前回記事(前編)の続きです。
前回記事では寒河江駅のすぐ傍に立地する「ホテルシンフォニー」客室などの様子を紹介しましたが、今回こちらのホテルを宿泊利用した理由は、料金面もさることながら、大浴場で掛け流しの温泉に入れることも大きな魅力でした。しかも夜通し利用可能なんですよ。調子に乗って宿泊中は晩に2回、朝に1回、計3回も利用しちゃいました。雪を被った中庭を眺めながら1階浴室へ。
浴室へ向かう廊下には、昭和30年代に撮られた寒河江温泉の写真が展示されていました。入浴の最中だったり、御膳を前に胡座をかいたりと、いずれの写真にも力士が写っていますので、地方巡業の際に撮られたのかもしれません。
奥に長い造りの脱衣室には、カゴがたくさん用意されており、洗面台の数も多く、広くて綺麗で使い勝手良好です。一方で、今時珍しい紫外線のブラシ消毒器やオジサン向けのヘアトニックなど、備え付けのアメニティは前世紀的。
浴室内にはモール臭が強く漂っており、戸を開けた瞬間にその芳香が香ってきました。緩やかな曲線を描く窓ガラスに面してタイル張りの浴槽が据えられており、窓からの外光と室内照明によって十分に明るい環境が生み出されています。床タイルの表面には波状の茶色い模様が付着しているのですが、これはオーバーフローしてタイルの上を流れ去ってゆく温泉の成分がこびりついたのでしょう。
なお3階の一部客室からは浴室が丸見えとなる位置関係にあるため、窓ガラスには反射フィルムが貼られています。
洗い場は2ヶ所に分かれており、計7基のシャワー付きカランが並んでいます。またこれらとは別に、パーテーションで仕切られているブースには、立って使うシャワーが1基設置されていました。室内にはサウナと水風呂(ポリバス)も併設されているのですが、この日はいずれも使用停止中でした。
浴槽は下底の短い台形のような形状をしており、槽内の仕切りで左右対称に2分されているものの、仕切りが低いために、左右双方の湯船にはほとんど同じコンディションのお湯が張られていました。浴槽の造りがシンメトリならば、それらへお湯を注ぐ湯口もシンメトリであり、丸い柱の下には2つの湯口が90度の角度をなして配置され、それぞれから46~7℃のお湯が落とされていました。湯口の流路をよく見ますと、硫黄に起因すると思しき白く細かな湯の華が薄くこびりついていました。
左右の両浴槽はいずれも6~7人サイズで左右対称なのですが、右側浴槽の槽内にはステップがあって、その部分だけは左右で異なります。館内表示によれば湯使いは加水加温循環消毒の無い完全掛け流しとのこと。柱の湯口から浴槽へ注がれたお湯は、縁の切り欠けから排湯されています。浴槽の底にステンレスの格子が嵌めこまれていたのですが、これって気泡発生装置なのか、はたまた吸引口なのか・・・。湯口では46~7℃というやや熱めの温度で吐出されるのですが、湯船では43~4℃という入浴できる湯加減に落ち着いていました。人によってははちょっと熱く感じるかもしれませんが、手が加えられていないお湯だけあって、鮮度感は良好です。完全掛け流しのお湯ですから、多少熱くてもぐっと堪えて掛け流しのお湯の気持ちよさを味わっていただきたいものです。
露天風呂は浴室の窓際に無理やり設けたような、猫の額ほどの小さなもので、庭園との間に塀が立ちはだかっているため、閉塞感が否めずちょっと残念なのですが、実用的なタイル張りの内湯に対して、露天の槽内は石板が、そして縁には木材が用いられており、限られた範囲内でも何とか温泉風情を醸し出そうとする懸命な努力が垣間見えます。浴槽の大きさは、おおよそ4人サイズでしょうか。
露天の湯口にも白い湯の華が薄っすらと付着していますね。吐出される時点では内湯と同じく46~7℃なのですが、さすがに雪国の外気に晒されているためか、湯船では41℃前後という緊張感不要な湯加減まで下がっていましたので、おかげさまでじっくり長湯させていただきました。内湯同様に掛け流しかと思われますが、だらしなくオーバーフローさせちゃうと庭園に悪影響が出てしまうためか、排湯は溢れ出しにさせず、槽内の目皿から行われているようでした。
この露天で個人的に印象に残ったのが、深夜の湯面に浮かんでいた大量のアワアワです(画像右(下))。時間帯によって現れ方は異なるかと想像しますが、温泉で気泡を目にすると反射的に興奮してしまうのが温泉ファンの性であり、湯面を覆い尽くす大量の泡にまみれたくなった私は、睡眠時間が短くなるのを承知で、丑三つ時の露天に浸かってこの状態のお湯を楽しみました。尤も、浮かんでいる泡こそ多かったものの、湯中での気泡付着はあまり見られなかったのですが、都合3回の入浴で、知覚的特徴が最も強かったのは、このアワアワが絶好調だった深夜帯でした。
お湯は淡い山吹色でほぼ透明。夜間に見ると薄い琥珀色にも見えます。ほのかな塩味と非鉄系の金気味、弱いタマゴ味、そしてほろ苦みが感じられます。苦味に関しては、他の味覚よりも若干遅れて伝わってくるのですが、その後は喉の奥の粘膜に残り、存在感を誇示し続けていました。匂いに関しては、モール臭と焦げたようなタマゴ臭、そして弱い金気臭が香ってきます。前々回取り上げた「割烹旅館吉本」と同じ組合第2号源泉を引いているのですが、こちらのお風呂においては、金気が若干強く感じられました。
分析書で確認する限りでは、硫黄感をもたらすような数値を確認できないのですが、湯口で見られた白い湯の華とお湯を口にした時に得られたタマゴ感は間違いなく関連性のあるものと推測されますので、分析書には現れていない硫化水素等も若干含んでいるのではないかと思われます。
「美人の湯」というコピーに相応しく重曹泉らしいヌルヌル感を伴うツルスベ浴感がとても滑らかで、湯上がりはさっぱり爽快です。内湯は鮮度感も素晴らしく、心身がシャキっと引き締まる熱めの湯加減が相俟って、とても気持ちの良い湯浴みが楽しめました。駅前という好立地なのに、経済的に泊まれる上、掛け流しの温泉に好きなだけ入れるという、実にコストパフォーマンスに優れたホテルでした。
寒河江温泉協同組合第2号源泉
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 49.3℃ pH7.3 蒸発残留物1346mg/kg 溶存物質1524mg/kg
Na+:419.7mg, Mg++:14.4mg, Ca++:36.3mg,
Cl-:550.4mg, Br-:1.3mg, I-:0.2mg, HCO3-:371.4mg,
H2SiO3:100.7mg, CO2:31.2mg,
JR左沢線・寒河江駅より徒歩1~2分
山形県寒河江市元町1-3-13 地図
0237-86-2131
ホームページ
日帰り入浴時間12:00~16:00
800円
シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★
前回記事では寒河江駅のすぐ傍に立地する「ホテルシンフォニー」客室などの様子を紹介しましたが、今回こちらのホテルを宿泊利用した理由は、料金面もさることながら、大浴場で掛け流しの温泉に入れることも大きな魅力でした。しかも夜通し利用可能なんですよ。調子に乗って宿泊中は晩に2回、朝に1回、計3回も利用しちゃいました。雪を被った中庭を眺めながら1階浴室へ。
浴室へ向かう廊下には、昭和30年代に撮られた寒河江温泉の写真が展示されていました。入浴の最中だったり、御膳を前に胡座をかいたりと、いずれの写真にも力士が写っていますので、地方巡業の際に撮られたのかもしれません。
奥に長い造りの脱衣室には、カゴがたくさん用意されており、洗面台の数も多く、広くて綺麗で使い勝手良好です。一方で、今時珍しい紫外線のブラシ消毒器やオジサン向けのヘアトニックなど、備え付けのアメニティは前世紀的。
浴室内にはモール臭が強く漂っており、戸を開けた瞬間にその芳香が香ってきました。緩やかな曲線を描く窓ガラスに面してタイル張りの浴槽が据えられており、窓からの外光と室内照明によって十分に明るい環境が生み出されています。床タイルの表面には波状の茶色い模様が付着しているのですが、これはオーバーフローしてタイルの上を流れ去ってゆく温泉の成分がこびりついたのでしょう。
なお3階の一部客室からは浴室が丸見えとなる位置関係にあるため、窓ガラスには反射フィルムが貼られています。
洗い場は2ヶ所に分かれており、計7基のシャワー付きカランが並んでいます。またこれらとは別に、パーテーションで仕切られているブースには、立って使うシャワーが1基設置されていました。室内にはサウナと水風呂(ポリバス)も併設されているのですが、この日はいずれも使用停止中でした。
浴槽は下底の短い台形のような形状をしており、槽内の仕切りで左右対称に2分されているものの、仕切りが低いために、左右双方の湯船にはほとんど同じコンディションのお湯が張られていました。浴槽の造りがシンメトリならば、それらへお湯を注ぐ湯口もシンメトリであり、丸い柱の下には2つの湯口が90度の角度をなして配置され、それぞれから46~7℃のお湯が落とされていました。湯口の流路をよく見ますと、硫黄に起因すると思しき白く細かな湯の華が薄くこびりついていました。
左右の両浴槽はいずれも6~7人サイズで左右対称なのですが、右側浴槽の槽内にはステップがあって、その部分だけは左右で異なります。館内表示によれば湯使いは加水加温循環消毒の無い完全掛け流しとのこと。柱の湯口から浴槽へ注がれたお湯は、縁の切り欠けから排湯されています。浴槽の底にステンレスの格子が嵌めこまれていたのですが、これって気泡発生装置なのか、はたまた吸引口なのか・・・。湯口では46~7℃というやや熱めの温度で吐出されるのですが、湯船では43~4℃という入浴できる湯加減に落ち着いていました。人によってははちょっと熱く感じるかもしれませんが、手が加えられていないお湯だけあって、鮮度感は良好です。完全掛け流しのお湯ですから、多少熱くてもぐっと堪えて掛け流しのお湯の気持ちよさを味わっていただきたいものです。
露天風呂は浴室の窓際に無理やり設けたような、猫の額ほどの小さなもので、庭園との間に塀が立ちはだかっているため、閉塞感が否めずちょっと残念なのですが、実用的なタイル張りの内湯に対して、露天の槽内は石板が、そして縁には木材が用いられており、限られた範囲内でも何とか温泉風情を醸し出そうとする懸命な努力が垣間見えます。浴槽の大きさは、おおよそ4人サイズでしょうか。
露天の湯口にも白い湯の華が薄っすらと付着していますね。吐出される時点では内湯と同じく46~7℃なのですが、さすがに雪国の外気に晒されているためか、湯船では41℃前後という緊張感不要な湯加減まで下がっていましたので、おかげさまでじっくり長湯させていただきました。内湯同様に掛け流しかと思われますが、だらしなくオーバーフローさせちゃうと庭園に悪影響が出てしまうためか、排湯は溢れ出しにさせず、槽内の目皿から行われているようでした。
この露天で個人的に印象に残ったのが、深夜の湯面に浮かんでいた大量のアワアワです(画像右(下))。時間帯によって現れ方は異なるかと想像しますが、温泉で気泡を目にすると反射的に興奮してしまうのが温泉ファンの性であり、湯面を覆い尽くす大量の泡にまみれたくなった私は、睡眠時間が短くなるのを承知で、丑三つ時の露天に浸かってこの状態のお湯を楽しみました。尤も、浮かんでいる泡こそ多かったものの、湯中での気泡付着はあまり見られなかったのですが、都合3回の入浴で、知覚的特徴が最も強かったのは、このアワアワが絶好調だった深夜帯でした。
お湯は淡い山吹色でほぼ透明。夜間に見ると薄い琥珀色にも見えます。ほのかな塩味と非鉄系の金気味、弱いタマゴ味、そしてほろ苦みが感じられます。苦味に関しては、他の味覚よりも若干遅れて伝わってくるのですが、その後は喉の奥の粘膜に残り、存在感を誇示し続けていました。匂いに関しては、モール臭と焦げたようなタマゴ臭、そして弱い金気臭が香ってきます。前々回取り上げた「割烹旅館吉本」と同じ組合第2号源泉を引いているのですが、こちらのお風呂においては、金気が若干強く感じられました。
分析書で確認する限りでは、硫黄感をもたらすような数値を確認できないのですが、湯口で見られた白い湯の華とお湯を口にした時に得られたタマゴ感は間違いなく関連性のあるものと推測されますので、分析書には現れていない硫化水素等も若干含んでいるのではないかと思われます。
「美人の湯」というコピーに相応しく重曹泉らしいヌルヌル感を伴うツルスベ浴感がとても滑らかで、湯上がりはさっぱり爽快です。内湯は鮮度感も素晴らしく、心身がシャキっと引き締まる熱めの湯加減が相俟って、とても気持ちの良い湯浴みが楽しめました。駅前という好立地なのに、経済的に泊まれる上、掛け流しの温泉に好きなだけ入れるという、実にコストパフォーマンスに優れたホテルでした。
寒河江温泉協同組合第2号源泉
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 49.3℃ pH7.3 蒸発残留物1346mg/kg 溶存物質1524mg/kg
Na+:419.7mg, Mg++:14.4mg, Ca++:36.3mg,
Cl-:550.4mg, Br-:1.3mg, I-:0.2mg, HCO3-:371.4mg,
H2SiO3:100.7mg, CO2:31.2mg,
JR左沢線・寒河江駅より徒歩1~2分
山形県寒河江市元町1-3-13 地図
0237-86-2131
ホームページ
日帰り入浴時間12:00~16:00
800円
シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★