蠅かったのですが、でもお湯の良さは周辺施設の追随を許さなかったため、気軽に熱い温泉に入りたければ、この「いこいの湯」を選んでしまったのでした。そんなお気に入りが、いつの間にやら過去帳入りしていたとは・・・。

そこで今回記事では、近年急に衰え始めた頼りない記憶を頼りに、私が好んで通っていた「いこいの湯」を回顧してまいります。とはいえ、いつでも行けると思い込んでいましたから、何度も利用しているにもかかわらず、記録類はまったくございません。幸いにしてまだ公式サイトが残っておりますので、誠に勝手ながらそこから画像を拝借しつつ、お風呂やお湯について述べてまいります。


 
高い天井に太い梁がわたされ、足元には伊豆青石が敷かれている内湯。いかにもスーパー銭湯らしく、室内にはたくさんのカランが設置されており、また主浴槽の他、ジャグジーや薬湯などバラエティ豊かな浴槽類が揃っています。主浴槽には循環ろ過された温泉が張られている一方、ジャグジーや泡風呂など各種機能が付帯された浴槽は真湯が用いられています。正直なところ、内湯はあまり面白くなかったので、何度も足を運んだにもかかわらず、あまり利用しておりません。


 
内湯で好きだったのはミストサウナと水風呂でした。ここのミストサウナはヨモギが蒸されており、また体に塗る塩も用意されているので、その心地よい香りに包まれることによりリラックスしながら汗を流すことができました。



目の前の雑木林が借景となり、住宅街にありながら緑豊かで静かな露天風呂。オープン当初は周囲に建物が無く、本当に山の中で露天風呂に入っているような雰囲気でしたが、やがて左右両サイドに高いマンションが屹立し、当初の雰囲気は失われました。それでもお湯が良く、しかもそこそこ広いので、この露天を好んで入っていた方も多かったと思います。

露天ゾーンにも複数の浴槽が据えられているのですが、その中私が最も好んで入っていた浴槽は上画像の「岩風呂」です。4~5人サイズの浴槽には、加熱加温循環消毒がなされていない生粋の源泉掛け流しのお湯がふんだんに注がれていました。東京から神奈川にかけての一帯には、食塩泉や重曹泉に属するような温泉が随所で湧出していますが、その多くは40℃に届くか届かないかという温度で湧出しているため、浴槽へ供給するまでに一旦ボイラーで加温する必要があります。
しかしこちらのお湯は湧出温度が48℃近くあるため、加温の必要がないのです。それどころか、浴槽へ注がれる時点でもかなり熱いため、熱いお風呂に慣れていない若いお客さんはつま先を入れるや否や「熱い熱い」と退散してゆくほどでした。都内の住宅地なのに、掛け流しの熱い温泉に入れるのですから、非常に貴重な存在でした。


「岩風呂」に注がれたお湯は、全量がそこより低い位置にある「くつろぎの湯」(上画像)へ流れ込みます。一応ここも掛け流しと表示されていますが、そのお湯の供給源は上流の「岩風呂」がメインですから、どうしても鮮度は落ちてしまいます。そのかわり長湯できるようなちょっとぬるめの湯加減に落ち着いていましたから、熱いお風呂が苦手なお客さんはこちらで名前通りに寛いでいらっしゃいました。


露天にはこのほか「檜風呂」(上画像)や「ねころび湯」もあり、いずれも温泉が用いられていました。いずれも「くつろぎの湯」からお湯を受けており、状況により加水・加温が行われ、消毒処理も実施されていたようです。

このように、露天の各浴槽で温泉が使えるほど、都内の温泉スーパー銭湯では群を抜いて湯量が豊富であり、贅沢な湯使いが実践されていました。

こちらのお湯は紅茶のような赤系を帯びており、弱いモール臭と金気臭、そしてガスのような匂いが放たれていました。お湯を口に含むと、弱い塩味と微かな金気味、そして清涼感を伴う重曹味が感じられました。いわゆるモール泉に属するタイプのお湯かと思われます。年や日など、タイミングによって色合いや匂い・味覚のコンディションに差が見られ、開業当初は知覚的特徴がかなり強く現れていましたが、その数年後には熱いものの全体的に薄くなり、早くも汲み上げすぎによる資源枯渇なのかと心配してしまいました。ところがまたその数年後にはコンディションが以前のような状態にまで戻り、その後は多少の濃淡を繰り返していたように記憶しています。
見た目や匂いはモール泉系のお湯であり、お湯に入ると重曹の効果によって、都内の温泉とは思えないほど肌がツルツルスベスベになるのですが、やがてお湯の熱さと食塩の温浴効果によって強く火照りだし、特に「岩風呂」では湯上がりにしばらく休憩しないと体力がもたなくなるほどでした。優しさと力強さを兼ね備えたお湯でした。

そんな個性的で良質な温泉だったのに・・・。
はぁ・・・。溜息しか出ません。
源泉がダメになったわけではなく、建物に問題があるとするならば、また何らかの形で復活するかもしれませんね。
その日が来ることを心から祈っています。


仙水の湯
ナトリウム-塩化物温泉 48.6℃ pH7.9 438L/min(動力揚湯・1700m掘削) 溶存物質2942mg/Kg 成分総計2957mg/kg、
Na+:1007mg(95.57mval%),
Cl-:1466mg(89.42mval%), Br-:4.3mg, I-:0.8mg, HS-:0.05mg, HCO3-:287.4mg(10.18mval%),
H2SiO3:31.6㎎、HBO2:97.6mg, H2S:痕跡
(平成16年1月27日)

東京都町田市小山ヶ丘1-11-5

2018年3月24日を以て閉館しました

私の好み:★★★








コメント (9)
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