温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

桜湯温泉 健康増進施設ゆあーず

2015年08月23日 | 新潟県
 
松之山温泉で一夜を過ごした翌朝は、山を下りて十日町市の市街へと向かいます。前日は穏やかな陽気が続いて道路の雪はすっかり融けていたのですが、翌日の未明から本格的に降り始め、チェックアウトする頃にはどこが道でどこが斜面だかわからないほど一面真っ白。予報によればこれから夕方にかけて一日中強く降り続けるらしいのですが、果たして私の愛車"CX-5"のFF車は、無事に湯めぐりを終えて関東地方へ戻ることができるのでしょうか(まさかこの後すぐ、中越地方に大雪警報が発令されるとは…)。
新雪が深く積もっていた国道353号を南下しきるまではちょっと不安でしたが、交通量の多い国道117号まで出ちゃえばこっちのもの。車やタイヤの性能が良いことはもちろん、タイヤが噛みやすい雪質だったことも幸いして、時折視界を失いつつも、運転には全く問題なし。


 
この日の最初に訪れたのは、旧中里町の中心部、越後田沢駅の至近にある総合病院「上村病院」です。病院と言っても、体のどこかに変調をきたしたわけではなく、敷地内にある付帯施設「健康増進施設 ゆあーず」には温泉入浴施設があり、その温泉に入ることが目的なのでした。



こちらが上村病院の本棟。地域医療で重要な役割を担っており、この日も午前中から多くの人が訪れていました。院長先生は新潟県に僅かしかいない温泉療法専門医のお一人で、温泉を通じた健康増進に大変造詣が深いお方なんだそうです。なお病院の前には無料で利用できる足湯「さくら湯ふすばーと」があるのですが、この時は雪がひどかった上、融雪の水で足元がぬかるんでおり、極力歩きたくなかったので、足湯はパスすることに。


 
エントランスを入って左手にある受付で入浴したい旨を申し出ますと、ジャージを着たスタッフの方が快く対応してくださいました。健康増進を目的としている施設であり、会員になると館内のトレーニングジムや温水プールなどを利用することができるのですが、外来者でも温泉浴場の利用が可能です(表向きはアナウンスしていませんが)。スタッフの方はインストラクターなので、皆さんジャージを着用しているのでした。


 
衛生管理には人一倍厳しい医療関係施設だからか、脱衣室はとっても綺麗で清潔感に溢れており、ミラーなんて曇りひとつ無くピッカピカです。そんじょそこらのホテルや温泉旅館なんて顔負けですよ。


 
浴室はタイル貼りで実用的な造りですが、暖色系のタイルや大きなガラス窓によって、明るさと開放感がもたらされています。また室内には湯気とともにモール臭が香っており、お湯への期待感を高揚させてくれます。
洗い場にはシャワー付きカランが4基並んでおり、1基はハンドレール付きで、2基には仕切り板が設けられていました。なおカランから吐出されるお湯は真湯です。


 
浴槽はおおよそ3m×2.5mで、4~5人サイズといったところ。ほぼ四角形ですが、洗い場側の角のRが柔らかな印象を与えています。お湯は石板組みの湯口から注がれており、浴槽の縁からしっかりオーバーフローしていました。槽内の状況から推測するに、放流式かそれに近い湯使いと見て間違いないでしょう。約42℃の湯加減で、入った時に肌を走るシャキっとした浴感が素晴らしく、この内湯だけでも十分に気持ち良いのですが…



なんと露天風呂まで設けられているんですね。いわゆる日本庭園風の岩風呂であり、雰囲気を醸し出すため石材が多用されています。豪雪地帯という土地柄、頑丈な庇によって入浴ゾーン全体が護られており、この日のような大雪でも問題なく湯浴みできました。


 
浴槽は最大幅でおおよそ2.5m×5m、8~9人という結構なキャパを有しています。石積みの湯口から落とされるお湯は適宜投入量が調整されており、訪れた直後は40.5℃とぬるめだったのですが、しばらく経つとスタッフの方がやってきて、私など入浴客に状態を訊きながらコックを開いて投入量を増やし、そのおかげで湯温は万人が気持ち良い適温の42℃まで上がりました。湯船を満たしたお湯は縁から惜しげも無く溢れ出ており、こちらもおそらく放流式かそれに準じた利用状況かと思われます。


 
露天にもシャワー付きカランが1基設置されているのですが、こちらにはシャンプー類の備え付けが無いので、あくまで上がり湯程度に使うことを想定しているのかと想像されます。シャワーの右下に押しボタンを見つけたので、興味本位で押してみたところ、泡風呂が一定時間作動しました。

お湯は琥珀色で底がはっきり目視できる透明度を有し、湯口はもちろん湯面からも芳醇なモール臭を漂わせています。口に含むと微かな塩味と弱い苦味が感じられました。印象的なのは浴感の良さであり、入浴中はモール泉のようなハッキリとしたツルスベ感が得られ、湯上り後はさっぱり爽快、それでいて温まりも良好という、食塩泉と重曹泉の良いとこ取りをしたような素晴らしいフィーリングが楽しめました。


 
街中であるため景色は楽しめませんが、それでも上方の視界は開けているので、そこそこの開放感が得られます。とりわけこの日のような大雪の日は、降りしきる雪が周囲の建物や殺風景な人工物を覆い隠してくれるので、まるで人里離れた山の中にいるかのような銀世界を眺めながら、のんびり湯浴みすることができました。

濃厚で凶暴な松之山温泉とは対照的に、マイルドで滑らかなこちらのお湯は、体を優しく包んでくれるので、いつまでも長湯していたくなります。同じ十日町市内で考えますと、「千手温泉 千年の湯」に近いモール泉系のお湯であり、それよりはやや淡い感じですが、十分に比肩できる爽快湯と言えるかもしれません。


かみむら桜湯
アルカリ性単純温泉 50.0℃ pH8.5 220L/min(動力揚湯) 溶存物質896.2mg/kg 成分総計896.2mg/kg
Na+:274.0mg(93.05mval%), Ca++:14.1mg(5.47mval%),
Cl-:281.4mg(62.08mval%), Br-:1.8mg, I-:0.2mg, HS-:0.1mg, HCO3-:266.3mg(34.09mval%), CO3--:11.7mg,
H2SiO3:34.7mg,
湯使いに関する具体的な表示は見当たらなかったのですが、その代わりに「当桜湯温泉は、国及び県、保健所の設備基準を完全に満たしており、利用者の皆様にご安心してご利用いただけます」と記された張り紙が掲示されていました。ちょっと遠回しな表現ですが、推して知るべしといったところでしょうか。

JR飯山線・越後田沢駅より徒歩2分(約200m)
新潟県十日町市田中ロ468-1  地図
025-761-3663
上村病院ホームページ

10:00~21:00(最終受付20:30)  日・祝定休
700円
ロッカー(貴重品用)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5


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松之山温泉 旅館明星

2015年08月21日 | 新潟県
 
連続して松之山温泉の施設を取り上げていますが、強烈に火照る松之山の湯を立て続けて入っているうち、体が音を上げはじめてきましたので、最終目的地であるお宿へ向かうことにしました。この日のお宿は温泉街からちょっと離れた場所にある「旅館明星」です。県道沿いのわかりやすいロケーションで、向かいに建つガソリンスタンドが目印。数日前に拙ブログで取り上げました「十日町市高齢者憩の家」と同じ天水越地区に位置しており、すぐ近くには老舗旅館「凌雲閣」もあります。外観は民宿のようであり、玄関まわりからもアットホームな雰囲気が伝わってくるのですが、客室数は43室もあるんだそうでして、意外にも結構な規模を有する旅館なのです。


 
この日通された客室は6畳の和室。数多ある客室の中では最も小さな部屋のようです。テレビやエアコンなど基本的な設備は揃っている他、お部屋でWifiの使用も可能です。なお備え付けの冷蔵庫はありませんが、階段の踊場に共用のものがあるので、それを使うことになります。


 
今回は最もリーズナブルなプランで予約しましたので、お食事では特に豪華なものが提供されたわけではありませんが、左(上)画像の夕食では鴨肉の冷製(前菜)・鶏鍋・西京焼き・煮物・お刺身など、右(下)画像の朝食ではハム・焼き鮭などいかにも朝定食という感じのメニューで、しっかり美味しく、お腹を満たすには十分な量でした。どちらかと言えば、私はいわゆる旅館で出される絢爛豪華な食事が苦手なので、むしろこの位のボリュームがちょうど良く、自分のニーズにマッチしていて安心しました。もちろん料金によって豪華な料理にすることもできるようです。なお夕食朝食とも、階段すぐそばの1階座敷でいただきました。


 
さて胃袋を満たした後は温泉でパワフルな松之山の湯と格闘しましょう。2階の奥からステップを数段上がった先に、大型テレビや自販機が設置されているラウンジがあり、その右側に浴室の出入口が面していました。浴場の名前は「幸福の湯」というんですね。お風呂は男女別の内湯のみ。


 
松之山温泉臭が充満している浴室。タイル貼りの室内レイアウトはシンプルで、窓下に大きな浴槽がひとつ据えられているほか、左側の壁沿いにシャワー付きカランが3基並んでいました。女湯との仕切りにはガラスブロックが用いられており、ちょっぴりエロティック。
冬季以外でしたら窓から外を眺めることができるのでしょうけど、さすがに豪雪地帯ですから窓にはガッチリと雪囲いが施されており、隙間からはみ出ている雪以外に、外の様子は全くわかりません。


 
浴槽は楕円でも四角形でもない形容の難しい形状をしており、おそらく5~6人サイズかと思われます。縁は黒御影石で囲まれ、槽内は小さくて丸い水色のタイルが敷き詰められています。浴槽の左側には前髪パッツンの裸婦石像が置かれており、その前に突き出た塩ビ管から熱いお湯が投入されていました。裸婦像は水瓶を手にしており、その水瓶にも配管が向けられているのですが、現在その配管は止められています。石像の色の変色具合から想像するに、水瓶にお湯が注がれていた当時、水瓶から溢れ出たお湯は裸婦像の太もも辺りに落ちてから浴槽へと注がれていたのでしょう。

事前にお宿の方から説明されたのですが、湯面付近は非常に熱いため、入浴前にはしっかり掻き混ぜることが欠かせません。室内には加水用のホースが見当たらず、また湯もみ板(棒)も備え付けられていなかったので、腕に掛かる熱さを怺えながら桶で撹拌させたところ、湯浴みできる程度の湯加減まで落ち着いてくれました。湯使いに関して特に表示が無いので、放流式か循環なのか断言できませんが、縁からのオーバーフローは見られず、また槽内に設けられている目皿では吸い込みや吐出が無い代わり、槽内側面で口を開けている塩ビ管から排湯されていたので、投入量を絞り気味にした上での、放流式かそれに近い湯使いかと思われます。

松之山の温泉街に引かれてるお湯は1・2・3号の混合泉でしたが、こちらでは3号泉の単独使用で、数日前に取り上げた「十日町市高齢者憩の家」と同様です。ほぼ無色透明なのですが、薄っすら白く微濁しているように見えます。松之山温泉らしく非常に塩辛く、ヨードチンキを思われる刺激臭が漂っているのですが、温泉街の混合泉よりも幾らか苦味がマイルドである代わり、鹹味が強いように感じられます。また塩気が濃厚であるためか、温泉街の混合泉よりも火照り方が激しくて体への負担も大きく、しばらく湯浴みしていると体力が徐々に奪われてゆくのがわかります。このため長湯は禁物。体力自慢の方はぜひこのお湯とくんずほぐれつの大格闘を繰り広げていただきたいものです。ちなみに私は一晩で3回戦いを挑み、毎回徹底的に打ちのめされ、項垂れて部屋へと戻ったのでした。
この塩辛いお湯のお陰でパワフルに温まるため、湯上がり後に部屋へ戻っても、暖房なんて全く不要。それどころか、いつまでも発汗が続いて体がベトついたため、軽く窓を開けて銀世界に吹く冷気を部屋に入れてクールダウンを図ったほどです。松之山のお湯は本当に凄い!

リングでも土俵でも、格闘のステージに余計なものは要りません。それと同じく、質素な作りのお風呂だからこそ、松之山温泉の凶暴なお湯と真っ正面から戦えるのでしょう。お湯の濃厚さを存分に体感できるシンプル・イズ・ベストのお風呂でした。


鷹の湯3号
ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 97.5℃ pH7.7 200L/min(掘削自噴) 溶存物質16095mg/kg 成分総計16095mg/kg
Na+:3700mg(60mval%), NH4+:28mg, Ca++:2100mg(37mval%), Sr++:29mg,
Cl-:9500mg(99mval%), Br-:28mg, I-:7.3mg,
H2SiO3:170mg, HBO2:270mg,

新潟県十日町市松之山町天水越88-2  地図
025-596-2544
ホームページ

日帰り入浴可能(時間・料金不明)
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
コメント (8)
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松之山温泉 ナステビュウ湯の山

2015年08月19日 | 新潟県
 
引き続き松之山温泉のお風呂を巡ってまいります。今回のターゲットは、いわゆるセンター系の日帰り入浴施設なのにお湯が凄いとして温泉ファンの間で高評価の「ナステビュウ湯の山」です。個人的には10年ほど前に一度訪れたことがあるのですが、拙ブログでは初登場です。
県道沿いには源泉櫓のような形状をした看板が立っており、以前はここから盛んに湯気が上がっていたように記憶しているのですが、現在ではすっかり鳴りを潜めているようでした。


 
受付カウンターの前に広がる物販コーナーにはご当地の産物と思しき食品類や雑貨等が並べられていましたが、その中で私の目を惹いたのが「島田牛乳」と記された冷蔵庫です。中ではビン牛乳が冷やされていましたので、湯上がり後に飲むことに。
受付の右側へ緩やかに下るスロープがあり、そこを進んだ突き当たりに浅葱色と鴇色の暖簾が掛かっていました。


 
広々とした脱衣室は、ロッカーが完備されており、清掃が行き届いているので、使い勝手が良くて居心地も快適です。洗面台には櫛や綿棒、そしてドライヤーが備え付けられており、浴室出入口にはボディタオルまで用意されていて、日帰り入浴施設とは思えないほどアメニティ類が充実していました。


 
浴室の戸を開けた途端に、脳天をクラクラさせるような松之山温泉の匂いが強く鼻孔を刺激してきました。
遠くまで見晴らせる大きなガラス窓がとっても開放的…と言いたいところですが、厳冬期ゆえに内湯は湯気で煙っていたので、画像はこの一枚のみ。
洗い場はふた手に分かれており、計10基のシャワー付きカランが並んでいます。洗い場にはシャンプー類が備え付けられているのですが、出入口付近には備え付けとは別ブランドのシャンプーやコンディショナーが用意されており、好みの種類が選べるのです。ちょっと高めの旅館やホテルですと、こうしたサービスはよく見られますが、まさか日帰り入浴施設で実施しているとは意外。脱衣室含め、サービスの充実ぶりには脱帽です。この他、室内にはサウナや水風呂があり、サウナ入室の際に体に塗るための塩も用意されていました。

大きな窓の下に設けられた浴槽は最大幅でおおよそ3.5m×7mで、手前側の一角が欠けている形状ですが、10数人は余裕で同時に入れそうな大きさ。縁は御影石で、槽内は石板貼り。角の湯口からアツアツのお湯が注がれており、窓下の溝へ溢れ出ています。館内表示によれば循環させているそうですが、熱交換によって加水せずに温度調整しているらしく、体感で41~2℃という入りやすい湯加減が維持されていました。


 
引き戸を開けて屋外に出て、内湯の浴槽を左に見ながらステップを下ると露天風呂。豪雪地帯ですから全体的に屋根が掛かっていますが、視界を遮るものはなく、越道川の深い谷を挟んだ向かいに広がる丘を一望でき、とても開放的なロケーションです。
内湯同様に十数人は同時入浴が可能な容量を有し、浴槽周りは岩が並べられ、槽内には石板が敷かれていました。


 
浴槽の中央に突き出た島から適温のお湯が噴き上がっていました。これはおそらく循環のお湯でしょう。一方、女湯との仕切り塀下より伸びる竹筒からは激熱のお湯がチョロチョロと滴り落ちていたのですが、こちらは100%の生源泉かと思われます。内湯と同じく湯温調整は熱交換によって行われており、加水されるのはお湯を張る時だけとのこと。
こちらの施設では自家源泉「湯坂温泉」が使われており、湯船に張られたお湯の色はまるでオリーブオイルのような色合いをしており、具体的にはやや緑色掛かった少々暗めの山吹色を帯びた微濁で、湯中には湯の華がチラホラ浮遊しています。生源泉を口に含んでみますと、強い鹹味と口腔の粘膜を痺れさせる苦味が感じられ、いわゆるアブラ臭と称されるような刺激を伴うハロゲン系(臭素やヨウ素等)の匂いが、湯口はもちろん湯面からも強く漂っていました。
非加水だけあってお湯の濃さは本物であり、手でお湯をひと掻きするだけで掌に伝わってくるトロットロな感触がその濃厚さを物語っています。そんなお湯に肩まで浸かると、食塩泉らしいツルスベ感と少々の引っ掛かりが混在して肌に伝わってくるのですが、さすがに濃い食塩泉だけあって、火照り方が実にパワフル。むしろ獰猛と表現しても差し支えなく、私が入った冬期ですら長湯できずに、湯船から這い上がってフェンスにもたれかかり、雪景色の向こうから吹いてくる寒風に体をさらしてクールダウンしました。夏に入ったら忽ち逆上せて、ノックダウンされてしまうこと必至でしょうね。循環されているとはいえ、お湯の力強さや濃さは素晴らしく、松之山温泉の実力がよくわかるお湯です。さすが「日本三大薬湯」と称されるだけあります。



湯上がりにフロント前の物販コーナーで売られていた冷たいビン牛乳を一気飲み。この「島田牛乳」の製造所は津南にあるんだそうでして、牛乳もご当地産なんですね。湯上がりのビン牛乳は美味い!
温泉めぐりはその土地々々の大地の恵みを楽しむ側面もありますから、その際に口にする牛乳は、この「島田牛乳」のように、大手資本ではなくその土地で生産されたものであると美味しさもひとしおです(たとえば福島県なら「酪王牛乳」、九州南部なら「デーリィ牛乳」という感じで)。

お湯も良ければ、施設も快適。スタッフの意気込みや心意気が感じられる素敵な施設でした。


湯坂温泉
ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 95℃ pH7.6 140L/min(掘削自噴) 溶存物質15417mg/kg 成分総計15418mg/kg
Na+:3600mg(59mval%), NH4+:32mg, Ca++:2100mg(39mval%), Sr++:28mg,
Cl-:9000mg(99mval%), Br-:33mg, I-:6.0mg,
H2SiO3:120mg, HBO2:250mg,
内湯:加水なし・加温なし・循環あり・消毒あり
露天:加水あり(湯張り時のみ)・加温なし・循環あり・消毒あり

北越急行・まつだい駅より東頸バスの松之山温泉行に乗車し「ナステビュウ湯の山」バス停下車
新潟県十日町市松之山湯山1252-1  地図
025-596-2619
ホームページ

4月~11月→10:00~22:00(最終受付21:30)、12月~3月→10:00~21:00(最終受付20:30)、第2金曜定休
600円(17:00以降500円、21:00以降350円)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★



コメント (2)
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松之山温泉 ひなの宿ちとせ 後編「月見の湯」

2015年08月17日 | 新潟県
前回記事の続編です。

 
大浴場「ほんやらの湯」に満足した私は、日帰り入浴の料金内で利用できるもう一つのお風呂「月見の湯」も利用してみることにしました。この「月見の湯」は露天風呂なのですが、浴場がひとつしかないため、時間帯による男女入れ替え制となっており、日帰り入浴の時間ですと10:00~12:00が女湯、13:00~15:00が男湯として設定されています。その名前から想像するに、日が暮れて空に月が浮かび上がった頃合いを見計らって入った方が風情を感じられて良いのでしょうけど、日帰り入浴は日中だけですので、今回は月見ではなく雪見を楽しむことにしました。
まずはエレベーターで3階に上がり、浴場名が記された行灯の前にある戸を開けます。


 
戸の先には渡り廊下が伸びており、その突き当たりが脱衣小屋。上述のように男女入れ替え制のため、渡り廊下には今の時間帯が男女どちらであるかを知らせてくれる札が掲示されていました。
大浴場「ほんやらの湯」は、汗や垢をしっかり洗い落として湯船で温まる、一般的なお風呂としての役割を担っていますが、この「月見の湯」は湯に浸かって風情を愉しむことを目的とした施設であるらしく、設備面はどちらかと言えば簡素です。脱衣小屋にしても、備品類が整っていていた大浴場とは対照的に、こちらは棚と籠が用意されているだけで、洗面台やドライヤーなどは無く至って質素ですが、入浴には水分補給が欠かせないというお宿の配慮なのか、室内には飲料水のサーバが置かれていました。また、「ほんやらの湯」の脱衣室に備え付けられていた籠置き場の一つ一つには、番号の代わりに四字熟語やことわざなどの成句が付られていましたが、こちらにおいては風情面を強調したいのか、「閑けさや岩にしみいる蝉の声」や「雪とけて村いっぱいのこどもかな」など有名な俳句が記されていました。


 
こちらが露天風呂「月見の湯」の全景。全体的に木材が多用されており、浴槽の上など多くの部分は屋根で護られています。訪問したのは当地が豪雪に見舞われる厳冬期。人の背丈を超える雪は、柵によってなだれ込みがくい止められていましたが、それでも浴槽の目の前まで迫っていました。


 
露天を囲む大和打ちの塀に貼り付けられているネームプレートには、この浴場の男女別時間割が案内されており、これによれば男湯となる時間は13:00~18:30で、それ以外の入浴可能時間は女湯になるんだそうです。
このネームプレートの右隣りにはシャワーブースが設けられていますが、浴場の大きさに反して1箇所しかありませんので、やはり上述したように、このお風呂は汗を流す実用的なものではなく、景色を眺めながらお湯を愉しむことを目的としているのがわかります。


 
浴槽は(目測で)おおよそ3m×5m。槽内は石板貼りですが、四辺には太い木材が用いられており、滑り止めを意図しているのか、表面にはスリットが彫られていました。なお浴槽を二分するような形で丸太が一本渡されていますが、これによって槽内が仕切られている訳ではなく、単に縁の上に渡されているだけであり、枕代わりに使うと良い感じです。また、縁の上にも木の枕が用意されており、側面にもたれながらこれに頭を載せて湯浴みすると、上手い具合に姿勢が安定し、リラックスした状態で湯浴みすることができました。


 
お湯は2段の枡からトポトポと落とされていました。使用源泉は大浴場「ほんやらの湯」と同じく、鷹の湯1・2・3号泉。いかにも松之山温泉らしく、湯口においてはメチャクチャ熱いのですが、浴槽の容量に対して投入量は絞り気味であり、湯量調整によって湯加減をコントロールしているものと思われます。実際にこの時の湯温は(体感で)43℃前後であり、雪景色の中で入るには実に心地よい温度が維持されていたのでした。なお湯使いは完全放流式。浴槽に満たされたお湯は、太い木の縁を削った切り欠けより溢れ出ていました。


 
お湯はやや灰色掛かった山吹色に弱く濁っており、湯中には山吹色の半透明を細かくちぎったような湯の華が大量に浮遊していました。その量は「ほんやらの湯」をはるかに凌駕しており、湯の華だらけといっても過言ではありません。事実、上画像のような小さな画像でもその様子をご覧いただけるかと思います。湯面からは刺激を伴うアブラ的な匂い、そして焼き過ぎてちょっと焦げちゃったような目玉焼きの匂いが漂い、お湯を口に含むと塩辛さと苦味、そして唇などが痺れる渋みが感じられました。ツルスベのお湯に浸かるとトロミがあり、強い塩分によるピリッとくる刺激もあって、お湯の濃さを実感します。とっても火照るお湯なのですが、厳冬期の露天では却ってそれがちょうど良く、外気の冷たさをお湯の火照りが上手い具合に相殺して、体には程よいぬくもりと爽快感が残ってくれました。



お風呂の上は屋根で覆われていますが、湯船に浸かって視線を斜め上に向けると、お宿の屋根や温泉街の軒並みの向こうに、木々の茂る丘が眺められ、開放感のもとで雪見風呂を堪能することができました。雲が出ていない日没後には、きっとお月見ができるのでしょうね。

全体的な雰囲気がとっても素敵なこちらのお宿。お湯もお風呂もなかなかでした。今回は貸切風呂が利用できていませんので、その実現を兼ねて、次回は是非泊まってみたいなぁ…。


鷹の湯1号・2号・3号
ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 85.5℃ pH7.5 掘削自噴 溶存物質14978mg/kg 成分総計14979mg/kg
Na+:3500mg(60mval%), NH4+:31mg, Ca++:1900mg(38mval%),
Cl-:8900mg(99mval%), Br-:25mg, I-:10mg,
H2SiO3:110mg, HBO2:250mg,
「月見の湯」:放流式、ただし加水あり(源泉高温のため、清掃後の浴槽張り込み時に加水実施)(極寒期には一時的に加温)

新潟県十日町市松之山湯本49-1  地図
025-596-2525
ホームページ

立ち寄り入浴10:30~15:00 月曜定休
700円(拙ブログの記事で取り上げなかった貸切浴室は別途1050円/45分)
内湯(「ほんやらの湯」)に貴重品用ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり、「月見の湯」にはいずれの備品類もなし

私の好み:★★★

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松之山温泉 ひなの宿ちとせ 前編「ほんやらの湯」

2015年08月16日 | 新潟県
 
 
松之山温泉の温泉街中心部、観光案内所の真向かいに位置している旅館「ひなの宿 ちとせ」で立ち寄り入浴を楽しんでまいりました。松之山温泉の中でも規模が大きくてグレードも高いお宿であり、吝嗇者の私にとっては縁遠い存在なのですが、日中は立ち寄り入浴を受け入れてくれますので、その時間帯を狙って訪問することにしました。ガレージの一角に設けられている小さな足湯を目にしながら、アプローチを上がってフロントへ。


 
裏山まで見通せるラウンジは、現代的な開放感と伝統的な和の趣きを共存させています。またラグジュアリ感を醸し出しながらも、フロア一面に敷き詰められた畳により、日本人が日々の生活で慣れ親しんできた郷愁を感じさせてくれ、足元から伝わるその感触にホッと心が安らぎます。

フロントにて日帰り入浴をお願いしますと、快く対応してくださいました。館内には男女別の大浴場「ほんやらの湯」と、男女入れ替え制の露天風呂「月見の湯」、そして2室の貸切風呂があり、日帰り入浴の場合は「ほんやらの湯」と「月見の湯」(※)が利用できますので、今回はその両方に入浴しました。なお貸切風呂は別途料金が必要ですので、今回は利用しておりません。
(※)「月見の湯」は10:00~12:00が女湯、12:00~15:00が男湯となります。

今回の記事では大浴場「ほんやらの湯」について取り上げます。


 
フロント斜め前に位置している湯上がり処を通りすぎて浴室へ。女湯には「あねちゃ」、男湯には「あにちゃ」の札が掛かっていました。生涯青春を謳う元気な老人が多い近年では、どんな爺さん婆さんに対しても、こうして兄さん姉さんと称した方が相応しいのかも。


 
脱衣室の造りも和の趣きたっぷりで上品。隅々まできっちりお手入れされて清潔感が漲っており、備品類も整っていてとても快適です。浴室と接している部分はガラス窓になっており、中の様子を窺えるばかりでなく、明るさや開放感をもたらす一助にもなっていました。
この脱衣室で面白いのが籠を納める棚の枠一つ一つに付けられた札。遠くから目にした時には単なるナンバリングかと思ったのですが、近づいてみると、それぞれの札には「温故知新」「灯台下暗し」など異なる四字熟語や諺などが記されているのです。私のような数字に弱い人間は、単なる番号ですと「あれ? 何番だっけ」とうっかり忘れてしまいがちですが、こうした成句でしたら忘れる心配もありませんね。もっとも、どんな成句を選ぶかによって、その人の人柄が露呈してしまうリスクもありますが(笑)。
私は自戒の念を込めて「井の中の蛙大海を知らず」の籠をチョイス。


 
落ち着いた雰囲気の内湯。どっしりとした姿でお湯を湛える木の浴槽が、堂々たる存在感を放っています。室内には湯気とともに松之山温泉独特の匂いが充満していました。洗い場はふた手に分かれており、計8基のシャワー付きカランが設置されていました。


 
内湯には3m×5mサイズの大きな浴槽がひとつ据えられており、槽内こそタイル貼りですが、縁には立派な木材が用いられいます。深さもちゃんと確保されていて入り応え十分。一部分は寝湯ゾーンとなっており、仰向けになって入浴できるよう上げ底がスロープ状にゆるく傾斜している他、腰が当たる部分にはストッパー代わりの丸太が設置され、横になっている時でもお尻がズリ落ちずに安定して寝湯が楽しめる配慮がなされているのでした。


 

こちらのお風呂に引かれているお湯は、鷹の湯1号・2号・3号。湯船のお湯は薄い黄色を帯びた微濁を呈しています。館内表示によれば内湯では循環させているそうですが、直に触れたら火傷しそうなほど激熱の源泉も窓側の湯口から投入されており、この影響なのか、浴槽のお湯の状態は決して悪くなく、お湯から漂うアブラ臭も実に強力です。人間の嗅覚は同じ匂いを嗅ぎ続けていると、やがて慣れてしまって匂いを感じなくなってしまいますが(いわゆる順応)、不思議なことにこの浴室では匂いに麻痺することなく、何度嗅いでも松之山温泉ならではの個性的な匂いが嗅ぎ取れました。また、湯口の筒の周りには塩分と思しき白い結晶がビッシリこびり付いており、温泉成分の濃さをビジュアル的に実感できました。析出が現れやすい硫酸塩泉と違って、食塩泉の析出がここまでコンモリこびりつくのは珍しいかもしれません。
源泉投入と循環の塩梅がちょうど良く、私が入った時は(体感で)42~3℃という絶妙な湯加減。あまりに心地よいお湯だったので、肩まで浸かった瞬間に思わず「ふぅぅ」と大きな溜め息が出ちゃいました。なお壁に立てかけられている大きな板は湯もみ板。熱い時に活躍するのでしょうけど、今回登場の出番はありませんでした。


 
 
内湯のガラス窓を一枚隔てた屋外側は露天風呂。5~6人サイズの岩風呂で、底面は鉄平石敷きです。頭上は屋根で覆われており、すぐ目の前には裏山が迫っているため、開放感はあまり期待できませんが、外気に触れながらの爽快な湯浴みを楽しむならちょうど良い感じです。
奥の壁に掲示されている説明には、お湯の表面が熱ければ湯もみ板を使ってほしい、それでもダメなら加水調整をしてね、という旨が記されており、実際に浴槽手前の蛇口傍には小さな湯もみ板が置かれていましたが、お湯の投入量が絶妙であったためか、湯もみをしなくとも問題なく入浴できました。


 
積み上げられた岩の湯口から熱いお湯が注がれており、お湯が流れる岩の表面は濃いグレーに染まり、そのまわりには白や黄色などの結晶が現れています。内湯では循環が行われていましたが、この露天は源泉100%の放流式。お湯の濁り方は内湯より薄い一方で、湯中では千切れた膜のような暗い山吹色の湯の華が浮遊しており、お湯自体もトロっとしていて湯鈍りも少なく、湯船に体を沈めると、濃い塩分によって肌へピリっとくる刺激が走りました。なんとも言えない魅惑的な感触のトロミといい、絶妙な湯加減といい、実に気持ちの良いお風呂でしたが、貪欲な私はこれだけに満足せず、続いて露天の「月見の湯」へと向かったのでした。


鷹の湯1号・2号・3号
ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 85.5℃ pH7.5 掘削自噴 溶存物質14978mg/kg 成分総計14979mg/kg
Na+:3500mg(60mval%), NH4+:31mg, Ca++:1900mg(38mval%),
Cl-:8900mg(99mval%), Br-:25mg, I-:10mg,
H2SiO3:110mg, HBO2:250mg,
ほんやらの内湯:循環あり(体毛・糸くず等の除去と温度管理のため)、ヨウドパワーによる滅菌実施(衛生管理のため)、塩素系薬剤や入浴剤の使用なし、加水あり(源泉高温のため、清掃後の浴槽張り込み時に加水実施)
ほんやらの露天:掛け流し、ただし加水あり(源泉高温のため、清掃後の浴槽張り込み時に加水実施)

後編に続く
コメント
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