温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

三富温泉 白龍閣

2015年07月03日 | 山梨県
 
山梨県から雁坂トンネルを潜って埼玉県秩父方面へと抜ける国道140号線。トンネル手前の西沢渓谷は県内きっての景勝地ですが、更に手前の旧三富町役場付近には温泉宿および入浴施設が数軒点在しており、観光や登山の拠点となっています。今回はその中でも国道沿いに位置しており、看板などで日帰り入浴をアピールしていた「白龍閣」で立ち寄り入浴しました。拙ブログで取り上げるのは初めてですが、私は7~8年ぶりの再訪です。以前入浴した際の記憶が薄らいでいたため、どんなお湯だったか改めて確認すべく再訪したのでした。


 
フロントで呼び鈴を鳴らすと、奥からやってきた美人の若女将が対応してくださいました。同じフロアには卓球台や古いバーカウンターがあるホールが広がっており、その片隅には子供の遊具や自転車が置かれていました。若女将のお子さんのものでしょうか。湯銭を支払った後は、フロント斜め前にあるエレベータで1階へ下りて、浴室へ向かいます。エレベーターを下りてすぐのところに男湯が、そして廊下の奥には女湯の入口があり、男女両浴室に挟まれる形で、渓谷を眺める休憩室が用意されていました。この休憩室は日帰り入浴客でも利用できるようです。


 
男湯の脱衣室は数段のステップを挟んで上下2段に分かれており、最近内装が更新されたのか壁紙や内装が小奇麗になっていました。入口側の上段にはコインロッカーが、浴室側の下段には洗面台などが設置されていて、上下で役割分担がなされているようです。


 

下段の脱衣室から更にステップを下って浴室へ。戸を開けた途端、湿った石膏の匂いと共に、ほんのりとタマゴ臭が香ってきました。訪れたのは国道の路面が凍結寸前だった厳冬期であったため、室内には湯気が立ち込めており、それゆえ見難い画像となっていることをどうかご容赦下さい。
笛吹川の渓谷に沿って奥へ細長い造りの浴室は、右手が全面ガラス窓となっていて、渓谷を見下ろしつつ、対岸の景色も目前に迫ってくるという、なかなか豪快なロケーションであります。一方、左手にはゴツゴツとした岩肌がむき出しになって、荒々しく聳え立っています。渓谷の天然岩なのでしょうか。切り立った断崖の途中に浴室を拵えて、渓谷美を取り込んでいるような格好なのですが、左右両岸の岩崖に挟まれていますので、窓の大きさの割には薄暗い感じもします。でもそれが却って険しい仙境の只中にいるリアリティを生み出しているようでもありました。


 
脱衣室側の壁に沿って、シャワー付きのカランが5基一列並んでいます。カランのお湯からは、後述する浴槽のお湯と同じような感覚が得られましたので、おそらく源泉使用なのでしょう。


 
浴槽は前後に分かれており、いずれにもお湯の清らかさを引き立てるスカイブルーのタイルが貼られていました。手前側の大きな浴槽は20人以上余裕で入れそうな容量を擁していますが、奥側の小さな浴槽は3~4人サイズとかなり小ぶりです。小さな槽のお湯は大きな浴槽へと流れこんでおり、大きな槽の縁から溢れ出る大量のお湯は、洗い場のタイルを洗うかのように、波立ちながら流れていました。間違いなく完全掛け流しでしょう。


 
浴室へせり出る岩盤からは2本の筧が突き出ていて、大小それぞれの浴槽へ、ドボドボと音を響かせながらお湯を落としています。特に手前側の筧は勢いが良く、打たせ湯にしたら気持ち良さそうだと、その直下でお湯を体に当てようとしたのですが、温度が50℃近い高温であったため、掌で受け止めるのが精一杯でした。でも広い表面積を有する浴槽で自然冷却され、湯船では42℃前後という絶妙な湯加減になっているのでした。一方、小さな浴槽の筧は湯量が絞られていましたが、これも湯温調整を考えてのこと。湯船は大きな浴槽とほとんど同じ温度が維持されていました。


 
 
浴室最奥の扉を開けると、美しい渓谷を展望するテラスに出られます。垂直に屹立する断崖の真下を、澄み切った渓流が飛沫をあげながら流れており、下流側の右岸には滝が落ちていて、その場に立てば誰しもが佳景に見惚れること間違いなし。でも、テラスの躯体は打ちっぱなしの古いコンクリで、その表面は苔が生えて黒ずんでおり、迂闊に触ると手が汚れてしまいそうです。このテラスを抜けた先にある階段を降りてゆくと、渓谷を眺めながら湯浴みできる露天風呂が設けられていました。露天風呂にはキノコを連想させるコンクリの円形屋根が立てられていて、その屋根の上も苔むしていました。谷底で日が当たりにくく、湿気も多いのでしょうね。


 
私が訪れたのは平日のお昼前でしたが、まだ清掃が終わって間もないタイミングだったのか、露天風呂はお湯が半分しか溜まっておらず、湯浴みには少々厳しい状態でしたが、先客が誰もいないことを幸いに、体を横にして寝そべることによって、なんとか肩まで浸かることができました。内湯同様、この岩風呂にも筧からお湯が注がれており、湯船がお湯で満たされると、しっかりとオーバーフローしてゆくものと想像されます。瀬音を耳にし、滝を間近に眺めながらの湯浴みはなかなかの風情です。

お湯は無色澄明で非常にクリアなのですが、湯中をよく見ると茶色っぽい綿状の湯の華がチラホラと浮遊しています。筧の下に置かれているコップで飲泉してみますと、弱石膏味と芒硝味が喉を流れ落ちた後に、石膏臭が鼻へ抜けたのですが、それと同時に微かながらもしっかりとしたタマゴ感(味と匂い)が得られました。0.5mg含まれている硫化水素イオンがその正体なのでしょう。総じて言えば比較的石膏らしさが現れているお湯なので、てっきり石膏泉かとおもいきや、分析表に記されていた泉質名はアルカリ性単純泉。なるほど湯中で伝わる浴感は、アルカリ泉らしい滑らかなヌルツルスベですが、甲府盆地の温泉のようにツルスベが全てではなく、滑らかなフィーリングが8割だとすれば、残りの2割程度で硫酸塩泉的な引っ掛かりも混在しており、意外にも奥の深い個性の持ち主であることが体感できました。大量投入ゆえお湯の鮮度感は抜群ですし、湯加減もちょうど良く、滑らか且つしっとりとした感覚が私の体ととても相性が良かったため、この日は内湯だけで1時間近く浸かり続けてしまいました。
適宜メンテナンスされているものの、建物の老朽感は否めず、施設面を重視なさる方には気にかかる点もあるかと思いますが、お湯の良さにこだわる方なら満足できる一湯になるはず。甲府盆地に多いモール泉系の単純泉や重曹泉、あるいは山梨市・塩山周辺に点在するタマゴ感含有のアルカリ性単純泉とは一線を画する、石膏感がよく出ている無色透明の硫酸塩泉系温泉は、山梨県では貴重な存在と言えるでしょうね。今回再訪し、改めてお湯の良さを実感しました。


白龍閣源泉
アルカリ性単純温泉 52.5℃ pH8.9 368L/min(動力揚湯) 溶存物質737.3mg/kg, 成分総計792.4mg/kg
Na+:175.1mg(71.68mval%), Ca++:58.3mg(27.38mval%),
Cl-:108.9mg(30.52mval%), Br-:0.3mg, OH-:0.1mg, HS-:0.5mg, SO4--:302.9mg(62.72mval%), HCO3-:25.1mg, CO3--:7.2mg,
H2SiO3:46.9mg, CO2:55.1mg,

JR中央本線・山梨市駅より山梨市営バスの西沢渓谷線で「雷」バス停下車、夏季の土日と秋季は塩山駅南口から山梨貸切自動車(路線バス)の西沢渓谷線も利用可能(最寄りバス停は同じ)
山梨県山梨市三富川浦297  地図
0553-39-2611
ホームページ

日帰り入浴時間調査し忘れ
500円
ロッカー(100円リターン式)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント (2)
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