温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

東鳴子温泉 高友旅館 2016年秋・宿泊 前編

2017年09月20日 | 宮城県
 
昨年(2016年)秋の某日、黒湯でおなじみの東鳴子温泉「高友旅館」で一晩過ごしました。こちらのお宿に関しては、以前日帰り入浴した際の記録を2013年5月に拙ブログで取り上げたことがありますが(当時の記事はこちら)、今回は宿泊して、館内に複数あるお風呂をたっぷり満喫してまいりました。


●客室
 
館内の中央にある板張りの広間には、コインを投入すると前後に動く馬の形をした子供用乗り物(ムーバー)が置かれていました。この手のもの(サトちゃんムーバーなど)は昭和の商店街の軒先でよく見られましたが、まさか平成もまもなく30年目を迎えようとしているのに、旅館の中でこんなレトロなものと再会するとは予想だにしませんでした。ただ、今でも動くかどうかはわかりません。

 
 
明るい昼でももののけが出てきそうな廊下を進んで客室へ。途中で見かけた鳴子名物のこけしは埃をまとって残念な姿に。



長い廊下をひたすら進んでいった先が、今回案内された自炊棟の客室です。今回は素泊まりなので、宿で食事はいただいておりません。某大手宿泊予約サイトの口コミを見てみますと、古いという客観的な視点やお湯の評価が高いという点に関してはどなたも共通しているものの、宿泊施設に対してはお客さんの価値観によって大きく異なり、古い建物や昔ながらの湯治宿風情に対して理解がないと、どうしても芳しくない評価となってしまう傾向があるようです。


 
湯治宿ですから客室には自炊用の台所が備わってあり、冷蔵庫や洗面台も室内に用意されています。夕食は外食で済ませましたが、朝食はコンビニで弁当を買ってきて、館内にある共用の電子レンジで温めていただきました。

お部屋では一晩寝て過ごすだけですから、布団を被って寝てしまえば良い。私がこの宿に泊まった目的は、ホスピタリティやアメニティなどではなく、宿ならではの温泉に入ること、それだけです。館内には5つのお風呂があり、それぞれ趣向が異なりますから、宿泊滞在中にその全てを制覇することにしました。


●黒湯
 
まずはお宿の名物である「黒湯」から入ってみましょう。こちらのお風呂は、複数ある浴場の中で最も大きいため、実質的な主浴場として位置づけされているようです。拙ブログの過去記事でも取り上げておりますが、結論から申し上げると当時の様子と全く変わっておらず、その変化のない姿を目にして安心しました。昭和の木造校舎を彷彿とさせる廊下を歩いて浴場へ向かうのですが、その途中に「名湯 黒湯について 気にしないでください」と題された案内書きが掲示されており、何を気にしてはいけないのかといえば、このお湯は空気に触れると黒色に変化するので不潔ではなく、ゴミでもないよということを訴えていたのでした。
なお、この廊下の突き当たりには女性専用の小さな浴室があるのですが、そこで使われているお湯は黒湯ではなく(顕の湯源泉が引かれているようです)、しかも内部はかなり老朽化が進んでおり、正直なところ、ひなびたお風呂に慣れているはずの私でも一瞬たじろいでしまうほどでした。


 
脱衣室の壁に貼ってあった「ケロリンカプセル」の広告シールも以前のまま。上部の剥がれ方も全く変わっていません。


 
お風呂の様子も前回訪問時と全く同じであり、入室した瞬間に鼻腔をツンとアブラ臭が鼻腔を刺激してくる点も全く同様なのですが、後述するように湯船に張られている黒湯の色合いが若干異なっているように見えました。また、前回は調子が悪かったもののお湯を吐出できていた洗い場の2つのシャワーは、今回は両方とも全然使えない状態でした。この数年間でとうとうお陀仏になってしまったようです。


 
勾玉のような形状をした黒湯の浴槽。前回訪問時は名前の通りにお湯が黒く見えたのですが、今回は黒さが若干薄い代わりに暗いウグイス色が強く出ているようでした。この手のお湯はコンディションや光線の具合によって色の見え方が異なりますので、マニア的な視点で申し上げれば、何回も訪れて日や時間による違いを観察するのも一興かと思います。


 
黒い湯船へ注ぐ湯口では真っ白な湯の華がユラユラ揺れており、そのコントラストが鮮やかです。湯使いは完全放流式。浴槽縁の切り欠けから、長年にわたる成分付着で丘のようにこんもり盛り上がっている流路へ、お湯が絶え間なく溢れ出ています。湯中ではツルスベの滑らかな浴感が得られ、お湯を口に含んでみますと、苦味よ弱タマゴ感、弱炭酸味、そして鼻の粘膜を刺激する消毒薬のようなアブラ臭が感じられました。


 
浴室の真ん中で斜めの立つ塔も健在。根元はこんもり盛り上がっており、その表面には細かなうろこ状の模様が形成されていました。


 
同じ浴室内にあるもうひとつの浴槽「プール風呂」。なるほど四角いコンクリ造の浴槽はプールのようにも見えますね。画像を見て一目瞭然ですが、黒湯とは全く違う「顕の湯」という別源泉のお湯が張られており、青白みを帯びた貝汁濁りを呈しています。こちらのお湯からは石膏的な甘味、ほろ苦み、弱タマゴ感、そしてマイルドなアブラ臭が得られ、黒湯にはひけをとるものの良好なツルスベ感が肌に伝わりました。源泉自体はかなり熱いのですが、そこに水が加えられることによって、私の体感で41℃前後という入りやすい温度に調整されていました。

一度に二度美味しいこの浴室だけでも十分に面白いのですが、他にもまだまだお風呂がありますので、ここで満足することなく次へ向かいましょう。


【黒湯】
幸の湯
含硫黄-ナトリウム-炭酸水素塩泉(硫化水素型) 57.8℃ pH6.7 溶存物質2490.2mg/kg 蒸発残留物1630mg/kg
Na+:518.9mg(85.30mval%),
Cl-:141.1mg(13.76mval%), HS-:2.5mg(0.28mvl%), S2O3--:0.4mg, HCO3-:1430mg(81.02mval%),
H2SiO3:228.1mg, CO2:385.3mg, H2S:3.8mg,
(平成21年10月2日)
加水加温循環消毒なし

【プール風呂】
顕の湯
ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩泉 74.6℃ pH6.8 溶存物質2252.6mg/kg 蒸発残留物1461mg/kg
Na+:375.7mg(64.76mval%), Mg++:34.1mg(11.14mval%), Ca++:105.8mg(20.93mval%),
Cl-:104.3mg(11.00mval%), S2O3--:0.5mg, SO4--:222.6mg(17.32mval%), HCO3-:1166.9mg(71.53mval%),
H2SiO3:228.1mg, CO2:385.3mg, H2S:0.3mg,
(平成21年10月2日)
加水加温循環消毒なし


後編へ続く
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東鳴子温泉 勘七湯

2017年09月18日 | 宮城県
 
鳴子温泉エリアで宿泊したある日の晩、東鳴子温泉の「勘七湯」で立ち寄り入浴させていただきました。このブログで取り上げるのは初めてですが、私個人としては3回目の再訪です。湯めぐりシールを片手に訪うと、この日も誠実で実直なお人柄が伝わってくるご主人が快く受け入れてくださいました。


 
館内には大きさが異なる二つの浴場(いずれも内湯)があり、日帰り入浴でも両方に入ることができます。まずは男女別の大浴場から。


●大浴場

こちらが大浴場の入口。


 
全面タイル張りで実用的な浴室には、二つにセパレートされた浴槽、そして洗い場が設けられており、洗い場にはシャワー付きカランが4基並んでいます。


 
大浴場では東鳴子エリアの各宿に分配されている共同源泉(赤湯源泉)が使われています。二つに分かれた浴槽は、室内の壁や床と同様にタイル張り。双方には同じ源泉のお湯が張られているのですが、左側の大きな浴槽は適温、右側の小さな浴槽は熱めの湯加減になっていました。


 
小さな観葉植物の鉢が置かれた湯口から熱いお湯が双方へ落とされています。長年にわたって温泉成分が接することにより、浴槽側面などを中心にトゲトゲが発生していました。このお湯の見た目は薄っすら褐色を帯び、光の当たり方によっては黒ずんでいるようにも見えますが、透明度自体は高く、湯中では黒い湯の華がチラホラ舞っています。湯面からは東鳴子のお湯らしい淡いアブラ臭が漂い、重曹泉らしいほろ苦みが感じられます。お湯に浸かるとトロミを伴うツルスベ浴感が肌をすべり、その滑らかさには「さすが東鳴子のお湯は良い」と唸りたくなりました。


●不老泉(小浴場)

大浴場の共有源泉を楽しんだ後は、一旦服を着てから廊下に出て、「不老泉」と名付けられている小浴場の暖簾をくぐりました。温泉ファンの皆さんは、敢えてこの小さなお風呂を好んで入るのですが、その理由は後ほど。


 
家族風呂のようなコンパクトな浴室は、大浴場と同じくオフホワイト系のタイル張りで、やはり実用本位といった趣きです。一応窓はあるものの、壁の上部に取り付けられているため、入室中にはあまり開放感が得られません。貸切利用もできますから、宿泊時には便利かもしれませんが、これだけなら、日帰り入浴でわざわざ小さいお風呂に入らなくても良さそうなものです・・・



洗い場も申し訳程度にシャワー1基取り付けられているのみですが、この洗い場の前に佇む謎の扉の向こうには、小浴場の利用価値を高めているあるものが隠されているんですね。


 

この小さなお風呂に張られているお湯は「勘七源泉」という自家源泉であり、上述の洗い場前のドアを開けるとすぐに貯湯タンクが設置されていて、そのタンクからわずか数十センチという短距離で湯口へお湯が供給されているのです。コンパクトな浴室ながら浴槽は3〜4人サイズを有し、室内面積の半分ほどは浴槽で占められているほど。湯口から注がれるその自家源泉は、淡い麦茶色を呈しており、湯中では黒い湯の華が大量に浮遊しています。中にはワカメの破片みたいな大きなものまで沈殿しています。そして湯口からは東鳴子温泉ならではのアブラ臭が香ってくるのですが、その香りは共同源泉(赤湯源泉)のそれよりはるかに強く、しかも芳しく、ほのかにモール泉のような金気的な匂いすら含まれているようです。口に含むと清涼感を伴うほろ苦味が感じられ、そんな味覚からもわかるように、お湯に浸かると重曹泉らしいヌル・ツル・スベの三拍子が揃った大変なめらかで優しい浴感に抱かれます。少々熱めの湯加減なのですが、お湯がフレッシュなので、むしろその熱さがとても気持ちよく、入浴中は肌がとても滑らかになり、湯上がり後は適度に粗熱が抜けてくれるため、温浴効果を持続しながら爽快感も同時に楽しめます。溶存物質1001.0mgなので、温泉法的にはギリギリのところで重曹泉を名乗れているような状況なのですが(1000mgを下回ると単純泉になっちゃいます)、お湯の新鮮さが数値の低さを補って余りある働きを発揮しているのかもしれません。

建物自体はちょっとお疲れのようですが、念入りなお手入れによって館内は綺麗に維持されており、またいつ訪れてもスタッフの方が気持ちよく対応してくださるため、素晴らしい自家源泉のフィーリングと相まって、こちらのお宿には常に良い印象が残ります。鳴子エリアの優しさと懐の大きさを実感させてくれるお宿かと思います。


(大浴場)
混合泉(新井第2号泉・動力揚湯源泉・新井5号泉・唐竹沢源泉)
ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物温泉 66.4℃ pH7.4 溶存物質1303.5mg/kg 蒸発残留物1052mg/kg
Na+:269.7mg(84.03mval%), Ca++:24.7mg(8.81mval%),
Cl-:104.8mg(20.23mval%), HS-:0.7mg, SO4--:113.4mg(16.13mval%), HCO3-:565.6mg(63.36mval%),
H2SiO3:180.8mg, CO2:77.0mg, H2S:0.3mg,
(平成25年10月8日)
加水あり(源泉が高温のため)
加温循環消毒なし

(小浴場「不老泉」)
勘七源泉
ナトリウム-炭酸水素塩温泉 51.1℃ pH6.8 10.0L/min(掘削自噴) 溶存物質1001.0mg/kg 成分総計1147.7mg/kg
Na+:182.1mg(82.76mval%), Ca++:8.0mg,
Cl-:38.4mg(11.10mval%), HS-:0.2mg, S2O3--:0.2mg, HCO3-:508.9mg(85.71mval%),
H2SiO3:213.8mg, CO2:146.3mg, H2S:0.4mg,
(平成21年10月2日)
加水加温循環消毒なし

宮城県大崎市鳴子温泉字赤湯18  地図
0229-83-3038
ホームページ

日帰り入浴8:00〜20:00
500円(もしくは湯めぐりシール2枚)
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★



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鳴子温泉 東多賀の湯 2016年秋・再訪(宿泊)

2017年09月16日 | 宮城県
 
約一年前ですが2016年秋の某日、鳴子温泉の「東多賀の湯」で一晩お世話になりました。こちらは以前拙ブログで日帰り入浴したときの様子をレポートしておりますが(以前の記事はこちら)、今回は宿泊利用です。私の訪問時には外壁工事中でしたが、もうすでに工事は終了しているものと思われます。語弊を承知で申し上げればアパートのような外観ですが、れっきとした温泉宿であります。もっとも一般的な旅館でありながら、自炊しながら長期宿泊して湯治をするのがこちらの本来の過ごし方であり、それゆえアパートのようになっても不思議ではないのでしょう。周囲にはふんわりと硫化水素臭が香ってます。



玄関ではワンコがお出迎え。


●お部屋・お食事
 
今回通された2階の客室は6畳の和室で、テレビが備え付けられているほか、コタツや石油ファンヒーターなど暖房対策万全。



さすが自炊宿だけあって、部屋には小さいながらもキッチンが付帯しており、冷蔵庫やガスコンロ、流し台が備え付けられていました。なおトイレは共用のものを使います。


 
各部屋のみならず、廊下には共用の炊事場があり、食器類や各種調理器具、電子レンジ、洗濯機なども備わっていますから、長期滞在には最適ですね。
廊下の隅の本棚には漫画がたくさん並べられていました。


 
 
私は夕食を外で摂り、朝食だけお宿でお願いしました。朝食は1階の食堂でいただきます。ここでいただいた白米がべら棒にうまい! 「ゆきむすび」という鳴子地区の気候に合わせて開発された品種らしく、しかも目の前のお茶碗に盛られたお米は、お宿の社長さんが自ら栽培なさったものなんだとか。モッチモチしていて
あまりに美味しいので、チェックアウト時にお土産として買ってしまいました。



●お風呂

さて肝心のお風呂へと参りましょう。浴舎は本館とは離れた作りになっているのですが、両者を連絡するドアを開けるだけでも濃厚な硫化水素臭が鼻を突き、それにつられて私の胸も期待で膨らみます。
なお、浴場入口の暖簾の前にはちょっとした小上がりが設けられており、湯上がりのひと休みに使えます。



硫化水素の濃さを物語る具体例がこの照明。浴場内を照らすために取り付けられているのですが、浴室内ではなくガラスを隔てた脱衣室に設置されており、ガラス越しにスポットライトの光を浴室全体へ当てているのです。浴室に照明器具を取り付けると、硫化水素でたちまち腐食してしまうのでしょうね。


 
質実剛健でシンプルながらも歴史ある温泉地らしい風格を放つ浴室。一見すると以前の訪問時と同じような構造なのですが、ひと呼吸置いてよく見つめ直してみますと、明らかに以前と異なっていることに気づきました。基本的なレイアウトこそ以前とほぼ同じなのですが、以前のような薄暗くて鄙びた湯治宿風情が払拭され、すっかり綺麗になっているのです。どうやら数年前に改修されたらしく、張り直された材木はまだ真新しい白木の状態が保たれており、また白い化成品の防滴建材を採用することで、以前より明るい環境で入浴することができるようになっていました。窓サッシも新しいので開閉がスムーズです。


 
浴室内にシャワーなどのカランが無いのは従前通り。造りに若干の違いはあるものの、壁から突き出た短い桶より100%源泉の温泉が、積み重ねられたケロリン桶に向かって注がれている「東多賀の湯」ならではのスタイルは、改修後も固持されていました。なお改修後も真湯は無いので、硫黄のお湯で体を洗うことになり、また湯船から上がった後の上がり湯をかけることもできませんから、こちらのお風呂に入ると否応なしに全身が硫黄臭くなります。私のような温泉バカにはこの上ない天国状態ですが、人によってはちょっと苦手かもしれません。
なお、このお湯は持ち帰ってもよいらしく、本棟館内の廊下には持ち帰り用のPETボトルが用意されていました。



桶から落とされるお湯を受け止めているケロリン桶は温泉成分のこびりつきによりコーティングされており、その分厚さゆえにケロリンの文字がほとんど見えません。すごい!


 
浴槽は入り心地の良い総木造で、おおよそ4人サイズ。底はすのこ状になっています。訪問時、湯船は42〜3℃という何とも言えない絶妙な湯加減が維持されており、あまりの素晴らしさに、肩までお湯に体を沈めた瞬間、思わず「ふぅ〜」と長い息が漏れてしまいました。湯船のお湯は弱いグレーを帯びる乳白色に強く濁っており、湯中の様子は目視できません。湯口からトポトポと注がれるお湯を口に含んでみますと、唇や口腔の粘膜を痺れさせる強い苦味や渋みが感じられ、石膏甘味とタマゴ味、粉っぽい風味、そして焦げたような味も伝わってきます。とにかく苦味の主張が強いので、迂闊にテイスティングすると口が痺れてエラい目に遭うこと必至なのですが、それだけ濃くて力強いお湯であることがわかります。



湯船の湯面上には通気孔がいくつも並んでいますが、言わずもがな、これは硫化水素ガス対策ですね。人間の嗅覚は時間が経つと同じ臭いに対して鈍感になる傾向があり、本棟から浴舎に入る際には強い硫化水素臭を感じたにもかかわらず、その匂いを放っているはずのお湯を目に前にしても然程匂いが強いように思いませんでした。おそらく私の嗅覚が臭いに慣れてしまったからなのでしょう。それゆえ、下手をすれば中毒の危険性に気づかないことも考えられるので、こちらのお風呂では換気に細心の注意を払っているのだと推測されます。

それにしても、この白濁湯は本当に素晴らしい。湯船の中にいると、肌の微細なシワ一本一本にまで白濁湯がしっかり染み込み、お湯の効能が浸透してくるような感覚を覚えます。ちょっと熱めの湯加減なので長湯しにくいのですが、あまりに極上な浴感なので、逆上せて湯船から上がろうとしても、後ろ髪を引かれて上がれなくなってしまいます。日帰り入浴ではわずかな時間しか入れませんが、この時は宿泊することで、夜を通して何度も入浴し、頭のてっぺんから足の先まで全身を硫黄まみれにしたのでした。今更私が言うまでもありませんが、改めて名湯であることを認識させられました。


東多賀の湯1号泉
含硫黄-ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・炭酸水素塩温泉(硫化水素型) 50.2℃ pH5.9 溶存物質1708.9mg/kg 蒸発残留物1604mg/kg
Na+:322.1mg(65.19mval%), Mg++:25.8mg(9.86mval%), Ca++:86.9mg(20.20mval%),
Cl-:58.6mg(8.19mval%), HS-:2.3mg, S2O3--:0.2mg, SO4--:685.9mg(70.87mval%), HCO3-:250.6mg(20.40mval%),
H2SiO3:224.2mg, CO2:489.3mg, H2S:34.4mg,
(平成20年9月24日)
加水加温循環消毒なし

宮城県大崎市鳴子温泉字新屋敷160  地図
0229-83-3133
ホームページ

日帰り入浴11:00~14:00
500円(鳴子湯めぐりチケット2枚)
シャンプーあり

私の好み:★★★
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新鳴子温泉 まつばら山荘

2017年09月14日 | 宮城県
 
今回記事からは鳴子温泉エリアのお風呂を連続して取り上げてまいります。まずは新鳴子温泉に属する「まつばら山荘」から。以前取り上げたことのある「久田旅館」と同じく江合川の左岸にあり、「久田旅館」から川に沿って数百メートル川下へ進んで狭い路地を入った先に位置しています。目の前には踏切があり、すぐ裏手を陸羽東線の線路が横切っているという鉄ちゃんにはたまらないロケーションです。川の左岸側の温泉宿は、右岸側の国道沿いのように旅館が並んでいるわけではなく、畑や民家の間にポツンポツンと点在しているだけなので、こちらのお宿もまるで一軒宿のような佇まいです。


 
今回は日帰り入浴での利用です。ネットで仕入れた情報によれば日帰り入浴の受付時間は8:00から19:00とのことでしたが、私が夕方16時頃に訪ねて入浴をお願いしますと、帳場から出てきたおばちゃんは「今日はもう閉めようと思ってたところなのよ」と言いつつも、どうぞどうぞとお風呂へ通してくださいました。こちらで入浴利用する場合は、事前に空いているか確認した方がよいかもしれませんね。
クランク状に伸びている廊下を進んだ先に、朱色と紺の暖簾がさがり、その前はちょっとした休憩処になっていました。



シンプルながらも綺麗に清掃されている脱衣室を抜けて浴室へ。
浴室内にはモール泉のような木材臭的芳香が湯気とともに充満していました。お風呂は内湯のみですが、奥に長くて高い天井のおかげで空間容積が大きく、それゆえ湯浴みの非日常感を高揚させてくれる伸び伸びとした環境が確保されており、また木材を多用したぬくもりのある色調とホワイト系のやさしいコーディネートが、くつろぎの場に相応しい視覚的ま安らぎをもたらしていました。


 
まつばらという宿名を表しているのか、手前と奥の壁上部には、一つ松の家紋を簡易化させたような松の模様が施されていました。


 
洗い場にはシャワー付きカランが3基並んでおり、カランから出てくるお湯は源泉ですので、洗面器に溜めると淡い褐色を帯びているのがわかります。


 
浴室の奥に据えられた浴槽は右側の角をカットしたような五角形。手前側の幅は約3mで奥行きは約4mです。総檜造なので肌への当たりが優しく、かつまた入り応えもあり、湯船に体を沈めると良い感じにフィットしてくれます。温泉は最も奥に設置された湯口よりドバドバ吐出されており、湯船のお湯は琥珀色の半透明で、私が訪れた薄暗い時間帯ですと底がみえにくいほどの透明度でした。湯加減は42〜3℃なので若干熱めですが、湯中ではまるでローションのようにニュルンニュルンと肌を滑るとてもなめらかな浴感を堪能でき、このお風呂に入れば、美しい方はより美しく、美とは無縁のおじさんでもそれなりに美しくなれるのではないでしょうか。


 
湯中では茶色や黒褐色の小さい浮遊物が舞っており、湯船の中に桶を突っ込んでお湯を掬ってみると、上画像のようにたやすくキャッチすることができました。



こちらでは完全放流式の湯使いを実践しており、湯船のお湯は手前側の縁にある切り欠けから惜しげも無くオーバーフローしていました。洗い場の床には無数の穴があけられており、これによって排水が促されているのですが、なめらかなお湯ですから足元が滑りやすく、それゆえスリップ防止の意味でもこの穴は重要な役割を果たしているのでしょう。

館内には3つの源泉の分析書が掲示されており、各源泉の名前は「銘剣の湯」「まつばら温泉」そして「銘剣の湯・まつばら温泉混合泉」です。「銘剣の湯」は純重曹泉で50℃以上の高温なのですが、これに単純泉かつ40℃未満の「まつばら温泉」源泉をブレンドさせて、お風呂へ供給しています。つまり温度の異なる2つの源泉を混ぜることにより、加水することなく温度を調整しているのですね。ブレンド前の源泉とブレンド後のお湯の全てに関して分析書を明示している点に、お宿のお湯に対する誠意が伝わってきます。

さてお湯に関するインプレッションですが、見た目は上述の通り紅茶を思わせる淡い褐色ですが、室内の光量によっては濃い色合いにも見え、また湯中には黒や褐色の小さな湯の華がたくさん舞っているため、場合によっては余計に濃く濁っているように見えることもあります。味や匂いに関しては、いわゆるモール泉の特徴とほぼ同じであり、重曹的な清涼感を伴うほろ苦みがあり、材木のような芳香が湯気とともに湯面から放たれています。ちょっと熱めの湯加減でしたが、かといって攻撃な刺激や逆上せるような嫌味な熱の篭りはなく、湯中では不思議と後ろ髪が引かれる気持ちよさに全身が包まれ、お風呂から上がった後はよく温まっているのに粗熱の抜けも早いため、程よい温浴効果が続いてくれました。モール泉的な芳香はもちろんのこと、ニュルンとするとてもなめらかな浴感といい、あたたまるのに爽快感を伴う湯上がり後のフィーリングといい、実に素晴らしい私好みのお湯です。鳴子には様々な泉質のお湯が沸いていますが、私は東鳴子から川渡にかけて分布しているモール泉のお湯が最も好みです。モール泉らしさをもたらしているはずの純重曹泉の「銘剣の湯」に単純泉のお湯を混ぜてこの個性が発揮されているのですから、「銘剣の湯」単体ですと、果たしてどんな浴感が楽しめるのでしょう。一度は体験してみたい気がします。



こちらのお宿で日帰り入浴すると、料金支払い時に鉱泉水のPETボトルを1本いただけます。こちらでは宿泊業の他、温泉水の販売を積極的に展開しているんですね。お宿の公式サイトを見ても、宿泊業より鉱泉水販売がメインであるような印象を受けます。実際に冷やして飲んで見たところ、その喉越しの良さには感激してしまいました。


銘剣の湯
ナトリウム-炭酸水素塩温泉 58.0℃ pH7.2 溶存物質1424.8mg/kg 蒸発残留物998.9mg/kg
Na+:304.3mg(90.07mval%), Ca++:12.8mg, Fe++:0.6mg,
Cl-:60.5mg(11.79mval%), HS-:0.2mg, S2O3--:0.3mg, HCO3-:752.0mg(84.91mval%),
H2SiO3:245.4mg, CO2:146.3mg,
(平成21年4月3日)
加水加温循環消毒なし

まつばら温泉
単純温泉 38.5℃ pH7.6 溶存物質419.8mg/kg 蒸発残留物306.0mg/kg
Na+:51.7mg(70.98mval%), Ca++:8.4mg, Fe++:1.0mg,
Cl-:4.6mg, HS-:0.1mg, S2O3--:0.1mg, HCO3-:158.8mg(78.31mval%),
H2SiO3:156.5mg, CO2:9.9mg,
(平成21年4月3日)
加水加温循環消毒なし

銘剣の湯・まつばら温泉混合泉
単純温泉 44.6℃ pH7.5 溶存物質734.4mg/kg 蒸発残留物506.7mg/kg
Na+:132.2mg(86.21mval%), Ca++:7.1mg, Fe++:0.9mg,
Cl-:15.4mg, HS-:0.1mg, HCO3-:348.7mg(86.12mval%),
H2SiO3:191.7mg, CO2:37.4mg,
(平成21年4月3日)
加水加温循環消毒なし

宮城県大崎市鳴子温泉字久田42  地図
0229-84-7010
ホームページ

日帰り入浴時間は8:00〜19:00らしいのですが念のため事前に要確認
500円
貴重品帳場預かり、シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
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東根温泉 さくら湯

2017年09月12日 | 山形県
 
山形県の東根温泉が大好きな私は、拙ブログでこれまで当地のいろんなお宿や浴場を取り上げてまいりましたが、今回ご紹介するのは温泉街中央部のメインストリート沿いに位置する旅館「さくら湯」です。今回は日帰り入浴での利用です。周辺他宿と比較すると中小規模であるように見えますが、そのかわり、桜色の目立つ看板を通りに向かって掲げることで存在感をアピールしていました。



お花や人形などで華やかに飾られた玄関から館内に入り、ロビーで日帰り入浴をお願いしますと、若い女性スタッフの方が快く対応してくださり、お風呂は掛け流しであること、また湯船が熱い時は搔き混ぜ、それでも熱い場合は水で薄めてください、などお風呂に関して一つ一つ丁寧に説明してくれました。その丁寧な接客と説明からはお宿の上品さが伝わってきます。


 
1階の玄関左手に紺と朱色の暖簾がさがっていました。また浴場入口の近くにはお水のサービスも用意されていました。


 
脱衣室から浴室へ足を踏み入れた瞬間、いかにも東根温泉らしい材木的な芳香、いわゆるモール泉の香りが鼻腔をくすぐってきました。イヤが応にもお湯に対する期待に胸が膨らみます。お風呂は内湯のみで、タイル張りの内装は一見すると実用的ですが、丁寧にお手入れされているほか、中央の床には桜の模様があしらわれた石板が埋め込まれており、そこはかとない非日常が醸し出されていました。室内にはひとつの浴槽と洗い場が設けられており、浴槽上の窓には採光を確保しながら外部からの視線を遮る曇りガラスが採用されています。



洗い場にはシャワー付きカランが3基取り付けられています。カランから出てくるお湯は真湯です。


 
浴槽は(目測で)3m×1.5mの四角形。浴槽内はタイル張りで縁のみ御影石が用いられており、その縁の上を温泉が惜しげも無くオーバーフローしていました。上述のように室内にはモール泉の匂いが香っていたことからもわかるように、湯船に張られているお湯は琥珀色を帯びており、浴槽内のステップは目視できるものの底面は見えないほどの濃い色合いを呈しています。
私が湯船に入ろうとすると非加水ゆえに熱かったので(体感で47〜8℃)、先ほど女性スタッフの方が説明してくださったようによく掻き混ぜたのですが、それでもなかなか適温まで落ち着かなかったため、止むを得ず必要最小限で加水させていただきました。


 
浴槽にお湯を供給している湯口からは、混じりけのない100%源泉の温泉が注がれており、湯加減コントロールのために投入量をやや絞っていました(が、それでも湯船は熱めでした)。湯口の流路では白い湯の花がユラユラ揺れており、硫化水素の存在を目で確認することができます。この湯口から注がれるお湯を口に含んでみますと、薄い塩味とほろ苦みが口の中に広がり、モール泉的な芳しい香りが鼻へ抜けていきます。湯船に肩まで浸かると、大変滑らかなツルツルスベスベ浴感に全身が包まれ、まるで化粧水の中にいるかのような錯覚を楽しめます。お宿の表には「美肌の湯」と書かれた札が立てられていましたが、なるほど納得、その滑らかさが肌に馴染んで、熱めの湯加減なのに長湯したくなりました。熱いのにお湯が優しく、それでいて湯上がりは程よく温まり、且つ爽快感も得られます。
お湯もスタッフも揃って佳い、好印象のお宿でした。今度は宿泊利用してみたいものです。


協組第19号源泉
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 64.7℃ pH7.8 蒸発残留物1331mg/kg 溶存物質1526mg/kg
Na+:429.8mg, Ca++:3.1mg,
Cl-:427.6mg, Br-:1.2mg, I-:0.4mg, HS-:0.2mg, SO4--:39.4mg, HCO3-:477.9mg, CO3--:2.2mg,
H2SiO3:69.3mg, HBO2:29.6mg, CO2:13.3mg,
(平成22年4月23日)
加水加温循環消毒なし

山形県東根市温泉町1-9-3  地図
0237-42-0043
ホームページ

日帰り入浴可能時間不明
500円
シャンプー類・ドライヤーあり、ロッカー見当たらず

私の好み:★★★
コメント (2)
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