(2021年12月訪問)
伊豆下田の蓮台寺温泉は行基の開湯伝説を有していながら、なぜかあまりメジャーではないのですが、それゆえに静かでしっとりとした時間が過ごせる穴場的な温泉地でもあります。今回訪ねるのは「大地の彩 花月亭」というお宿で、日帰り入浴で利用させていただきました。
なかなか立派な門構えに加え、その門の前で案内スタッフの方が立っていらっしゃったので、もしかしたら日帰り入浴は断られてしまうのではないかと物怖じしていたのですが、豈図らんや快く受け付けて下さり、帳場で料金を支払った後は係の方がお風呂の前まで案内してくださいました。先入観で決めつけてしまうのは良くないですね。
お宿の建物は中庭を囲むように作られており、カモたちが戯れる庭の池を眺める場所には上画像のような足湯が設けられていました。
庭を左手に見ながら廊下をひたすら進んでゆくと・・・
浴場入口に到着です。案内してくださったスタッフの方とはここまで。
暖簾を潜った先にある脱衣室は広くて綺麗。洗面台にはアメニティやドライヤーの備え付けもしっかり用意されていて、使い勝手良好です。ただしロッカーは見当たらなかったので、日帰り入浴の場合、貴重品は入館時に帳場へ預けておきましょう。
片傾斜の天井と大きなガラス窓が印象的な内湯。明るくて快適な入浴環境です。
壁に沿ってシャワー付きカランが並んでいます。もちろんシャンプー類も完備。各水栓の下には桶が置けるような石の台も用意されていて、何かと重宝します。
シャワーから出てくるお湯は温泉です。
内湯の浴槽は(目測で)4m×3.5mほどの大きさで、内側はタイル張りですが縁には立派な白木が用いられており、見た目と感触の両面でぬくもりと優しさが伝わってきます。若干深い造りなので肩までしっかりお湯に浸かることができ、入り応えもあります。
なお浴槽へのお湯は上画像に写っている木樋の他、底の方からも供給されており、上下両方から注ぐことによって湯加減の均一化を図っているようです。木の縁から静かにオーバーフローするお湯を眺めつつ、じっくり湯船に浸かると、わが身に積もったこの世の憂さもお湯と一緒に流れ去ってゆくかのようです。
周囲を借景にした庭園のような趣きの露天風呂は奥に長い造りで、内湯側にはウッドデッキが設けられている他、奥の方には洞窟のような設えもあり、後ろめたさが無くても穴があったらつい入ってしまう卑屈な性格をしている私は、本能的衝動なのか、いつの間にかこの洞窟みたいなところに身を潜めようとしてしまいました。穴に入るとなぜか心が落ち着くんんだよなぁ。
それはさておき、温泉と石材が上手い具合に影響しあっているのか、露天に用いられている石材は美しい青色に映えていて、この色を見ているだけでも心がうっとりします。露天風呂には加温されたお湯はパイプを通じて供給されており、岩風呂の湯面ライン上にはトゲトゲとした析出が付着しているほか、湯口周りにも白い析出がこびりついていました。泉質名としては単純泉ですが、単なる単純ではなく、実際には硫酸塩泉型の温泉であることの証と言えるでしょう。
さてお湯の具体的なインプレッションですが、見た目は無色透明で綺麗に澄んでおり、湯口のお湯を手に掬って口に含んでみても特に味などは感じられず、ほぼ無味無臭といったところですが、若干石膏の甘みがあったような気がします。湯船に浸かってみますとサラサラとした軽やかな感触の中に少々の引っかかりが混在するものの総じて柔らかく、しっとりとして優しいお湯です。特に非加温かけながしの内湯はお湯の状態が良く、個人的には露天よりも内湯に長く浸かっていたい感じです。なお館内表示によれば消毒ありとのことですが、特に気になりませんでした。
日本旅館らしい落ち着いた雰囲気と、現代的な明るさや清潔感が相まった、とても素敵なお風呂でした。次回は是非とも宿泊利用で再訪したいものです。
蓮台寺2号・24号・26号の混合泉
単純温泉 52.3℃ pH7.6 成分総計0.666g/kg
Na+:115.8mg, Ca+:69.5mg,
Cl-:82.1mg, SO4--:261.6mg, HCO3-:53.1mg, CO3--:3.6mg,
H2SiO3:67.0mg, CO2:2.6mg,
(平成19年6月18日)
加水・循環なし
消毒あり(衛生管理のため)
露天のみ気温が低いときに加温(内湯は加温なし)
静岡県下田市蓮台寺273-2
0558-22-2244
ホームページ
日帰り入浴時間は施設へお問合せください
1000円
シャンプー類・ドライヤーあり、貴重品帳場預り
私の好み:★★★