引き続き松之山温泉のお風呂を巡ってまいります。今回のターゲットは、いわゆるセンター系の日帰り入浴施設なのにお湯が凄いとして温泉ファンの間で高評価の「ナステビュウ湯の山」です。個人的には10年ほど前に一度訪れたことがあるのですが、拙ブログでは初登場です。
県道沿いには源泉櫓のような形状をした看板が立っており、以前はここから盛んに湯気が上がっていたように記憶しているのですが、現在ではすっかり鳴りを潜めているようでした。
受付カウンターの前に広がる物販コーナーにはご当地の産物と思しき食品類や雑貨等が並べられていましたが、その中で私の目を惹いたのが「島田牛乳」と記された冷蔵庫です。中ではビン牛乳が冷やされていましたので、湯上がり後に飲むことに。
受付の右側へ緩やかに下るスロープがあり、そこを進んだ突き当たりに浅葱色と鴇色の暖簾が掛かっていました。
広々とした脱衣室は、ロッカーが完備されており、清掃が行き届いているので、使い勝手が良くて居心地も快適です。洗面台には櫛や綿棒、そしてドライヤーが備え付けられており、浴室出入口にはボディタオルまで用意されていて、日帰り入浴施設とは思えないほどアメニティ類が充実していました。
浴室の戸を開けた途端に、脳天をクラクラさせるような松之山温泉の匂いが強く鼻孔を刺激してきました。
遠くまで見晴らせる大きなガラス窓がとっても開放的…と言いたいところですが、厳冬期ゆえに内湯は湯気で煙っていたので、画像はこの一枚のみ。
洗い場はふた手に分かれており、計10基のシャワー付きカランが並んでいます。洗い場にはシャンプー類が備え付けられているのですが、出入口付近には備え付けとは別ブランドのシャンプーやコンディショナーが用意されており、好みの種類が選べるのです。ちょっと高めの旅館やホテルですと、こうしたサービスはよく見られますが、まさか日帰り入浴施設で実施しているとは意外。脱衣室含め、サービスの充実ぶりには脱帽です。この他、室内にはサウナや水風呂があり、サウナ入室の際に体に塗るための塩も用意されていました。
大きな窓の下に設けられた浴槽は最大幅でおおよそ3.5m×7mで、手前側の一角が欠けている形状ですが、10数人は余裕で同時に入れそうな大きさ。縁は御影石で、槽内は石板貼り。角の湯口からアツアツのお湯が注がれており、窓下の溝へ溢れ出ています。館内表示によれば循環させているそうですが、熱交換によって加水せずに温度調整しているらしく、体感で41~2℃という入りやすい湯加減が維持されていました。
引き戸を開けて屋外に出て、内湯の浴槽を左に見ながらステップを下ると露天風呂。豪雪地帯ですから全体的に屋根が掛かっていますが、視界を遮るものはなく、越道川の深い谷を挟んだ向かいに広がる丘を一望でき、とても開放的なロケーションです。
内湯同様に十数人は同時入浴が可能な容量を有し、浴槽周りは岩が並べられ、槽内には石板が敷かれていました。
浴槽の中央に突き出た島から適温のお湯が噴き上がっていました。これはおそらく循環のお湯でしょう。一方、女湯との仕切り塀下より伸びる竹筒からは激熱のお湯がチョロチョロと滴り落ちていたのですが、こちらは100%の生源泉かと思われます。内湯と同じく湯温調整は熱交換によって行われており、加水されるのはお湯を張る時だけとのこと。
こちらの施設では自家源泉「湯坂温泉」が使われており、湯船に張られたお湯の色はまるでオリーブオイルのような色合いをしており、具体的にはやや緑色掛かった少々暗めの山吹色を帯びた微濁で、湯中には湯の華がチラホラ浮遊しています。生源泉を口に含んでみますと、強い鹹味と口腔の粘膜を痺れさせる苦味が感じられ、いわゆるアブラ臭と称されるような刺激を伴うハロゲン系(臭素やヨウ素等)の匂いが、湯口はもちろん湯面からも強く漂っていました。
非加水だけあってお湯の濃さは本物であり、手でお湯をひと掻きするだけで掌に伝わってくるトロットロな感触がその濃厚さを物語っています。そんなお湯に肩まで浸かると、食塩泉らしいツルスベ感と少々の引っ掛かりが混在して肌に伝わってくるのですが、さすがに濃い食塩泉だけあって、火照り方が実にパワフル。むしろ獰猛と表現しても差し支えなく、私が入った冬期ですら長湯できずに、湯船から這い上がってフェンスにもたれかかり、雪景色の向こうから吹いてくる寒風に体をさらしてクールダウンしました。夏に入ったら忽ち逆上せて、ノックダウンされてしまうこと必至でしょうね。循環されているとはいえ、お湯の力強さや濃さは素晴らしく、松之山温泉の実力がよくわかるお湯です。さすが「日本三大薬湯」と称されるだけあります。
湯上がりにフロント前の物販コーナーで売られていた冷たいビン牛乳を一気飲み。この「島田牛乳」の製造所は津南にあるんだそうでして、牛乳もご当地産なんですね。湯上がりのビン牛乳は美味い!
温泉めぐりはその土地々々の大地の恵みを楽しむ側面もありますから、その際に口にする牛乳は、この「島田牛乳」のように、大手資本ではなくその土地で生産されたものであると美味しさもひとしおです(たとえば福島県なら「酪王牛乳」、九州南部なら「デーリィ牛乳」という感じで)。
お湯も良ければ、施設も快適。スタッフの意気込みや心意気が感じられる素敵な施設でした。
湯坂温泉
ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 95℃ pH7.6 140L/min(掘削自噴) 溶存物質15417mg/kg 成分総計15418mg/kg
Na+:3600mg(59mval%), NH4+:32mg, Ca++:2100mg(39mval%), Sr++:28mg,
Cl-:9000mg(99mval%), Br-:33mg, I-:6.0mg,
H2SiO3:120mg, HBO2:250mg,
内湯:加水なし・加温なし・循環あり・消毒あり
露天:加水あり(湯張り時のみ)・加温なし・循環あり・消毒あり
北越急行・まつだい駅より東頸バスの松之山温泉行に乗車し「ナステビュウ湯の山」バス停下車
新潟県十日町市松之山湯山1252-1 地図
025-596-2619
ホームページ
4月~11月→10:00~22:00(最終受付21:30)、12月~3月→10:00~21:00(最終受付20:30)、第2金曜定休
600円(17:00以降500円、21:00以降350円)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★★