温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

湯の鶴温泉 四浦屋旅館

2013年06月23日 | 熊本県
 
前回取り上げた共同浴場「きくの湯」で至極上質なお湯を堪能した私は、同温泉で旅館のお風呂にも入ってみたくなり、温泉街の無料駐車場から近い場所に位置する「四浦屋旅館」を訪ねてみることにしました。玄関の正面に架かる橋を渡たる途中で、川沿いに建つ風格のある建物を左から右へ見渡すと、本館の下流側には湯屋が棟続きになっていました。これからあのお風呂へと向かうのですね。



帳場で入浴をお願いしますと快く受け入れてくださいました。しかも料金は200円。立派な旅館なのに、わずか100円玉2枚で入浴できちゃうんですよ。なんて素晴らしいことなんでしょう! 
帳場から廊下を右に進んだ突き当りが浴室です。



浴室棟は2階層が吹き抜けのようになっており、2階部分に脱衣室が設けられていて、階下の浴室が見下ろせるようになっています。
脱衣室は年季が入っているものの、隅々までよく清掃されているためかなり快適。しかも余計な物が置かれていないので、圧迫感無く使用できました。ビニル床の真ん中に籠が並べられている棚が置かれています。


 
階段を下って浴室へ。室内には石材が多用されており、床には碁盤の目のような溝が彫られています。階段の横には長方形の浴槽がひとつ据えられており、足を伸ばして入ったら6~7人は同時入浴できそうなサイズです。また槽の3分の1ほどは脱衣室の直下に潜り込んでいます。
洗い場にはシャワー付き混合水栓が2基取り付けられていました。水栓から出てくるお湯はおそらく真湯かと思われます(源泉だったりして)。



浴槽に張られているお湯は無色澄明。ちょうど良い湯加減でした。槽内は側面がエメラルドグリーンの石タイル、底は鉄平石のような石板敷きです。浴槽縁に用いられている石材はとても滑りやすいので、この上を歩いたりしないほうが良いでしょう。


 
湯口からはしっかりとした湯量が投入されており、浴槽の奥からふんだんにオーバーフローしていました。館内表示によれば完全掛け流しの湯使い。以前は硫黄を含む温泉だったそうですが、現在では温泉に含まれる硫黄の量が減ってしまい、泉質名から硫黄の文字が抜けた「アルカリ性単純温泉」となっています。お湯を口にしてみますと、甘みとともにアルカリ性単純泉らしい微収斂が感じられました。匂いは特に無かったように記憶しています。共同浴場「きくの湯」のようなタマゴ感はありませんでしたが、お湯の鮮度感はとても良好で、入浴中はツルスベの気持ち良い浴感が楽しめ、湯上りもさっぱり爽快でした。



浴室の壁の高い位置に掲示されているプレートには泉質名として「アルカリ性単純硫黄泉」と記されていますが、上述のように現在はアルカリ性単純温泉です。源泉を掘り直したら現在のような泉質になったそうですが、かつての硫黄泉時代のお湯にも入ってみたかったものです。またこのプレートに書かれている温泉の適応症として列挙されている症状には昭和の面影が色濃く残っていました。たとえば梅毒・脊髄癆・気管支カタルなど、現在の適応症ではお目にかかれないようなワードがいくつか確認できますし、「慢性金属中毒症(水銀又は鉛中毒症)」が明記されている点は当地らしい特徴なのかもしれません。


 

湯上りに温泉街を軽く散歩。
当地には水俣市によって昨年「鶴の屋」というレストランとショップを兼ねた観光施設がオープンし、その周辺は趣きのある街並みに整えられていました。瓦屋根と漆喰風の壁によって落ち着いた和テイストの「鶴の屋」は、鉄道ファンにはおなじみの水戸岡鋭治氏がデザインを手がけたんだそうです。


 
湯出川が刻む狭い谷の両岸で、甍を争うように民家や旅館が軒を連ねている湯の鶴温泉。メインストリートは川沿いに一本あるだけですので、川には道路の対岸に建てられている旅館等へ渡るための橋がたくさん架けられています。橋も朱色に塗られたものや、中央部が太鼓橋状に膨らんでいるものなど、それぞれが意匠を凝らしており、橋を一つ一つ観察するもの一興です。


 
川沿いは旅館や民家がひしめき合っていますが、そこからちょっと谷を上がると長閑な棚田が斜面に広がっており、訪問日にはちょうど水が張られていました。清らかな温泉の湯上りに、伝統的な日本の山村らしい景色を眺めていたら、体も心もほこほこになりましたよ。


四浦屋本店源泉
アルカリ性単純温泉 55.0℃ pH8.73 90.8L/min(掘削動力揚湯・155m) 溶存物質792.8mg/kg 成分総計792.8mg/kg
Na+:234.8mg(97.79mval%),
Cl-:27.7mg(7.89mval%), HS-:1.1mg(0.30mval%), SO4--:269.7mg(56.88mval%), HCO3-:164.9mg(27.33mval%), CO3--:15.0mg(5.06mval%),
H2SiO3:60.7mg,

肥薩おれんじ鉄道・水俣駅より水俣市コミュニティバス「みなくるバス」の頭石・招川内行(おれんじバス)で「湯の鶴温泉センター前」バス停下車
熊本県水俣市湯出1434  地図
0966-68-0004

日帰り入浴時間問合せ 第2・4木曜定休
200円
ドライヤーあり、石鹸あり

私の好み:★★
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湯の鶴温泉 きく(喜久)の湯

2013年06月22日 | 熊本県
 
温泉で傷を癒す鶴の姿を見つけた平家の落人によって発見されたという伝説が残る、熊本県水俣市の湯の鶴温泉は、本当に落人が潜んでそうな山奥の谷の川に沿って旅館が建ち並ぶ仙境の温泉地ですが、そんな湯の鶴温泉にも共同浴場があると聞き、前回取り上げた「湯川内温泉」を出発した日の午前中に訪問してみることにしました。鹿児島県出水市から狭隘な山道が続く矢筈峠を越えて湯の鶴温泉に至り、温泉街の一本道を川下へ向かって走っていると、温泉街を抜ける手前で「きくの湯」の駐車場を発見しました。意外とわかりやすいところにあったので拍子抜け。でも共同浴場なのに駐車場が用意されているのはありがたいですね。その専用駐車場に車をとめて・・・



駐車場脇の急な階段で川へ下ってゆきます。


 
目指すは川の対岸に建っている、いかにも古そうな瓦屋根の小さい湯屋です。湯屋の川上側にはちゃんと休憩所もあるんですね。欄干のない、増水したらたちまち沈降してしまいそうな心細い橋を渡ります。


 
建物に入って狭い通路を進むと無人の番台があり、窓口内のカウンターに料金箱が置かれていました。基本的には地域民のためのお風呂なのでしょうけど、外来者にも開放されております。100円玉を一枚投入して男湯へ。



共同浴場ですからレイアウトや備品類など、浴場内の諸々は至って簡素です。脱衣室も2~3人同時に使えば窮屈になりそうな感じのコンパクトな空間なのですが、その割にはなぜか棚の数が多いのが不思議です。


 
浴室は無人施設とは思えないほど綺麗な状態が保たれており、桶や腰掛けなどもきちっと整理整頓されていました。地元の方がこの浴場に対して抱く愛情が伝わってきます。



手書きの注意書きが良い雰囲気を醸し出していますね。「犬・猫等小動物の入浴をさせないで下さい」とは恐れ入ります。保健所からの達しが無くたって今ではそんなことをする人はいないでしょうけど、昔は少なからずいたんですね。


 
木のカバーに覆われた配管から源泉がトポトポと注がれています。長方形の浴槽は7~8人サイズで、右側の縁の切り欠けより常時排湯されていました。湯船に湛えられているお湯は無色澄明でこの上なく清らか。槽内の青いタイルがその清らかさをより際立たせています。
湯口のお湯を手に掬って口にしてみますと、強くはないけれども明瞭なタマゴ味、そして甘味が感じられ、弱いながらもタマゴ臭が鼻へ抜けてゆきました。


 
加温も加水も行われていない完全掛け流しの湯使いでして、源泉温度が41℃とやや低いため、湯口では39.5℃ですが、浴槽中央では38.0℃となっていました。明らかに夏向けのお湯ですね。しかしながら不感温度帯ですから体への負担が軽い状態でいつまでもじっくりと長湯することができます。またツルツルスベスベの浴感がとても爽快であり、入浴中は何度も肌をさすってしまいました。



しかも肌へしっかり気泡が付着するので嬉しいではありませんか。この泡付きが爽快な浴感をより高めてくれるので、極上なバスタイムが楽しめました。こんな素晴らしいお湯なのに100円だなんて夢のようだ…。


アルカリ性単純温泉 41℃ 他データ不明

熊本県水俣市湯出
(詳しい場所の特定は控えさせていただきます)

8:30~18:00
100円
備品類なし

私の好み:★★★
コメント (4)
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湯川内温泉 かじか荘(その2 浴場(小))

2013年06月21日 | 鹿児島県
前回記事の続編です。

 
今回は湯川内温泉「かじか荘」のもうひとつの浴場を取り上げます。大きな浴場の裏手に伸びる階段を上がって、谷頭の奥へと向かいます。その途中にあるのはプールの残骸。最近は使われていないのでしょうか。



湯屋は周囲の緑に身を潜めているかのように、ひっそりと佇んでいます。



大きな浴場と異なり、こちらは脱衣室と浴室がセパレートされています。日が暮れるとカジカガエルの合掌に包まれました。


 
浴室は至ってシンプルで、2~3人入ればいっぱいになってしまうこぢんまりとした浴槽がひとつあるだけ。湯船のお湯は38.0℃。いつまでも長湯できちゃう不感温度帯なんですね。


 
底から気泡とともに絶え間なく噴き上がってくる足元湧出の温泉は、神々しいまでの透明感で入浴客を魅了してくれます。あまりの美しさについ我を忘れてしばらく見惚れてしまいました。
大きな浴場同様にこちらの湯船も胸ぐらいの深さがありますが、槽の両側で沈んでいる岩に腰掛けると、ちょうど良い深さで座湯状態になります。底に立った時に足の裏に伝わる玉砂利の感覚も気持ちよく、座って良し立って良し、いろんなスタイルで湯浴みを楽しみました。



槽の隅っこには飲泉用の噴き上げ口があり、柄杓に汲んで飲んでみますと、何らの抵抗なくスゥーッと入ってゆく滑らかな喉越しとともに、芳醇なタマゴ味とタマゴ香が私を魅惑の世界へと誘ってくれました。


 
湯船に体を沈めると瞬く間に全身を包んでくれる無数の気泡にも、言葉が出ないほど感動。気泡に関してはこの小さな浴場の方が強く(多く)付着するようです。このお湯は自然が生み出した奇跡の天然ローション。ツルツルスベスベの極上な浴感と、全身をふんわり包んでくれる優しい感触には、誰しもが陶酔することでしょう。宿泊者は24時間入り放題でしたので、私は寝る間も惜しんで、一晩中、この素晴らしいお湯を独り占めし続けました。


湯川内1号
アルカリ性単純温泉 38.4℃ pH9.6 溶存物質0.170g/kg 成分総計0.170g/kg
Na+:39.2mg(91.53mval%),
SO4--:12.5mg(15.08mval%), HCO3-:27.5mg(26.09mval%), CO3--:24.0mg(46.33mval%),
H2SiO3:57.5mg, H2S:0.5mg,

湯川内2号
アルカリ性単純温泉 36.3℃ pH9.4 溶存物質0.159g/kg 成分総計0.159g/kg
Na+:36.4mg(90.29mval%),
SO4--:16.1mg(19.54mval%), HCO3-:18.0mg(16.67mval%), CO3--:26.5mg(50.57mval%), HS-:0.2mg(0.57mval%),
H2SiO3:52.2mg,

鹿児島県出水市武本2060
0996-62-1535

日帰り入浴7:00~21:00
300円
ドライヤー有料、他の備品類なし

私の好み:★★★
コメント (12)
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湯川内温泉 かじか荘(その1 部屋・食事・浴場(大))

2013年06月20日 | 鹿児島県
 

名湯揃いの鹿児島県でも、温泉ファンから熱い支持を集める湯川内温泉「かじか荘」に、先日一泊してまいりました。拙ブログでリンクさせていただいておりますしーさんさんのブログ「温泉を通じて」を拝見していましたら、こちらの温泉に宿泊なさっている記録がアップされており、魅力的なそのお湯に何が何でも浸かりたくなって、先日の九州における湯めぐりでは、真っ先にこちらのお宿を予約したのでした。


●客室
 
帳場では今くるよ(あるいはみかん山プロダクション所属の主婦タレント)みたいな風貌の、キャラの強いおばちゃん二人がお出迎え。湯治用のお部屋と旅館宿泊用の離れの客室があり、今回は離れの客室へと通されました。案内してくれたおばちゃんは「本当に古いんですよ。見たらビックリしますよ」と、冗談とエクスキューズを半分ずつ織り交ぜながら、自嘲っぽく話してくれましたが、実際に通されたその客室は、たしかに古い造りであるものの、きちんと清掃されていますし、障子も襖もきっちり閉まりますし、テレビもポットもエアコンしっかり完備。なぜかDVDデッキまで備え付けられています。広くて快適で全く問題ありません。入室時には既に布団が敷かれており、すぐにゴロンと横になることができました。


 
広縁の卓の上には、タオルや石鹸が入っている桶が置かれていました。近頃はビニールの巾着にタオルや歯ブラシなどの一式を収納しているお宿が多いのですが、こんなわかりやすい形で用意されているなんて、昔ながらの温泉宿らしいスタイルですね。しかもボディーソープじゃなくて石鹸ですよ。リアリティのあるレトロに思わず歓喜。



室内では板に貼り付けられたサーキットブレーカーがむき出し。こんな原始的なブレーカー配置が現役なお部屋は久しぶりに見ました。



広縁に置かれている冷蔵庫を開けると、中ではボトルに入った水が冷やされており、飲んでみますと滑り落ちるようななめらかな喉越しとともに、タマゴ水の香りや味が感じられました。これって温泉水なんですね。広縁の反対側には洗面台があるのですが、その水栓を開けて出てくる水もタマゴ水でした。


●食事

お食事は本館の食堂でいただきます。この日の宿泊客は私一人だけだったようで、いつもはいくつも並べられているであろうテーブル類はすっかり片付けられていて、妙にガランとした空間が広がっていました。当地は鹿児島県出水市ですが、熊本県に近いため、食堂のテレビは両県の放送を視聴することができました。


 
こちらは夕食。焼き魚・肉じゃが・そら豆など、とっても家庭的な献立ですが、それぞれが丁寧に作られていて、まさに愛情あふれる田舎のおふくろの味です。きびなごの刺身が絶品でした。



朝食も万人受けする肩肘張らないハートフルな献立。完食してその日の鋭気をしっかり養いました。



●浴場(大)

「かじか荘」には大小ふたつの浴場があります。大きな浴場は本館に隣接し、小さな浴場は大きな浴場の裏手に伸びる階段を登った谷頭の上にそれぞれ位置しております。まずは大きな浴場から入ってみましょう。レトロ感溢れる佇まいが何とも魅力的。


 
湯屋の向かいに建つ湯治客用の宿泊棟の一角には、入浴客向けのマッサージチェアやドライヤーが用意されている小部屋があって、いずれもコインタイマーで動く仕組みになっているのですが、なぜかマッサージチェアとドライヤーのタイマーが一緒になっており、100円玉をタイマーに投入すると両方に対して同時に1時間通電されるようになっていました。ドライヤーに対して100円は高すぎますが、マッサージチェア1時間で100円はかなり安く、利用者の貨幣価値を混乱させてくれること必至。なお客室にもドライヤーはありますので、宿泊客はここのドライヤーを使う必要は無いかと思います。



浴場は脱衣室と浴場が一体化している造りで、脱衣エリアは昔ながらの板敷きです。木造で渋い古風な建物に、私のテンションは早くも上昇基調。


 
ステップを下って向かうお風呂では素晴らしいお湯に出会える可能性が高いのですが、こちらのお風呂も低い位置に湯船が据えられており、そのロケーションゆえ期待に胸が膨らみます。
上屋は木造ですが、床には伐り出された石材が敷かれており、そのフィーリングからはこの温泉が有する歴史と重厚感が伝わってきました。昔ながらのお風呂ですので、シャワーなんて近代的なものはなく、壁に水道の蛇口がいくつか設置されているばかり。


 
源泉温度が40℃に満たないため、冬には加温されたお湯が用意されますが、麗らかな春の陽気のおかげでそれほど冷え込むことのなかったこの日、加温槽は空っぽでした。朝晩はちょっと肌寒いのですが、ぬるいお湯でも肩までしっかり浸かって長湯すれば全身ぽかぽか。ボイラー要らずでした。


 
湯川内温泉は足元から湧出するお湯が名物。玉砂利の底からブクブクと泡を上げて自噴する美しいターコイズブルーのお湯は、惜しげも無く木の縁を洗い越して、床へザバザバと流れ去って行きます。湯量は豊富で一切の濁りも鈍りもありません。大量のお湯が湧き出る様は、まるで阿蘇の白川水源のようです。純度高い宝石のように清らかに透き通るに身を沈めると、心身の隅々まで清浄されたかのような心地に包まれます。湯船は比較的深く、身長165cmの私の場合は胸まで浸かりますが、槽内には岩や段、そして輪切りの天然木などが沈められており、これに腰をかけるといい塩梅で座湯することができました。湯船の温度は37.8℃。不感温度帯ですので、時間を忘れていつまでも浸かっていられます。なお源泉は湯川内2号・3号の2種類とのこと。豊かなタマゴ臭と味、そして清涼感のあるほろ苦みが感じられ、誰しもが美人になれそうなツルスベ感も最高。その上、1分も浸かっていれば全身くまなく気泡が付着し、その浴感がより一層高まりました。


 
浴室内に掲示されていた「とびこみ およぎ きんし」の注意書き。たしかに子供だったらそんな衝動に駆られちゃうよなぁ。「いにしえの 殿の湯殿は エメラルドグリーン」。字余り。

宿泊中は何度このお風呂に入ったことでしょう。特に日帰り客が去った夜9時以降は、この晩たった一人の宿泊客であった私が完全にモノポライズ。なんていう贅沢でしょう! この浴場の一部は沢を跨いでいるのですが、ちょうど初夏を迎える時季でしたので、その沢ではカジカガエルが美しい歌声で合唱しており、カエルたちの美声にうっとりしながら、この清らかなお湯をひたすら独占し、思う存分堪能させてもらいました。


湯川内2号
アルカリ性単純温泉 36.3℃ pH9.4 溶存物質0.159g/kg 成分総計0.159g/kg
Na+:36.4mg(90.29mval%),
SO4--:16.1mg(19.54mval%), HCO3-:18.0mg(16.67mval%), CO3--:26.5mg(50.57mval%), HS-:0.2mg(0.57mval%),
H2SiO3:52.2mg,

湯川内3号
アルカリ性単純温泉 38.2℃ pH9.5 溶存物質0.163g/kg 成分総計0.165g/kg
Na+:36.8mg(91.95mval%),
SO4--:11.3mg(13.04mval%), HCO3-:9.8mg(8.70mval%), CO3--:36.1mg(65.22mval%),
H2SiO3:59.8mg, H2S:1.3mg,


所在地や電話番号などは次回記事にて。

(つづく)
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かしはら温泉

2013年06月19日 | 鹿児島県
 
宮之城温泉と宮之城市街地のちょうど中間地点にあたる、さつま町柏原地区。辺り一面見渡す限りだだっ広い畑です。あぜ道の立って周囲を見回していると、ちょうどトラクターが畑を耕している真っ最中でした。


 
そんな長閑な田園地帯の細い農道を進んでゆくと、やがて「かしはら温泉」の小さな看板を発見。生垣の間から路地へと入ってゆきます。



かしはら温泉はこちらの民間公衆浴場1軒のみで、この場所で営業している水道設備会社が運営なさっているようです。



敷地内の建物は幾棟かに分かれており、料金は母屋に設けられてる受付の小さな窓口で支払います。訪問時はおばちゃんが受付にいらっしゃいました。


 
入浴前に敷地内をちょっと探索。
母屋の向かいには氏神・水神・湯神の三神が祀られているお社があり、その傍の源泉井戸では日立のベビコンが唸りをあげていました。エアリフトポンプによる揚湯なんですね。



お社と棟続きになっているこちらは家族風呂で、個室が3室並んでいます。田園の質素な公衆浴場にも家族風呂が設けられているんですね。しかも500円なんだとか。九州の温泉は個室風呂を利用できる施設が多く、しかもリーズナブルなので、関東人の私にとっては羨ましい限りです。


 
私が家族風呂をカメラにおさめていると、番犬のメリーちゃんがけたたましく吠え立ててきました。自分では認識していないのですが、私は余程怪しい容貌をした人間なんでしょうね。犬小屋の脇を抜けて真裏に出ると、コンクリの真新しい堤防が左右に伸びており、その向こうで川内川が悠然と流れていました。普段は明媚な景色をつくり、流域に潤いを与えているこの川も、いざとなれば忽ち大暴れするのですから、水害って本当に恐ろしいものです。



さて浴場へ。赤いトタンの屋根が目を引く平屋の湯屋には男女別の内湯が設けられています。画像ではいまいち伝わりにくいのですが、相当ボロい湯屋です。(関係者の方へ。こんな表現をしてごめんなさい)


 
脱衣室も外観同様にかなり草臥れており、薄汚れた室内には棚やカゴなど必要最低限のものが用意されているばかりです。低い天井には扇風機が取り付けられているのですが、金具は錆びており、羽根のカバーがなく、なぜか「強」運転しかできないという代物。実際に回してみたのですが、いつ羽根がすっ飛んでくるかわからないので、身の危険を感じて数秒運転させただけで止めてしまいました。またこの時は辺りに肥やしの臭いが漂っていたのですが、窓を全開にしていた脱衣室にもその臭いが入り込み、むしろ室内空間で逃げ場を失い滞留して、より臭みが濃くなっているようでした。
壁に掲示されている分析表の内容も心もとなく、陽イオンが記載されていなかったり、陰イオンについても、炭酸水素イオンはHCC、炭酸イオンはCCなど、化学のテストだったら×をもらっちゃうような誤記が目立っていました。一応等ページの下部にデータを転記しましたが、その数値が正しいかどうかはわかりません。


 
浴室はブルーのタイル貼りで、女湯との仕切りの上には大きなボール状の照明が2つ取り付けられています。浴槽はかなり大きくて10人は同時に入っても問題無さそうな容量を有しており、長靴を横にしたような形状をしており、ちょうど踵にあたる部分に石積みの湯口が設けられています。


 
洗い場は浴室の左右に分かれて計4基の水栓が取り付けられています。一見するとごく普通のシャワー付き混合水栓なのですが、よく見ますとなぜか水と湯のコックが逆になっていますね。単に赤と青を付け間違えただけかと思っていたのですが、右側の赤い印の栓を開けるとちゃんとお湯が出て来ました。配管まで一般的な施工とは逆に接続されているのです。どうして水とお湯をテレコにしているんでしょうか。なお水栓から出てくるお湯は源泉です。


 
お湯の投入量はかなり豊富であり、ドボドボと音を立てて落とされたお湯は大きな湯船を満たした後、長靴のつま先にあたるところからオーバーフローしていました。お湯が溢れ出る部分だけは浴槽の縁の色が他と異なっています。加水などが無い完全掛け流しです。
お湯は無色透明ですが、湯中では膜がちぎれたような淡い橙色の小さな湯の花がたくさん浮遊しているため、わずかに濁って見えます。湯口に置かれたコップで飲泉してみますと、ほんのりと甘い塩味と重曹的な清涼味が感じられました。匂いは特にしなかったように記憶しています。界隈には宮之城温泉や紫尾温泉など硫黄感を有する温泉が点在しているにもかかわらず、ここの温泉からは硫黄感が得られないというのも面白いところです。一方で、その両温泉にも負けないような(いや、多少は負けるかな…)ツルスベ浴感はしっかりと肌に伝わり、41~2℃という絶妙な湯加減とその気持ち良い浴感が相俟って、いつまでも浸かっていたくなるような入り心地が楽しめました。また湯上りの爽快感も良好です。

私が入浴しているときに常連のおじいさんとお話する機会があったのですが、そのお爺さんは、建物はガタピシだけれど、100円で掛け流しのお湯に入れるんだから立派なお風呂だよ、と誇らしげに語っていらっしゃいました。なるほど、100円で利用できる温泉は鹿児島県内にも余多あれども、これだけ広い浴槽に入れるお風呂は珍しいかもしれませんね。潔癖症の方にはあまりおすすめできませんが、コストパフォーマンスを重視する方や渋い浴場が好きな方には向いている温泉かと思います。


ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉(※) 45.5℃ pH8.1 蒸発残留物1.208g/kg
Cl-:221.6mg(31.63mval%), HCO3-:674.2mg(55.92mval%), CO3--:68.4mg(11.54mval%),
館内表示の分析表には陽イオンのデータ記載なし
(昭和61年8月11日)
(※)泉質名は私の推定です。館内表示では「炭酸水素塩泉」と表記されています

鹿児島県薩摩郡さつま町柏原1323  地図
0996-59-8672

8:00~21:00
100円
備品類なし

私の好み:★★
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