温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

桜湯温泉 健康増進施設ゆあーず

2015年08月23日 | 新潟県
 
松之山温泉で一夜を過ごした翌朝は、山を下りて十日町市の市街へと向かいます。前日は穏やかな陽気が続いて道路の雪はすっかり融けていたのですが、翌日の未明から本格的に降り始め、チェックアウトする頃にはどこが道でどこが斜面だかわからないほど一面真っ白。予報によればこれから夕方にかけて一日中強く降り続けるらしいのですが、果たして私の愛車"CX-5"のFF車は、無事に湯めぐりを終えて関東地方へ戻ることができるのでしょうか(まさかこの後すぐ、中越地方に大雪警報が発令されるとは…)。
新雪が深く積もっていた国道353号を南下しきるまではちょっと不安でしたが、交通量の多い国道117号まで出ちゃえばこっちのもの。車やタイヤの性能が良いことはもちろん、タイヤが噛みやすい雪質だったことも幸いして、時折視界を失いつつも、運転には全く問題なし。


 
この日の最初に訪れたのは、旧中里町の中心部、越後田沢駅の至近にある総合病院「上村病院」です。病院と言っても、体のどこかに変調をきたしたわけではなく、敷地内にある付帯施設「健康増進施設 ゆあーず」には温泉入浴施設があり、その温泉に入ることが目的なのでした。



こちらが上村病院の本棟。地域医療で重要な役割を担っており、この日も午前中から多くの人が訪れていました。院長先生は新潟県に僅かしかいない温泉療法専門医のお一人で、温泉を通じた健康増進に大変造詣が深いお方なんだそうです。なお病院の前には無料で利用できる足湯「さくら湯ふすばーと」があるのですが、この時は雪がひどかった上、融雪の水で足元がぬかるんでおり、極力歩きたくなかったので、足湯はパスすることに。


 
エントランスを入って左手にある受付で入浴したい旨を申し出ますと、ジャージを着たスタッフの方が快く対応してくださいました。健康増進を目的としている施設であり、会員になると館内のトレーニングジムや温水プールなどを利用することができるのですが、外来者でも温泉浴場の利用が可能です(表向きはアナウンスしていませんが)。スタッフの方はインストラクターなので、皆さんジャージを着用しているのでした。


 
衛生管理には人一倍厳しい医療関係施設だからか、脱衣室はとっても綺麗で清潔感に溢れており、ミラーなんて曇りひとつ無くピッカピカです。そんじょそこらのホテルや温泉旅館なんて顔負けですよ。


 
浴室はタイル貼りで実用的な造りですが、暖色系のタイルや大きなガラス窓によって、明るさと開放感がもたらされています。また室内には湯気とともにモール臭が香っており、お湯への期待感を高揚させてくれます。
洗い場にはシャワー付きカランが4基並んでおり、1基はハンドレール付きで、2基には仕切り板が設けられていました。なおカランから吐出されるお湯は真湯です。


 
浴槽はおおよそ3m×2.5mで、4~5人サイズといったところ。ほぼ四角形ですが、洗い場側の角のRが柔らかな印象を与えています。お湯は石板組みの湯口から注がれており、浴槽の縁からしっかりオーバーフローしていました。槽内の状況から推測するに、放流式かそれに近い湯使いと見て間違いないでしょう。約42℃の湯加減で、入った時に肌を走るシャキっとした浴感が素晴らしく、この内湯だけでも十分に気持ち良いのですが…



なんと露天風呂まで設けられているんですね。いわゆる日本庭園風の岩風呂であり、雰囲気を醸し出すため石材が多用されています。豪雪地帯という土地柄、頑丈な庇によって入浴ゾーン全体が護られており、この日のような大雪でも問題なく湯浴みできました。


 
浴槽は最大幅でおおよそ2.5m×5m、8~9人という結構なキャパを有しています。石積みの湯口から落とされるお湯は適宜投入量が調整されており、訪れた直後は40.5℃とぬるめだったのですが、しばらく経つとスタッフの方がやってきて、私など入浴客に状態を訊きながらコックを開いて投入量を増やし、そのおかげで湯温は万人が気持ち良い適温の42℃まで上がりました。湯船を満たしたお湯は縁から惜しげも無く溢れ出ており、こちらもおそらく放流式かそれに準じた利用状況かと思われます。


 
露天にもシャワー付きカランが1基設置されているのですが、こちらにはシャンプー類の備え付けが無いので、あくまで上がり湯程度に使うことを想定しているのかと想像されます。シャワーの右下に押しボタンを見つけたので、興味本位で押してみたところ、泡風呂が一定時間作動しました。

お湯は琥珀色で底がはっきり目視できる透明度を有し、湯口はもちろん湯面からも芳醇なモール臭を漂わせています。口に含むと微かな塩味と弱い苦味が感じられました。印象的なのは浴感の良さであり、入浴中はモール泉のようなハッキリとしたツルスベ感が得られ、湯上り後はさっぱり爽快、それでいて温まりも良好という、食塩泉と重曹泉の良いとこ取りをしたような素晴らしいフィーリングが楽しめました。


 
街中であるため景色は楽しめませんが、それでも上方の視界は開けているので、そこそこの開放感が得られます。とりわけこの日のような大雪の日は、降りしきる雪が周囲の建物や殺風景な人工物を覆い隠してくれるので、まるで人里離れた山の中にいるかのような銀世界を眺めながら、のんびり湯浴みすることができました。

濃厚で凶暴な松之山温泉とは対照的に、マイルドで滑らかなこちらのお湯は、体を優しく包んでくれるので、いつまでも長湯していたくなります。同じ十日町市内で考えますと、「千手温泉 千年の湯」に近いモール泉系のお湯であり、それよりはやや淡い感じですが、十分に比肩できる爽快湯と言えるかもしれません。


かみむら桜湯
アルカリ性単純温泉 50.0℃ pH8.5 220L/min(動力揚湯) 溶存物質896.2mg/kg 成分総計896.2mg/kg
Na+:274.0mg(93.05mval%), Ca++:14.1mg(5.47mval%),
Cl-:281.4mg(62.08mval%), Br-:1.8mg, I-:0.2mg, HS-:0.1mg, HCO3-:266.3mg(34.09mval%), CO3--:11.7mg,
H2SiO3:34.7mg,
湯使いに関する具体的な表示は見当たらなかったのですが、その代わりに「当桜湯温泉は、国及び県、保健所の設備基準を完全に満たしており、利用者の皆様にご安心してご利用いただけます」と記された張り紙が掲示されていました。ちょっと遠回しな表現ですが、推して知るべしといったところでしょうか。

JR飯山線・越後田沢駅より徒歩2分(約200m)
新潟県十日町市田中ロ468-1  地図
025-761-3663
上村病院ホームページ

10:00~21:00(最終受付20:30)  日・祝定休
700円
ロッカー(貴重品用)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする