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(2022年6月訪問)
たまには観光客向けの施設も取り上げてみましょう。伊東温泉の真ん中を貫きながら流れる松川に沿って、歴史ある重厚な旅館建築が並んでいるのは皆さまご存知の通りかと思います。以前拙ブログでは「K'sハウス(旧いな葉)」を取り上げたことがありますが、今回はその隣にある「東海館」をご紹介します。
昭和3年(1928)年に開業した「東海館」は、戦前までに何度か増築が繰り返され、戦後まもなく望楼も建てられてたんだそうです。昭和初期の立派な木造3階建ては、余多ある伊東の旅館建築の中でも群を抜いた存在感を放っており、誰しもが足を止めて眺めてしまうことでしょう。1997年に旅館としての営業を終えた後、2001年に伊東市へ寄贈されて観光施設となり、入館料を支払うことで館内を見学できるようになりました。しかもこの施設のすごいところは、旅館時代のお風呂で掛け流しの温泉に入れるのです。お宿や建物についての詳しい説明はネット上に多くの記事がございますので、関心がある方はご自身で検索していただくとして、今回の記事ではお風呂を中心に取り上げてまいります。
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まぁなんて立派な唐破風だこと。透かし彫りも素晴らしいですね。
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さて玄関に入り、かつての帳場と思しき受付でお風呂に入りたい旨を申し出て、所定の料金を支払います。
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中庭を横目に見ながら・・・
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廊下を右の方へ向かうと突き当たりに浴場が2つあります。浴場は大小に分かれており、時間帯によって男女の暖簾が入れ替わります。具体的には以下の通りです。
大浴場:男湯→11:00~12:45、15:00~16:45
大浴場:女湯→13:00~14:45、17:00~19:00
小浴場:男湯→13:00~14:45、17:00~19:00
小浴場:女湯→11:00~12:45、15:00~16:45
私の訪問時には大きなお風呂に男湯の札が下がっていましたので、以下の記事では大浴場についてご紹介します。
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更衣室もシンプルながらなんとなく風情が良いんですね。おそらくは骨董品のような清酒白雪の鏡がレトロな雰囲気を醸し出しているのでしょう。レトロなんだけどしっかりお手入れされているので、大変気持ち良く使えます。
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さすが老舗旅館のお風呂だけあり、総タイル張りの浴室も実に秀麗。
大浴場には丸い浴槽がひとつ据えられており、(上画像には写っていませんが)窓側の壁に沿ってシャワー付きカランがいくつか並んでいます。
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黒い唐獅子の湯口から伊東のお湯が投入されており、浴槽を満たした温泉は縁からしっかりオーバーフローしています。分析表によれば源泉温度が30℃を下回っているため、当然ながら加温した上での掛け流しでしょう。お湯の特徴は無色透明でほぼ無味無臭。湯船に入るとお湯の柔らかさを実感できるのですが、もう少し加温を抑えてくれると嬉しいかな、と感じました(つまり私が利用した時の湯船はちょっと熱めでした)。とはいえ、昭和の老舗名旅館の館内を見学できるだけでなく、実際にお風呂に入ることで、当時の宿泊客に想いを馳せることができるわけですから、こうしてお風呂が利用できる点は、温泉の文化を理解するためにも大変素晴らしいのではないでしょうか。
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せっかくなのでお風呂上がりに館内を見学させていただきました。
雁行型の廊下を歩きながら、かつて湯浴み客が泊まった客室の前を通り過ぎます。
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こちらも客室の一つ。一見すると普通の客室に思えますが、檜の他、紫檀や黒檀など、値の張る木材を多用しているんですね。
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一部の客室は伊東にまつわる歴史の資料館となっているんですね。ここは三浦按針のお部屋。
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そしてこの部屋は東郷平八郎。
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3階にあるこの大座敷は圧巻。なんと120畳もあるんだとか。
広さだけでなく、欄間の細工、そして一枚の板に彫られた舞台両袖の彫刻にも心を奪われます。
目を瞑ると、三味線の音と芸者さんの歌声が聞こえてきそうですね。
松原25号泉
アルカリ性単純温泉 25.8℃ pH8.7 成分総計0.433g/kg
Na+:133.2mg,
Cl-:120.7mg, SO4--:81.3mg, HCO3-:72.4mg,
(平成23年8月16日)
加水循環消毒なし
加温あり(温度調整のため)
静岡県伊東市東松原町12-10
0557-36-2004
紹介ページ
入浴時間は上記本文をご参照ください
500円
ドライヤー、シャンプー類あり
私の好み:★★+0.5