(2023年7月訪問)
今回記事から天下の名湯、草津温泉を連続して取り上げます。つい最近まで草津温泉では「和風村」に加盟する老舗旅館に宿泊すると、加盟旅館のお風呂に700円で日帰り入浴できる「湯めぐり手形」を購入することができましたが、2023年7月28日を以てこの手形の販売が終了となってしまいました。手形を利用しないと日帰り入浴できない旅館もあったため、販売終了によって草津温泉で日帰り入浴できる選択肢が狭まってしまい、湯めぐりを趣味とする者としては非常に残念です。販売終了までに購入した手形は購入日から2年間有効ですので、今回はこの手形を利用して老舗旅館のお風呂を巡ってまいります。
まずは湯畑の近く、「湯元館」の隣に位置する「松村屋」(屋号五郎平)から。
格子の建物は老舗旅館の風情たっぷりですね。
帳場に手形を出して入浴をお願いしますと、お風呂へ案内してくださいました。玄関を上がって左手の近くに浴室があります。
ドアを開けて脱衣室へ入りますと、格子引き戸越しに浴室が見えました。なお脱衣室内には棚とカゴ、ドライヤーひとつ、そして扇風機が用意されており、ロッカーはありません(貴重品は帳場へ)。
綺麗にお手入れされている浴室からも古き良き温泉風情が感じられます。素敵です。
お風呂は内湯のみで露天風呂はありませんが、この趣きたっぷりの内湯に入れば十分満足できるはず。
洗い場には5カ所の水栓が並んでおり、うち1つは浴槽の加水用で、残り4つがシャワー付き混合水栓です。
洗い場の上にはタイル絵が施されており、そこには草津十七滝と草津節が描かれています。「草津良いとこ 一度はおいで どっこいしょ」の草津節は有名ですが、草津十七滝とは何ぞや・・・草津の歴史に詳しい方ならご存じでしょうけど、今でも湯畑の下流側は滝のようにお湯が落とされていますが、かつてはそこが17本の打たせ湯になっており、湯滝の滝壺に人が入って強酸性と強水圧のダブルアタックを全身で受け止めていたわけです。湯畑から落ちるお湯の勢いや熱さは相当のものでしょうけど、あれを直接体に受けて気持ち良かったのかしら。ちなみに17本の打たせ湯は3区画に分かれていたらしく、左側は天狗の滝、真ん中は薬師の滝、右は不動の滝と称されていたそうです。
話をお宿のお風呂へ戻しましょう。浴槽は切り出された石材を積んだような造りで、縁には木材が用いられており、その大きさは(目測で)2.5m×3.5mほど。浴槽に張られたお湯は、底の穴に接続されたオーバーフロー管を通じて排出されています。この穴の周りは草津温泉ではおなじみのイデユコゴミによって緑色に染まっています。
こちらのお風呂には湯畑源泉のお湯が引かれています。湯口の上には蛙の置物。
浴槽内も薄い緑に染まっていますね。お風呂場で酸っぱい匂いと共にこの色合いを目にすると、草津温泉のお風呂にいることを実感します。湯畑のお湯をそのまま浴槽へ投入しているらしく、入りしなは少々熱かったのですが、ちょっと湯もみしたら良い塩梅になりました。熱いからといって短絡的に加水せず、まずは湯もみしてみることをおすすめします。湯中では強い酸性泉らしいヌメリを伴うツルスベ浴感がはっきりと感じられ、また湯の花もちらほら舞っていました。
風情といいお湯といい、実に素晴らしいお風呂でした。
湯畑源泉
酸性・含硫黄-アルミニウム-硫酸塩・塩化物温泉 51.3℃ pH2.1 自然湧出 溶存物質1.65g/kg 成分総計1.69g/kg
H+:8.91mg(36.54mval%), Na+:56.0mg(10.06mval%), Mg++:36.3mg(12.33mval%), Ca++:73.5mg(15.16mval%), Al+++:43.8mg(20.14mval%), Fe++:17.5mg,
F-:9.9mg, Cl-:311mg(35.63mval%), Br-:1.3mg, SO4--:640mg(54.16mval%), HSO4-:192mg(8.04mval%),
H2SiO3:216mg, H2SO4:4.3mg, CO2:36.7mg, H2S:7.1mg,
(平成25年5月15日)
加水加温循環消毒なし
群馬県吾妻郡草津町草津365
0279-88-2323
和風村の「湯めぐり手形」で入浴利用可能
(「湯めぐり手形」の販売は終了しています)
私の好み:★★★